若者の飲酒・喫煙を防ぐ:アイスランドの例

若者の飲酒・喫煙を防ぐ:アイスランドの例

最後の更新: 19 12月, 2017

アイスランドは、世界中の多くの国にとっては夢と思えることを達成しました。ほぼ全ての意味で生活の質が最高レベルなだけでなく、若者たちの重大な問題をも解決したのです。その問題の中でここで取り上げるのは、喫煙・飲酒・大麻の摂取です。

中でも興味深いことは、たった20年前は、アイスランドはヨーロッパ中で最も若者の大麻摂取率が高い国だったということです。その後、段階的かつ継続的に改善を試み、その結果解決にたどり着いたのです。

「若者は、自分が真実をにぎっていると信じて疑わない。悲しいことに、その真実を誇示できるようになった時には、すでに若者でも真実でもなくなっている」

-ジャウメ・ペリッチ-

この成功は、「Youth in Iceland(アイスランドの若者)」という薬物使用防止計画のおかげです。1998年に始動したこの計画の目的は、主にタバコとアルコールの摂取を減少させるというものでした。アイスランド社会は当時、目的を失っているような若者たちを危惧していました。

アイスランドにおける薬物摂取減少の第一歩

アイスランド社会調査分析センター(ICSRA)所長で、「Youth in Iceland」の責任者は、ジョン・シグフソン氏です。彼は事前調査なしではどのような対策も実施不可能だと考え、計画初期に状況調査に全力をあげました。

アイスランドの若者薬物防止

シグフソン氏は、アイスランドを偏見で二分したくないと表明しました。喫煙者や薬物常習者に対して、先入観で見てしまうことはよくあります。人は薬物に対して十分な知識があると考えますが、実際は違います。そこでアイスランドでは、調査とその普及を最優先させました。

この活動で一つ重要なポイントは、ただ一度調査をしただけではなかった、ということです。調査システムを立ち上げ、2年ごとに大麻摂取のマッピング(地図制作)が行われました。原因と結果は変化することも多く、継続的なモニター調査が必要だったのです。

このシステムによって、薬物使用者の性別・摂取パターン・家庭環境・摂取と不登校との関係・摂取者が抱える心理的問題などのデータが得られました。これらのデータを基に対策が練られました。

この問題における大人の役割

調査が裏付けたのは、大人の役割が非常に重要であることです。若者がコインの表なら、その裏には彼らを教育する大人がいるのです。つまり、大人たちに力をつけることが必要だと結論づけ、彼らに薬物についての知識と、様々な状況に応じて何をすべきかを知るためのツールを提供しました。

喫煙・飲酒する若者

こうして、両親や家族の能力を高める計画が作られました。そこでは薬物やその影響についての知識を提供しましたが、特に重点的に強調したのは、アイスランドの薬物依存問題は大人の肩にもかかっているという考えでした。若者達本人にも責任はありますが、彼らを教育する大人の責任はもっと大きいのです。

最も重要だったのは、若者の生活における大人の心理的な役割について意識を高めたことです。薬物摂取防止の決定的な要因は、大人が近くにいること、つまり若者に対する配慮・同伴・監視です。彼らと共に時間を過ごすことが第一条件で、コントロールしようとするのではなく、一緒に何かをすることが重要です。

自由な時間と自己実現の意味

またこの調査によって自由時間をどう使うかが肝要だということも明確になりました。これは、若者のコントロールの枠を意味するだけではなく、自己実現の意味を大きくする助けにもなります。ですからアイスランドでは、子どもや少年少女向けのスポーツや創造的芸術的アクティビティをそれまで以上に提供するために必要資金をつぎこみました。

同様に、午後8時以降、12歳以下の子供が大人の同伴なしで外出することを禁止する法律が制定されました。13歳から16歳までの少年少女たちは午後10時以降が禁止になりました。このように、アイスランド社会全体で若者について責任を負う形が始まりました。

靴に花を乗せていく若者

現在アイスランドでは、飲酒したことがあると答える若者はわずか5%にとどまっています。同様に、1日1本のタバコを吸っていると回答したのは3%のみ、直近の1か月に大麻を摂取した若者は7%のみです。これらの数字は、どの国にとっても理想的なものです。しかしこの割合は自然に達成できるものではありません。アイスランドのように、国・家族・社会全体が一体となって目標達成に努力することが必要なのです。


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