ジェノグラムの作り方

ジェノグラムの作り方

最後の更新: 03 11月, 2018

ジェノグラムとは、その人の家族の情報の輪郭を描き、まとめるのに役立つツールです。これは家系図に似ていますが、より特定の家族のつながりという側面を含み、見た目もより技術的です。

バルセロナ大学の心理学科がジェノグラムを以下のように定義しています。家族の最近の三世代に関する基礎的な情報のグラフ表現(家系図という形)。これには家族の構造、家族の人工統計学的データ、そして互いの関係が含まれます。

「歴史を知らなければ、あなたは何も知らないということになる。あなたは自分が木の一部であることを知らない葉っぱのようなものなのだ。」
―マイケル・クライトン―

私たちは、ジェノグラムをその人の身近な環境に関する情報を集め、整理するために使用します。この情報は医療的な治療を施すときや、教育上役に立ちます。

しかし自分のことを知るために誰でも自分自身のジェノグラムを作ることができます。これはあるパターンを見つけ出すために特に有効です。例えば遺伝的問題、世代の中の、あるいは世代を超える問題、そして環境依存の行動パターンなどです。

ジェノグラムを使えば、あなたの家族構成がどのようなものかをすぐに可視化することができます。ある特定の問題の根がどこにあるのかという理論を作るのにも役立ちます。それは性格、感情のコントロールなどについてのことかもしれません。また、自分についてよりよく知るためにも価値のあるツールなのです。

ジェノグラムを作るためのステップ

ジェノグラムは以下の3つのステップで作っていきます:

  • 家族構成の大まかなアウトライン
  • その人の家族についての基本的情報収集
  • 家族関係の説明

 

 

家族構成のアウトラインは最初に行うことであり、最も重要な段階です。ここでは家族の一員としての生物学的・法的つながりを作ることになります。このつながりを示すにはいくつかの象徴となるものがあります。

家族図

その次に、以下のデータを家族情報のセクションに加えていきます。

  • 人工統計学的情報(生年月日や死亡日時、教育レベル、結婚・離婚した日など)
  • 機能レベルに関する情報(家族の一員の機能性に関する全般的なデータ。機能できているか、どれくらいのレベルでてきるのか、そしてそれはなぜか)
  • 家族に起こった大きな出来事

第3段階では、家族関係の詳細を説明します。ここでもう一度家族のメンバー間のつながりを設定します。しかし今回は生物学的・法的つながりについては考える必要はありません。ここでは心理的なつながりに注目しましょう。

ジェノグラムを作っていく

ジェノグラムを作り始めてから完成するまで、以下のステップに従ってみてください:

ジェノグラムを作るステップ

ジェノグラムの目的を決める

最初にすることは、そのジェノグラムの目的が何なのかを決めることです。もちろん、その人の家族の歴史と家族環境についての情報に関するものであることは確かです。しかし、その情報はさまざまなことに使用することができます。

お医者さんにとってその情報がとても有用になるケースもあります。家族の歴史は遺伝子の歴史でもあるので、受け継いでいる身体的な強みと弱みを可視化することもできるのです。

 

ジェノグラムには繰り返し起こっている、あるいは共通している精神的な問題についての重要な情報も含んでいます。家族環境を通して受け継がれ、広まっている心理的パターンがあるかもしれないのです。

ジェノグラムに1つの特定の目的があることもあります。それは以下のようなことを疑問に思っているときにもってこいです。私のうつはどこから来ているのだろう? ある特定のコンディションを世代を遡ってたどることができるからです。いずれにせよ、始める前に目的を決めておくことは大切です。

分析する世代の数を決める

現実的な目標を立てることが重要です。理想としては、3世代から始めるのがいいですが、それができないこともあります。ある世代が完全に消えてしまっていたり、連絡が取れなくなってしまっている家族もいるからです。

他の世代との連絡を間接的に行うというケースもあります。言い換えれば、ある家族の情報を、他の家族のメンバーが言っていることからしか得られないと言うことです。この場合は偏見が入ってしまうことがあるかもしれません。ここでは、その人たちの言うことを裏付ける別の情報源を見つけるのが一番でしょう。

また、連絡を取ることのできる、生存しているメンバーのリストを作るのがベストです。それから連絡の取れない家族のメンバーについての情報を持っている人のリストも作ります。そして最後に、あなたのジェノグラムに何世代の人を含めるのかを決めるのです。

情報を集めるためのアンケートを作る

これは最も大切なステップの一つで、あなたが決めた目的によるものになります。つまり、あなたのジェノグラムに必要な情報を集めるための質問を考えるということです。

自分のジェノグラム

まずは人工統計学的データを引き出すための基本的な一連の質問を含んでいなければなりません。例えば名前、日付(出生、死亡、結婚、離婚、引っ越しなど)、社会的ステータス、教育レベル、職業、子どもの数、子どもの性別などです。

そしてそれぞれの家族のメンバーについて特定の詳細がわかるような深い質問のグループも必要です。例えば以前の病気や現在の病気、かかえていた痛み、趣味や興味、重要な経験、大きな争いごとなどです。

最後に、3つめの質問グループとして、家族の重要な出来事についての質問を作りましょう。これは家族の危機の瞬間や家族の何人かに関わる深刻な問題のことです。それによって、家族の一員の生活に変化が起こった出来事のことです。あなたのジェノグラムの目的に合わせて、どの重要な出来事にスポットライトを当てるのか決めることができます。

