嘘をつく人の脳

嘘をつく人の脳
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 22 12月, 2022

人は何度も嘘をつくと、自分の嘘に対し感情的な反応を示さなくなります。そして、この感情の欠乏により、嘘をつき続けやすくなるのです。うそは習慣化することが少なくありません。脳神経学者は、嘘をつく人の脳が異なる働きをするという結論に至りました。心が嘘をつくように鍛えられているようなものだと言います。

人間の脳の基本的な特性に、可塑性があります。そのため、嘘は一種の技術とも言えます。また、そうだとすれば、技術を一定の水準に保つためにしなければならないのは、毎日の訓練です。例えば、数学、デザイン、書くことを得意とする人は、脳がそう鍛えらえれているのです。

「あなたが真実を語れば、それはあなたの過去になる。あなたが嘘をつくと、それはあなたの未来になる」

-ジョン・スペンス-

心理学や社会学で、嘘や欺きの世界の研究が行われています。過去数十年間、大きく進歩した診断技術や脳科学のおかげで、私達は価値ある、そして、心配にもなるような情報を手に入れることができるようになりました。なぜ、心配になるのでしょうか?一貫した訓練や習慣形成から不正直な人が生まれると分かったら、あなたも驚くでしょう。

最初は小さな嘘から始まり、それが習慣化します。そして、脳の嘘に対する感覚が薄れていきます。少しずつ、心を痛めることなく大きな嘘をつくようになり、それが一種のライフスタイルになるのです…

 

うそをつく

嘘つきの脳と扁桃体

芸能人や有名人の嘘に気づいたことはありませんか? 例えば、政治家が嘘をつき通すこともあります。彼らは、自分の誠実さを守ろうとし、時には犯罪となるような行動を隠し正常であるかのように話します。これは公務員の仕事として行っているのでしょうか?それとも、生物学的なものが関係しているのでしょうか?

ロンドン大学の脳神経科教授であるタリ・シャロットは、これについて言及します。生物学的要因もありますがが、訓練と関係していると彼女は言います。

脳のある部分は、不誠実な行動と直接的に明らかに繋がっています。そのある部分が、扁桃体です。嘘をつく人は、巧みなプロセスを通して、自分を鍛え、この訓練により、罪の意識を切り捨ててしまうのです

2017年雑誌 「Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス)」にとても興味深い記事が掲載されました。この記事では、これらの事柄をとても深く掘り下げています。次に、例と共にご紹介します。

想像してください。ある若い人が、勤めている会社で権限のある役職につきました。リーダーシップを発揮し、従業員に信頼してもらえるよう、小さな嘘をつき始めます。この「不協和音」を引き起こす小さな欺きが扁桃体を刺激します。脳の辺縁系にあるこの小さな構造は、記憶や感情の反応をつかさどる部分です。また、その人がどの程度嘘をつこうとする意志があるかに関わる脳の部分でもあります。

脳

最終的に、この若いリーダーは、常に嘘をつくようになります。こうなると、永久的、意図的に人を騙すことがベースとなり、そこで業務をこなさなければなりません。このような行動が習慣になると、扁桃体は反応をやめます。耐性が上がり、あらゆるタイプの感情的反応に対する信号を送らなくなるのです。罪悪感は消え、後悔や心配もなくなった自分だけが残されます

言い換えると、嘘をつく人の脳は不誠実さに適応したということです。

 

嘘は脳の働きに変化を与える

嘘をつく人は、二つのものを必要とします。それは、記憶と感情の冷淡さです。デューク大学の心理学教授ダン・アリエリーは彼の著書の中で同じことを記しています。彼の著書、『不誠実さに関する誠実な真実:こうして私達は周りに―特に自分自身に嘘をつく』は、嘘つきの脳に関して最も詳細に書かれた本のひとつでしょう。また、脳神経のプロセスに関しても書かれており、これもとても興味深いものです。

アリエリー教授は、これに関する実験を行いました。その結果、病的な嘘つきの脳は灰白質が14%も少ないことが分かりました。さらに、前頭前皮質の白質は22~26%多いのです。

これは何を意味するのでしょう?嘘をつく人の脳では、記憶と考えとの間の繋がりがより多いことを表します。この繋がりが大きいほど、この二つのアクセスが速くなり、嘘に整合性をもたせるのです。

仮面と二人の人

これは、不誠実さが内側からきているという大きな証拠です。認知の分野から始まり、訓練を重ねるごとに強くなっていきます。同時に、脳は、行動に感情をあまり巻き込まなくなります

アリエリー教授は、これを恐れるべきものだと考えます。扁桃体が特定のものに対する反応をストップすることができるのであれば、人を人らしくするものを失う可能性もあるということです。自分の行動が人に与える影響を理解できなければ、誰もがもっている本来の善さを失うことになります。

嘘をつく人の脳は、何か暗い動機から形作られているものです。嘘をライフスタイルにしてしまった人は、何か特別な目的があるはずです。その目的は、権限や立場、従属、自己利益を求めているなどが考えられます。人生のどこかで、人より自分を先に置くことを決めてしまった人達です。これ以上に不穏なことはないでしょう。


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