カオス理論と「バタフライ効果」
バタフライ効果について聞いたことがある人は多いでしょう。カオス理論の基礎となるものです。1975年、ジェイムズ・ヨークとT.Y.リーにより提唱されたカオス理論は、私達に物事の基礎を思い出させてくれます。世界は予測可能なパターンに沿ってはいません。それが嫌だったとしても、カオスは私達の生活の一部なのです。変化が起こる小さなスペースが存在し、物事の影響を予測することはできません。
カオス理論は、その起源から、数学や物理学と結び付けられることが多い理論です。しかし私たちは、科学が私達の生活に直接影響するという事実を忘れがちです。
実際、行動や理解に直接的にここまで大きく影響を与える理論はほとんどありません。ジェイムズ・ヨークは、この理論をこうまとめます。「大きな成功をする人は、第二の手段に長けている人である。」いつでも、計画変更に備えていなければならないのです。
「人生では、柔軟であることが大切だ。私は物事を計画しない。見出す方が楽しい。」
-カオス理論の父、ジェイムズ・ヨーク-
皆、不確かなことに多少は耐えられます。ある程度を超えると、起こりうることを考えた時、脳は警戒を強くします。
私達は安定を好む傾向があります。2+2=4だと知っておくことが好きです。今日あるものは明日もあると思うことで落ち着きます。すべて自分の管理下にあると感じたいのです。
ところが、カオス理論により、私達は否定できない事実があることに気付きます。人生のリズムは時計の針のように予測できるものではありません。私達の周りには、予測不能で、コントロールできないものがたくさんあるのです。
いつ片方の靴を失うか分かりません。アメリカで羽を広げた蝶々が、経済危機のようにヨーロッパへ達することもあります。ビリヤードの白いボールのようにすべてのボールを様々な方向へ動かすこともあります。
カオス理論:自然は予測不能
カオス理論によると、ある出来事の結果は、変動するあらゆるものに左右されると言います。その変動するものが結果へどう影響を与えるかを予測することはできません。ミスをするスペース、変化する空間があり、終わりに近づいた時、一振りで全てが変わることがあります。小さな変化が大きな影響を与え、全計画を混沌とさせることもあります。
カオス理論は、現代数学における最も面白い考えの一つだという人もいます。予測不能なものを予測しようとする科学なのです。
これが初めて公開された時の様子が想像できるでしょう。それまでは、科学により不確かなものを排除しようとしていたのです。行動のすべてを、データを用いて論理的に説明することがねらいでした。
現在、私達は、いつでも何かが起き、全てを変えることがあるということを認めています。実際、気象学者や数学者も日々不確かさと向き合っています。
1961年エドワード・ローレンツは、時間を予測するコンピューターを作ることに挑戦しました。その中で、システム全体が予測不可能な動きを示し始めたのです。これは、ある四捨五入のエラーが原因でした。後に、これがバタフライ効果を定義することになります。
カオス:普遍の友
カオスは自然界のみに存在するわけではありません。気象予報、生物学にもカオスはあります。いつでも、予測不可能という金の糸が針の穴に入りうるのです。周りで起きているにも関わらず、私達が気づいていないカオスもあります。経済学、熱力学、天文学、さらには心理学の世界においても私達の目下でカオスは動いています。
神経伝達物質の空振りなど脳内の小さな変化が、行動に劇的な変化を及ぼすことがあることが分かっています。また、カオス理論は、精神科も例外ではありません。患者に処方した薬が、期待とは反対の反応を示すこともあるのです。
「蝶の羽のかすかな動きが、世界の反対側で感じられることがある」
-中国の諺-
カオス理論を普段の生活に適用する
皆、カオスを避けようとします。これが安全を感じるための唯一の方法です。予測できることで、恐れることなく出かけることができます。また、生活を創造し、自信をもって未来を創造することを可能にします。ところが、いつでも計画を変更する準備をしておくべきだと、カオス理論の父、ジェイムズ・ヨークは言います。
ある意味で、その根本は、ブラック・スワン理論と呼ばれるものと関係しているようです。エッセイスト、経済学者、数学者のナシム・ニコラス・タレブにより提唱された理論です。
この理論と同じタイトルの本の中で、彼は、肉眼ではすべてが予測可能にみえるということを私達に思い出させてくれます。しかし、実際は、いつでも予期せぬ時に、おかしなこと、カオスな出来事が起こります。その出来事が意味をなすためには、事実を受け入れなければなりません。
カオスな出来事が起こった時に反応するのではなく、準備をしておくのです。成功した人、幸せな人には、いつも第二の計画があると、ジェイムズ・ヨークは言います。
予期せぬ出来事に反応しなくて良いよう、考え方をより柔軟にしましょう。容認と好奇心をもって、予期せぬことを迎えましょう。カオスからチャンスが生まれることは少なくありません。予期せぬ出来事を受け入れると、生活のリズムを動かしやすくなります。