その分野のリサーチを行う

全てのジェノグラムが深く掘り下げたものだという訳ではありません。明らかな一つの側面に焦点を当てたものもあれば、一つ以上の多くの側面に深く踏み込んだものもあります。これはほとんどが、あなたが得ることのできる直接的な情報次第です。

この段階では、情報源になりえる人と連絡をとることを意味しています。個人的な話をしたがる人ばかりではないということを心に留めておくことも大切です。ですので、まずこれは忍耐を必要とする大変な作業になるかもしれない、ということを理解しておかなければなりません。

その人たちに連絡を取ったら行うべきことは、すぐに何をあなたがやろうとしているのかを説明することです。この場合、ジェノグラムを作るための情報ですよね。事をうまく運ぶために、時間をかけて説明するのがベストです。そうすることで信頼を構築し、彼らはあなたにより情報を与える準備をすることができるからです。

書類に基づいた情報を集める

手紙、写真、ビデオなど、家族に関する書類はなんでもとても役に立つことになるでしょう。IDカードや契約書、処方箋などからも重要な情報が見つかるかもしれません。

多くの家族には大切な家族のアルバムがあります。その中でたいていは大きなグループとしての出来事を見つけることができます。写真をよくよく見れば、その人についてたくさんのことがわかるでしょう。その写真の中にどんな感情の「様子」があるでしょうか。お互いにどんな態度をとっていますか。

標準化されたシンボルを使う

最近では、ジェノグラムを作るためのテンプレートが存在します。あなたが集めた情報を整理するのに必要なものが全て入ったできあいのデザインです。これを簡単に行うためのコンピュータープログラムもあります。

 

また、データを表すための標準化されたシンボルもあります。ですが、標準のものの見た目が良くないと思ったり、そぐわないと感じれば誰もが自分のシンボルをデザインすることができます。とはいえ、以下が最もよく使われるシンボルです。

  • 男性は四角、女性は丸で表されます。
  • 結婚は男性のシンボルを左側に、女性のシンボルを右側に置き、平行な線で結びます。
  • 2つのあやの平行線は離婚や別居を表します。
  • 子どもは年上から年下の子へ、左から右へ並べます。

あなたのジェノグラムの目的を見失ってはいけません。ですので、必要なら関係のあることを表す特定のシンボルを作成してください。例えばアルコール依存症、堕胎、自殺、死亡事故などの要素があります。

基礎となる枠組みとつながりを作る

家族の一員の間にどのような関係性があるかというのは、常に重要な情報です。ですので、つながりを見せるだけでなく、その質を表す要素を加えるようにしましょう。一般的な言葉でも構いません。

関係性が近い、遠い、緊張感がある、複雑、などを表す標準化したシンボルを作れば十分です。また、身体的、精神的、性的虐待があった場合も、それを表すシンボルを作っておくといいでしょう。多くの場合、証拠のない疑いだけということを表す要素を加えることにもなるでしょう。

ジェノグラムを分析する

ジェノグラムを分析することは、クリエイティブでおもしろいことです。まずはあなたが可視化したものがどれだけ正確かという評価から始めます。情報について少しでも疑いがある場合は、そのように表記するか、本当かどうかを確かめましょう。

この最初の分析で、情報をできるだけ明快で正確にすることができます。この正確性を高める努力は、次の段階に進んでから役に立ちます。

パターンを探す

ここで、そのジェノグラムが有効かどうかがわかります。あなたが収集し、整理し、可視化した情報から、パターンが見えてくるはずです。言い換えれば、この時点で繰り返し起きている出来事、状況や要素が見えているはずなのです。

ジェノグラムから見えるパターン

そのパターンがすべてを理解するカギになります。異なる家族の間や世代を続けて繰り返し起きている病気はあるでしょうか。世代から世代へ受け継がれている機能性障害の行動パターンはあるでしょうか。そのパターンに合わないメンバーがいるのはなぜなのでしょうか。個人的な歴史のどの部分が、そのパターンから抜け出すのに役立ったのでしょうか。

こういった多くの疑問は、ジェノグラムを完成させれば答えを見つけることができるはずです。そこには全ての情報はもちろんありませんが、価値のあるヒントを与えてくれるでしょう。とりわけ、今起こっていることの原因を理解するのに役立つことでしょう。

目的に合致しているかを確かめる

ジェノグラムを作ることは機械的な作業ではないので、決定的な結果を与えてはくれません。その過程の中でもともとの目的を何度か考え直すこともあるかもしれません。予想もしなかった情報を見つけることで焦点を変えることになる場合もあります。

ですので、あなたの当初の目的を満たしているかどうかを見ることも役に立つのです。あなたが見つけ、整理し、解釈した情報がその人についての理解を深めることになったかを考えましょう。多くの場合、ジェノグラムがその目的を完全に満たしていなくても、このプロセスが役に立ちます。ですので、このプロセスを最後に評価する価値があるのです。

ジェノグラムからわかること

ジェノグラムは、つまりはあなた自身の物語へと続く道を描いたものです。それはあなたが生まれる前の歴史です。結局、私たちは皆、ずっと前に始まった物語のある章にすぎません。聞こえるのはかすかな羽音だけで、見えるのは小さな、おもしろい一瞬だけなのです。

参考文献

McGoldrick, M. and Gerson, R. (1985) Genograms: Assessment and Intervention. New York, Norton.


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  • Ceberio, M. (2004) “Quién soy y de dónde vengo: El taller de genograma” Ed. Tres Haches.
  • McGoldrick, M. y Gerson, R. (1985) Genogramas en la evaluación familiar. Barcelona: Gedisa (3ª ed. 2000).

このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。