『ラブ・オン・スペクトラム』 − 始まりと進展

『ラブ・オン・スペクトラム』は、それほど多くの人には好まれないようなトピックを取り上げた番組です。Netflixによるこの興味深いドキュメンタリーシリーズは、自閉症について私たちがもっと詳しく学ぶための機会を作ってくれました。
『ラブ・オン・スペクトラム』 − 始まりと進展

最後の更新: 18 1月, 2021

愛は、芸術の中で最もよく取り上げられる主題の一つです。端的に言えば、人間によるあらゆる形態の表現の中には必ず、愛にまつわる要素が含まれていると言えるでしょう。しかしながら、マイノリティグループの人々の恋愛の独特さについては、あまり分析されることがありません。そんな中、ある新たなテレビシリーズが自閉症の人々の恋愛を扱っています。それが、最近Netflixで公開された『ラブ・オン・スペクトラム 〜自閉症だけど恋したい!〜』です。本日の記事では、この番組について詳しくご紹介していきますよ。

自閉症スペクトラム障害には、コミュニケーションの欠陥や共感の欠如などに特徴付けられる一連の障害が含まれます。

現在はスクリーニング テストが利用可能になっているおかげで、患者が幼い頃からこの障害を見つけ出すことが可能です。より早い段階から治療を始められるようになり、得られる結果もより良いものとなったので、この現状は素晴らしいと言えるでしょう。また、幼少期からすでに症状が現れているという事実があるために、自閉症は発達障害のカテゴリーに分類されます。

フィクションの世界に目を向けると、おそらくシェルドン・クーパー(ドラマ『ビッグバン★セオリー』の登場人物)が最も象徴的な自閉症的キャラクターの一人かもしれません。ほぼ全てのエピソードにおいて、彼が社交面の困難にぶち当たる描写があるのです。このドラマを視聴すると、周囲の友人たちが彼の独特の意思表現を解読するのに苦労している様子を何度も目の当たりにすることになるでしょう。この作品は、『ラブ・オン・スペクトラム』で触れることになる自閉症に関する細かな点を予習しておくのにぴったりです。

“もしあなたが自閉症の人一人と出会ったなら、それは数多くいる自閉症の人々のうちの一人と出会ったということに過ぎない”

-スティーヴン・ショア-

『ラブ・オン・スペクトラム』でのファーストデート

このシリーズはまず、世に蔓延する迷信を打ち破り、自閉症スペクトラム障害を抱える人たちも他者と交流したがっているのだという事実を強調しました。彼らが一人きりでできる活動を好むのは事実です。しかし、だからと言って他人と関係性を築いたり恋に落ちたりしたくないと思っているわけではありません。自閉症の人々も誰かと人生を共有したい、そして親密な関係を持ちたい、と願っているのです。

しかし、この願望を他の人々に認識させることが、自閉症の人々が克服しなければならない一つ目の障壁なのかもしれません。つまり、彼らの理解する愛情の中には恋愛という形も存在し得るという事実はまだ世間に浸透していないのです。実際に本シリーズでは、同棲するという大きな一歩を踏み出したカップルが二組登場します。彼ら自身の言葉を借りれば、それは簡単な道のりではありません。

とは言え、この番組のメインとなっているのは、まだ誰ともデートをしたことがないASDの人々が抱く希望です。彼らの多くが、内気さや不安を見せます。自閉症ではない人々と彼らとの間に、それほど違いはないのです。そして私たち視聴者は、彼らが出会いや試練に直面する様子の目撃者となります。

コミュニケーション

このドキュメンタリーシリーズ『ラブ・オン・スペクトラム』では、自閉症を持つ人々が互いに会って話をする前に、準備のために行われるセッションの様子が映されます。

まず取り組まねばならないのが、挨拶です。セッションでは、大抵の人がある程度は身につけているような相手への挨拶の仕方が説明されます。つまり、椅子から立ち上がって最初の二言三言が交わされる間は相手の目を見続けておく、といったマナーのようなもののことです。アイコンタクトは挨拶が済んだ後も相手といる間中ずっと大切になります。

もう一つ、彼らが習得を目指すことになるスキルが、会話を止めない技術です。セッションでは、このために話題や相手に尋ねたい質問のリストを作るよう彼らに勧めます。

ラブ・オン・スペクトラム 始まり 進展

『ラブ・オン・スペクトラム』における恋愛の進展

その後、彼らはさらに高いレベルへと進むことになります。会話を、ただの尋問のようなやり取りから両者が積極的に参加し合う、相手を怖がらせてしまう可能性がほとんどないような本物の会話へとステップアップさせるのです。これを実現するために、一つの質問から、あるいは相手が発した予期せぬ質問から会話を発展させる戦略を学びます。

全てのケースにおいて、専門家は自閉症の人々にデートや会話が柔軟なものであることを理解させようとします。この柔軟性には、あまりにも直接的で個人的な質問はしないようにすることが含まれます。そういった質問は、まだ彼らが達していないもう少し先のレベルの親密性があってこそできるものだ、という説明がなされるのです。しかしそれが彼らにとっては特別難しいことであるのが、ご覧いただければよくわかると思います。

したがって、専門家たちはファーストデートをひかえる人になら誰にでも伝えるであろうあるアイディアを、彼らに授けようとします。それは、会話を面白くするためには相手について何かを学ぼうという意欲を持たねばならない、という事実です。お分かりいただける通り、だからこそ、自閉症の人々にとっては趣味関心の合う相手とだけでなく未知の相手とも出会い、最初のやり取りの中で互いの共通点を見つけていくことがとても大切なのです。

最後に

これは、観る価値のある作品です。自分が生きている時代にこのような勇敢なプロジェクトが存在しているという事実だけですでに貴重なことだと言えるでしょう。また、その誠実さも最大の強みの一つです。この番組は私たちに、自閉症であっても恋愛をすることは可能なのだ、と示してくれています。たとえそれが簡単にはたどり着けないゴールだとしても、です。

事実、この番組に登場するデートの大部分が良い結果を得られずに終了してしまいますし、彼らが精神的なダメージを受けている様子も映されます。しかし、同時にいかにそこから立ち直り、次のチャンスの存在を理解していくかについても本シリーズの見所になっているのです。


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