喜びと依存症-薬物乱用の本当の理由とは?

依存症と聞くと、物質そのもに依存していると考える場合が多いでしょう。しかし、依存の理由は、そこから得られる感情である場合があるのです。
喜びと依存症-薬物乱用の本当の理由とは?
Gema Sánchez Cuevas

によってレビューと承認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

によって書かれた Raquel Lemos Rodríguez

最後の更新: 27 12月, 2022

薬物依存は、近年ますます多くの人々に影響を与えている問題です。ただし、薬物乱用の理由は薬物そのものではなく、他のプロセスに関係している可能性があります。今回は、私たちは必ずしも物質それ自体に依存しているわけでは無いことをご紹介します。むしろそこから得られる喜びを求めているのです。

これを説明するには、ネズミを用いて行われた多くの実験をご紹介するのが良いでしょう。これらの実験は1980年代に実施されました。

薬物とネズミ

喜び 依存症 薬物乱用

実験はネズミをケージに入れて実施されました。ケージにはボトルを置きます。1本には水が入っており、もう1本にはコカインまたはヘロインを希釈した水が入っています。どのネズミにせよ、結果は毎回同じでした。ネズミは麻薬中毒となり、死亡するまで溶液を飲みました。これは、常習している人間にも繰り返されるパターンです。

ここで重要なのは、麻薬中毒になったネズミはケージの中に1匹でいたということです。では、他のネズミと一緒にいた場合はどうだったのでしょうか? これが次に行われた実験です。研究者はネズミのために小さな「パーク」を作成しました。そこには、食べ物、色のついたボール、楽しい時間を過ごすために必要なものがすべてありました。その結果は、驚くべきものだったのです。

ケージの中の多くのネズミは薬物の入った水を飲まず、たとえ飲んだとしても中毒になる事はありませんでした。このように1匹だけ隔離されていたネズミはすべて過剰摂取で死亡しましたが、仲間と一緒に楽しいパークで過ごしたネズミは、依存症にはならなかったのです。

孤独と薬物との関係

この実験で、一つのことが明らかになりました。劣悪な環境と刺激のない孤立したネズミは、嗜癖に傾く傾向があり、その結果、薬物を過剰に摂取することが証明されました。同じことが我々人間にも起こります。物質それ自体ではなく、その物質によって引き起こされる喜びの感覚と深く関係があるのです。

自発的であろうと無意識的であろうと、他者から自分を隔離するとき、脳はミエリンと呼ばれる物質を生成します。それは、うつ病、不安、恐怖につながる認知行動や感情行動の変化を引き起こします。人間もネズミのように、他者との絆を必要とする社会的な生き物であるため、それらの症状が引き起こされるのです。

また、孤立していると、中毒になりやすくなります。これは、薬が分泌物またはドーパミンを増加させるためです。

実際、薬物は脳を麻痺させ、思考を回避するのに役立ちます。それらは抑制を解除し、少なくとも瞬間的には、私たちを傷つけたり、影響を与えたりするすべてのものから逃れることができます。回避行動の一形態なのです。

家族歴と薬物使用

喜び 依存症 薬物乱用

物質ではなく、そこから得られる喜びに夢中になることを上記で説明しましたが、中毒には家族との関係が深く関わっています。

両親が何かの依存症であったり有害な関係にある場合、子供たちは、自分は場違いな感じがし、無視され、孤立していると感じる可能性があります。

その環境はネズミのパークほど楽しく友人もたくさんいるものではなかったので、薬物にその避難の場を求めてしまったのです。まさに、ケージで孤独で過ごしたネズミのようなものです。

薬を使用し、依存していることに多くの人は罪悪感を覚えます。しかし彼らが気付いていないのは、物質そのものにはまっているわけではないと言うことです。薬物が与えてくれるその喜びの感情を求めているのです。

負の感情を、薬物を利用してポジティブな感情に変えたいと感じているのでしょう。不幸で孤立し困難な状況に直面している人が周囲にいる場合も、悪循環に陥りやすくなります。

おわりに

依存症が物質によって引き起こされるのであれば、携帯電話やビデオゲームなしでは生きていけない人がいるのはなぜでしょうか? このように、依存の理由は物質自体にあるのではなく、主にこれらの物質を利用して、どのように感じるかが大きく影響しています。少なくともその瞬間は、問題を忘れさせてくれるからでしょう。

しかしこれらは、結局のところ一時しのぎにしかならず、悪循環の中で生き続ける限り問題は永遠に存在し続けます。


引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。


  • Contini, E. N., Lacunza, A. B., Medina, S. E., Alvarez, M., González, M., & Coria, V. (2012). Una problemática a resolver: Soledad y aislamiento adolescente. Revista Electrónica de Psicología Iztacala15(1), 127-149.
  • Everitt, B. J., Dickinson, A. y Robbins, T. W. (2001). The
    neuropsychological basis of addictive behaviour. Brain
    Research Review, 36, 129-138 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165017301000881
  • Oviedo, R. (2012). Psicología de adicciones. Facultad de Psicología Universidad de Oviedo.(1). Recuperado de: https://www. unioviedo. es/gca/uploads/pdf/Psicologia% 20de% 20las% 20Adicciones2.
  • Souza y Machorro, M. (2006). EditorialImagenología, neurociencias y adicciones. Revista Mexicana de Neurociencia7(4), 278-281.
  • Vicario, M. H., & Romero, A. R. (2005). Consumo de drogas en la adolescencia. Pediatría• Integral, IX2, 137-135.
  • Yucel, M. y Lubman, D. I. (2007). Neurocognitive and
    neuroimaging evidence of behavioural dysregulation in
    human drug addiction: implications for diagnosis, treatment
    and prevention. Drug and Alcohol Review, 26,
    33-39. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1080/09595230601036978

このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。