アートセラピー:その定義と効能とは

アートセラピー:その定義と効能とは
Fátima Servián Franco

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Fátima Servián Franco.

最後の更新: 21 12月, 2022

 

アートは、他の全ての非言語表現と同じように、自分たちが気づいていないことへの探究心や表現、伝達を後押しするものです。ですので、アートセラピーを通して感情に働きかけることにより、人間関係を改善することができます。なぜなら、アートセラピーはどんな人にとっても重要な部分である感情面に焦点を当てたものだからです。そして人々がもっと自分自身の隠された部分に気づけるように手助けしてくれ、それが成長につながるのです。

アートセラピーは人間に関するものです。その人についてのプロジェクトというわけではなく、その人の抱く生きづらさや変わりたいという願いに基づいて行われるプロジェクトです。個人的な違いや文化的な違いを通して、アートセラピーはクリエイティブさを発揮するための条件を新しくしようとしたり、様々なアートの形について細かく具体的に認識しようとしたり、その影響を全て理解しようとしたりするものなのです。

アートセラピーは、特殊な面や具体的な制限のある訓練であると定義づけることができます。ある種の支援(あるいは治療の場合も)で、人々がメンタルヘルスや感情面・社交面の幸福度を回復あるいは改善する手助けのために視覚的なアートを用いますアートセラピーの目的は心理療法と全く同じです

この支援は、アートを伝達方法として見ています。そしてそれが人々が感情を表現したり伝えたりする手助けとなるのです。アートを使うことで、深く考えたり自分たちが必要とする言動を変化させることが容易くなるのです。アート作品をセラピーに使うには、ある過程を経る必要があります。まずセラピースペースを用意し、現実生活を一時中止させてこれを再び見つめ直していきます。

「世界には小さな楽しみが溢れています。アートとは、それらにどうスポットライトをあてればいいのか知ることなのです。」

-李白-

アートセラピーで用いられるアートの種類

アートセラピーで用いられるのは、視覚芸術ですつまり絵画、彫刻、コラージュ、そして演技や物語などの舞台芸術、回想劇、役割演技、人形劇などです。音楽に関しては、リズムや音や声や楽器を使い、執筆の場合は様々なジャンルを扱います。アートセラピーとは、物事をシンボル化することによって真実を語るという方法なのです。人々が作品を通して表現するものは、攻撃性であったり見捨てられたという気持ちであったり敗北感や感情の現れなのです。そしてこれらは意図して行われるのではなく、間接的に現れます。

絵を触る人々

舞台芸術

芝居や演劇、人形劇の中では、患者は役を通して話します。これは架空のキャラクターを通じた演技というアートです。架空の世界と現実世界という二つの分断された世界の間にある、個人のあるいは集団による作品作りの過程なのです。そして粘土彫刻の場合は、素材との会話が生まれます。その素材を通じた自己探求の後押しのようなものです。しかし粘土から自分自身への変化の中で、自分と向き合うことにも重きが置かれています。

絵画

絵画の場合は、自らの制限をなくすところからが第一歩となります。こうすることで、頭に浮かんだイメージや線、形、色などが気をそらさせてくれます。ポイントは、手を動かすことで目の検閲をやめさせる、つまりある種の脱抑制状態にさせるということです。そして後からそれを整理し、最も深い自己像にどんどん近づけていくことができるのです。

ダンスや歌唱

ダンスとなると、患者が自分自身の動きに気づく最初の瞬間というのが存在しますつまり、その動きを通して彼らはこれに耳をすませ、自分自身に耳を傾けることができるのです。そしてこれにより自分自身をより理解でき、その後他人と関わる時にも役立てることができます。声を使うものの場合は、その人本来の声を使い、自由な呼吸をしてもらうと良いでしょう。即興で歌ってもらったり、たくさんの異なる種類の音を組み合わせてみるといいですよ。

文章表現

そして文章によるアートセラピーもあり、ここでは自分たちの想像力を用いて自らの経験で遊ぶという新しいやり方を提供してくれます。想像上のシチュエーションや架空の友人、現在とは異なる時間設定などが生まれ、最終的にそれらが架空のストーリーとして再現されるのです。

「アートの目的とは物事の外観を再現することではなく、物事の内側に秘められた意義を再現することだ。」

-アリストテレス-

アートセラピーで感情に働きかける

人間の経験や発達において、感情というのはものすごく重要なものですアートセラピーを通してアートを作ることは、人が個人的にも感情的にも成長するための手助けとなります。アートセラピーにおいて感情に働きかけるためのステージは4つあり、それは名付け・探求・実験・統合です。感情は私たちの主たるコミュニケーション方法であり、言葉よりも重要になる場合もあります。ですのでもし正しい感情を伴っていない言葉を使うと、おそらく誰にも信じてもらえないでしょう。

普通、感情的な何かを表現するときは、表情や図や言葉の隠喩や声のトーンを駆使してうまく人とコミュニケーションを取れるようにするでしょう。感情は言葉と結びついている限り、言葉以上にその人を理解したり表現したりするのに役立ちます。アートは、その他の日言語表現と同様に、私たちが気づいていない物事に対する探究心や表現、コミュニケーションを向上させてくれるものです。

アートセラピーを通して感情に働きかければ、人間関係の質を向上させることができます。また、感情的な要素に焦点を当てており、その人を成長させてくれるような隠された側面についての気づきを与えてくれます。恐怖や怒り、幸福、愛、悲しみ、不愉快な気持ちなどといった基本的な感情は、感情のバランスのために必要不可欠です。

