傷ついた心を芸術に:メリル・ストリープのメッセージ

傷ついた心を芸術に:メリル・ストリープのメッセージ

最後の更新: 06 10月, 2017

「傷ついた心を、芸術に昇華してください。」 メリル・ストリープは、ゴールデングローブ賞を受賞した際にこの言葉で素晴らしいスピーチを飾りました。スピーチは5分を超えるもので、彼女の言葉は芸術に昇華しました。

このスピーチの目的や、誰に向けてのスピーチだったかを議論するつもりはありません。ご存知の通り、大統領のドナルド・トランプは、ためらいもなく反論しました。その性格から簡単に予想できたことですが、その返答はベテラン女優の人間性には及びもしませんでした。

「無礼は無礼を呼ぶだけです。暴力は暴力を助長させます。そして、権力者が他の人を脅すためにその地位を利用した場合、勝者はいません。」
-メリル・ストリープ-

スピーチの最後の部分に注目して掘り下げてみましょう。克服と自己の成長における原理を、エピローグの形で完璧に要約しているフレーズです。「傷ついた心を芸術に昇華して」というそのフレーズは、実はキャリー・フィッシャーがメリル・ストリープに以前したアドバイスでした。

レイラ姫のイメージの裏に勇敢な女性が隠れていたことをあまり多くの人は知りません。中毒、双極性障害、ハリウッドで映画脚本家として成功するための長い葛藤に直面した戦士でした。 キャリー・フィッシャーは素晴らしい母親であり、先に亡くなった母親のデビー・レイノルズの教えをきちんと守っていました。

それは、芸術はどんな表現方法でも感情を開放し、壊れた心を癒してくれる、という教えです。それだけではありません。芸術は私たちの一番いいところを他人と共有させてくれることで、私たちを人として尊厳してくれます。

 

次の前提を確認してみましょう。

キャリーフィッシャーとデビ―レイノルズ

カタルシス、表現の美としてのアート

メリル・ストリープのスピーチは、次期大統領を非難するためのものだけではありませんでした。もう一つの目的は、ある問題を掘り下げる ことにあったのです。それは、アメリカが直面している価値観の危機です。今の社会情勢が原因で、国は根幹的な面を忘れ始めています。芸術は娯楽だけではありません。芸術は文化であり、多様性や自由の魔法で、レガシーや共通学習を作り出す媒体です。

アートには癒しの力もあります。それぞれのシチュエーションで思い出す映画や本をみんな一つは持っているはずです。ここぞという時に必要な大切な作品です。

多くの人はアートな世界を受動的に受容するだけではありません。表現の媒体として、カタルシスとして、アートをいかす人もいます。 自分の感情に声を与える素晴らしい道具として、自由を広げるために、そして他人の心に触れるために、アートを利用するのです。

 

アクティブアートと言える、手や体を使って行うアートには、ヒーリング効果があります。実証的でまた人の心をひきつける例が、「キルトに綴る愛」 (1995)という映画に見られます。この映画では、様々な女性の人生がストーリーの中で綴られます。1人の女性はとても特殊な習慣を持っています。失望し、裏切られ、悲しみに襲われるたびに、グラス、カップ、お皿を壊すのです。

割れた食器のアート

そのあと、彼女は壊れたクリスタルやセラミックの小さな破片を集めて壁に貼り付けました。数年後、彼女は称賛に価するアートを作り出したことに気づきました。カラフルな壁の上で、混沌とした多様な、彼女の壊れたハートの小さな破片が、ひそかに芸術への変身を遂げていたのです。

アートは共感の形

もう一度メリル・ストリープのスピーチを見てみましょう。彼女はスピーチの中で、アートと共感がどれだけすばらしく関係しているかを思い出させてくれました。解釈、音楽、詩、絵画、書き物どんな芸術でも、アートの世界にリンクした人たちの心の中で強くいきづいているなら、それは間違いなく共感です。

「アートは、声を聴いてもらおうとする魂の表現です。」

だから、メリル・ストリープは「心が傷ついている」と伝えるのに躊躇しないのです。特に、新しい大統領がニューヨークタイムズのジャーナリストをなじったことに関してはそうです。ジャーナリストのSerge Kovaleskiは、先天的な病気により運動機能障害を患っていたのです。

フェルトのハート


ここで無視できない事実があります。芸術の世界と、新しいホワイトハウスのトップのバックグラウンドであるビジネスの世界は、全く異なる2つの要素から生まれました。ビジネスの世界では、「共感」と「心の知能指数」は「イノベーション」という風にラベル付けされていることを忘れてはいけません。つまり、つい最近までは役に立たない、非生産的と考えられてきた未知の次元だったのです。

結論付けると、私たちは不思議で複雑で矛盾した時を生きるよう定められています。だからこそ、慰めとなる伝達経路を忘れてはいけないのです。それは、表現の形であり、自分や他人の感情とのつながりでもあるのです。

アートは、私たちをもっと人間らしくしてくれ、メリル・ストリープのような素晴らしい人を生み出してくれるのです。

 


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。