『ヴァルハラ連続殺人事件』:児童虐待にまつわるスリラー

07 7月, 2020
『ヴァルハラ連続殺人事件』はスカンディナヴィア産の傑作スリラーです。主要キャラクターたちは魅力的でありながらも複雑な人物設定になっており、ミニストーリーが続く形式で話は進みます。また、真相が気になるような素晴らしいメインプロットもあるので、最後まで飽きることなく楽しめますよ。

『ヴァルハラ連続殺人事件』は元々RUV(アイスランド国立放送局)によってアイスランド国内で2019年に放送されたドラマシリーズで、Netflixでも視聴することができます全8話から成るこのシリーズの舞台は、アイスランドの首都レイキャビクです。

登場人物の一人は刑事のカタで、彼女はとある殺人事件の捜査を担当することになりました。この事件はすぐに連続殺人事件へと発展し、普段はオスロで勤務しているアルナーが彼女の捜査パートナーになります。

二人は協力して殺人者が誰であるかのみならず殺人の動機までをも解明していきます。その真相は、汚職や腐敗のネットワークが複雑に絡み合ったものでした。

『ヴァルハラ連続殺人事件』のリズムは視聴者たちを捉えて離さず、圧巻の捜査により、事件はどうやら30年前に閉鎖されたヴァルハラ少年養護施設に関連しているようだということがわかってきます。未知の土地アイスランドで巻き起こる紆余曲折のストーリーが描かれるシリーズです。

『ヴァルハラ連続殺人事件』、児童虐待を白日の下に晒すアイスランド産スリラー

『ヴァルハラ連続殺人事件』は私たちの期待を決して裏切りません。物語の進みはゆっくりであるとは言え、とても面白くて退屈する暇がないだけでなく、メインプロットの他にもサイドストーリーが描かれています。家族崩壊や児童虐待がこのドラマの中心となるテーマです。

ストーリーの中で、アルナー刑事は自らの過去と戦わねばならず、そしてカタは息子との信頼関係を取り戻すために奮闘しなければならなくなります。さらにこのドラマでは児童や青少年への性的虐待に関して、(二つのストーリーラインの中で)犠牲者や生存者を交えてその深刻さが分析されます。

単なる刑事ドラマ以上の濃密さ

単なる刑事ドラマでは終わらせたくないという熱意から、『ヴァルハラ連続殺人事件』は急いで話を展開させようとはせず、適切なタイミングでストーリーが進んでいくように作られています。このことは、第一話でのカタという主人公の描かれ方の中で特に顕著に示唆されています。

野心に溢れた捜査官である彼女は、その働きの割に良いポストにつけてはいないのですが、オスロから来たアルナーという刑事(ビョルン・トールズ)と共同で捜査を行うことになります。二人の刑事たちはヴァルハラで何が起こったのかを解き明かし、連続殺人犯を捕まえるために協力せざるを得なくなっていきます。

かなりシンプルなシナリオであるとは言え、このドラマでは二人の主要キャラクターが捜査に熱心に挑むモチベーションをしっかりと理解できるようなシーンが描かれています。二人が互いを補い合っていく関係性が巧みに表現されているのは、二人を演じたニーナ・ドッグ・フィリップスドッティルとビョルン・トールズの素晴らしい演技のおかげでしょう

予想もつかない展開

明らかになっていく事実が予想通りのものだったとしても、新たな展開によりカードが驚くべき形で再度配られるので、私たちは最終話まで緊張感を保ったまま視聴を続けることができます。ドラマ内で時折描かれるサブストーリーも惹きつけられるものばかりです。カタの息子の携帯電話に保存された真っ暗なビデオの話や、アルナーとその姉妹との関係性に関する話などがその例です。

しかし、根底にある興味深い手がかりにより、登場人物たちの複雑さがさらに見えてきます。究極的には、彼らはただドラマ全体の物語を成立させるためのコマにしか思えないかもしれませんが、実はその印象は間違っています。

『ヴァルハラ連続殺人事件』 児童虐待 スリラー

見かけで判断すると騙される

穏やかな外見の裏に隠されているのは、誰もが深い地中に埋めて忘れ去ろうとしている残虐行為の数々でした。アルナー刑事に関しては、原理主義者で信心深い家族との確執関係が描かれます。

また、カタと息子の破綻した関係も描かれます。そして主題となる要素が、ヴァルハラの子どもたちの恐怖の記憶です。彼らは残忍な社会システムや権力の、そして小児性愛者たちの犠牲者でした。

ヴァルハラ連続殺人事件のような事件がアイスランドで起きたという事実は人々に衝撃を与えます。なぜなら、この国は世界でも犯罪率が極めて低い国だからです。無垢な風景の純粋な美しさと、カタやアルナーが捜査のなかで明らかにしていく恐ろしい犯罪とが見事なまでに対照を成しています。

本作品は、この構成を上手く活用する方法を熟知しています。グレーみのかかった色彩の冷酷なほどに冷たい映像は、ネオ・ノワール映画の手法を借用しているようです。これが物語を引き立てる外部要因となり、このドラマの陰鬱さがより一層増しているほか、ペートゥル・ベンによるサウンドトラックがさらに緊張感を高めています。

無理に不健全な世界観を入れ込もうとしない、よく練られたプロット

『ヴァルハラ連続殺人事件』では、家庭内暴力や親のネグレクト、小児性愛といった難しいトピックを扱っていますが、その描き方には責任感が感じられます。それは、被害者たちがその後どうやってい生きてきたのかがしっかりと示されるからです。これにより物語にも登場人物たちにも、より深みが出ています。カタとアルナーの捜査が明らかにするのは非常に重い秘密だったため、過去を乗り越えて新たな人生を築こうとしている人々全員を慌てさせることになります。

この作品は、Netflixが初めてアイスランドと共同制作したドラマです。出来栄えは素晴らしく、脚本もしっかりしており、製作者のソードゥル・パルソンはこれが初プロデュース作ながらも優れたバランス力を発揮しています。

北欧ノワールのジャンルとしては真新しい点が見られるわけではありませんが、殺人犯や雪、そして風変わりな刑事たちといった特徴もあり、優れたスリラーに仕上がっています。これは、ミステリアスな殺人事件には欠かすことのできないお決まりの要素が8話全てに含まれているためです。