書き物をする女性

なぜ感情がそれほど重要なのか

認知機能や身体の健康、そして職業上のパフォーマンスのなかで、全ての感情が何かしらの役割を果たしています。 心の知能が高いというのは、ある特定の状況下で適切な感情を適切な度合いで表現できるということを意味します。また、他人の気持ちが理解でき、共感できるということでもあります。

アートを通した働きかけは、個人的・感情的な成長の手助けとなります。無意識は、論理的な言葉よりもシンボルの方が上手く処理しやすいのです。そしてこれが、アートを使うと熟考プロセスを発達させるのが容易になる理由です。アートを通じて、特に無意識に、もっとたくさんのことを伝達することができるのです。なぜならイメージというのは言葉よりもたくさんのことを伝えてくれますし、難しい話題でも踏み込みやすくなるからです。

「人は自分の顔を見るためにガラスの鏡を使うが、魂を見るためにはアート作品を使う。」

-ジョージ・バーナード・ショー-

アートを用いて心理療法をする利点

アートセラピーは、対人関係のスキルを向上させることに関してはかなりの利点があります。こういった類のセラピーは自分自身を表現しやすくしてくれるので、患者をもっと楽に周囲の人々と関わらせることができるのです。言動を調整したり、自尊心を高めたり、不安によるネガティブな影響を避けたりするのにもとても役立ちます。

ここからは、アートセラピーを受けることによってもたらされる利点についてもっと詳しく見ていきましょう。

1. 言語化するのが難しい感情を表現する

感じていることや考えていることを従来の方法で表現するのが困難な場合があります。アートセラピーは感情への働きかけを後押しするものですので、こういった表に出すのが難しい考えや気持ちを形にするのに役立ちます。

2. 向き合う力を健康的に高める

人々が自分の感情を表現する必要があると感じた時の、深く根付いた言動や癖を変えるということに関しては、クリエイティブなやり方で気持ちや感情と向き合うことがかなり有意義です。アートセラピーは、悲しみに暮れる時期を乗り越える時の手助けになりますし、その感情を使って何かを創造する時にも役立ちます。特に、可能な限りベストなやり方でその状況と向き合うために重要なのです。

3. 想像力と創造力を探求する

この類のセラピーを用いることは、その人が物を創造したり想像したりする能力を開花させるのに役立ちます。そしてもっとその人に特化したやり方で、セラピストの援助も得て行えば、このスキルをさらに向上させられます。

4. 自信と自尊心を高める

自分には自分自身のために何かを成し遂げられる能力があるのだ、と証明されることが、感情的にもっとバランスのとれた境地に達するための手助けとなります。そして同じように、自分自身の目標を達成することが自信を高めることに繋がりますし、自分は上手くやれているのだ、という気づきにもなります。

5. 心配事を特定して明らかにする

心の中であなたを不安な気持ちにさせる外部の要因を特定できれば、理解するのが難しいその不安要素をもっと効果的に、わかりやすい方法で見られるようになるでしょう。これらはたいてい、外から眺めるだけでは脳に沈み込んでしまうだけだった抽象的な考えです。

頭の中の気候

6. コミュニケーションスキルを高める

自分自身を表現するのに芸術というはけ口を利用することで、より良いコミュニケーションのための新しい武器を手に入れるのに役立ちます。そしてこれは、他人とのコミュニケーションにも自分自身とのコミュニケーションにも当てはまります。言葉にするのが難しいことを表現できるようになれば、物事をもっとわかりやすく、そして伝えたいことがしっかり伴ったやり方で表現する訓練になります。

7. 身体能力を向上させる

アートセラピーは多くの場合、口にできない何かを身体を使って表現するということを意味します。これが、特定の動きが困難な人や、協調運動が苦手な人にとってもこのセラピーが向いている理由です。

8. アートはストレスや不安を軽減させる

アートや創造性に関する活動をすると、ストレスも不安も軽減していきます。セラピーを受けた人は、こういった活動にリラックス効果があると感じるのです。

9. 考え方に働きかけ、熟考するのに役立つ

科学的な考え方にはさらに先があり、自立心が生まれたり日々の生活で起こる問題を解決できるようになることにも繋がります。

10. 集中力、注意力、そして記憶力を向上させる

集中することを学ぶのは日々の生活でとても大切です。どんな作業であっても、効率的にこなそうと思えば集中できる能力というのはかなりの強みとなるでしょう。高い集中力を持つことには数え切れないほどの利点があります。記憶力が良くなり、決断力や正確性、そして自分の思い描く目標への柔軟性が高まるのです。

人間全体の中でも、様々な人々が身体の健康やメンタルヘルス、感情面・社会面の向上のためにアートセラピーを利用しています。身体表現において援助が必要な人々に関しては、心理療法のテクニックに基づいたアートセラピーを受けることができます。

また、アートセラピーは10代の若者や大人に対して同様、子どもたちにも行うことができます。そして彼らの治療面・教育面でのニーズに合わせてあげることが可能です。教育的な発達に直接関わる事柄を教えるにあたっては、認知行動療法の技術がアートセラピーにかなり役立つでしょう(その逆もまた然りです)。

「どんな人でも、たとえ全く平凡な人であっても、自分の人生の語り方を学べば、歴史上でも最上級の部類に入るような小説が書けるだろう。」

-ジョヴァンニ・パピーニ-


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。