自分自身に対して思いやりを持つことの大切さ

自分自身への思いやりを持つことは、弱さの表れではありません。反対に、強さに繋がることなのです。優しく自分に接することができるようになり、必要な時に自分を許すことができ、そして愛情たっぷりに自分自身に語りかけられるようになれば、人生の厳しさや過酷さにもっと上手く対処できるようになるでしょう。
自分自身に対して思いやりを持つことの大切さ

最後の更新: 23 3月, 2021

自分自身に対して思いやり(コンパッション)を持つことは、利己的行動ではありません。全ての人がセルフケアを実践する権利を持っており、それによって自身の過去そして現在の過ちを許したり、困難な状況においても励みになるものを見つけたり、あるいは敬意を持って自己に接することができるようになります。持てる知識のみでこの状態に到達することなど誰にもできませんので、自分を思いやる気持ちの育み方を学ぶことが重要です。

『デカメロン』の中でボッカッチョは、周囲にいる人々に対して思いやりの気持ちを抱くことほど人間らしい行いは無い、と語りました。どうやら、文化的にも社会的にも、私たちの中にはこの「思いやり」という感情が常に内から外へ向かうものだという考えが根付いているようです。確かに、苦しんでいる人々に対して共感の念を抱くことが私たちをより気高い存在にさせてくれる善い行いであることは事実ですが、それと同じくらい重要なもう一つの事柄を多くの人が見落としています。

思いやりは、自分自身に対しても向けられねばならないのです。そうすることは健全であり、精神浄化作用があることで、必要なことですらあります。実は、これをある種の「健全なナルシシズム」と定義する人もいるほどです。いずれにせよ、この心理的領域には自己愛以上のものが含まれます。自らに対する思いやりは、自分自身にサポートと推進力、そして生きる意味をもたらしてくれるものなのです。それでは、このトピックをもう少し掘り下げていきましょう。

自分自身に対して思いやりを持つ:心のウェルビーイングのためのカギ

単に自分を愛することと、自分を適切に、かつ正当に愛することとは全くの別物です。全ての自己愛が健全な訳ではなく、過度のエゴや行き過ぎた自己概念を持っている人も多くいます。そうなると、自分以外の他人は誰も存在していないかのような、あるいはこの世で重要なのは自分だけであるかのような有害なナルシシズムに身を置くことになってしまうのです。また、反対に、本来自己に対して持っているべき愛情や敬意を持たずに自分自身に接している人もたくさんいます。

ボロボロになった自尊心とともにこの世を生き抜こうとすると、うつ病やその他の心理的問題という闇が襲ってきます。一方で、自分自身に対するネガティブで、咎めるような、そして痛みつけるような語りかけをやめられない人々は、常に精神的苦悩の呪縛から逃れられません。チャンスが来てもそれを逃したり不幸な人間関係を築いたりするようになりますし、個人的な満足感をほとんど得ることができないでしょう。

自分自身 思いやりを持つこと 大切さ

自分自身に思いやりを持つことは、弱さの表れではありません。時にこの感情を持つことが難しいのは、私たちが思いやりを哀れみと関連付けたり、何かあるいは誰かに対して向けられる悲しみと優しさの間から生まれる空虚で受動的な感情と関連づけてしまうからです。

これはとても悲しいことですよね。ほとんどの人が自分自身を思いやることが不愉快な経験であるかのような歪んだ考え方を持っているのが現実なのです。したがって、その思い込みを解体して組み立て直し、自己への思いやり(セルフ・コンパッション)が持つ真の重要性を理解せねばなりません。

自分自身に同情的になることの大切さ

クリスティン・ネフは、「セルフ・コンパッション」という用語を定義づけ、心のウェルビーイングのためのその有用性を説明しました。彼女の最近の研究によれば、この構成概念はマインドフルネスの実践と同様の意味を持つそうです。自分に優しくするという行為、つまりセルフ・コンパッションを実践するのがメンタルヘルスに効果的だという事実は、科学的研究によって支持されているものだということを忘れないでおきましょう。

自己に思いやりを持つことは何よりもまず、人間の不完全さを受け入れる作業です。私たちが道を踏み外しやすく、ミスを犯す生き物だということを、そして私たちはそれに対して優しさや愛情を持って反応する方法を学ぶ力を持っているということを、理解しなければなりません。自分自身への思いやりを強化すべき理由はたくさん存在します。

  • デューク大学(アメリカ合衆国)はある研究の中でとても興味深いことを発表しました。日常生活にセルフ・コンパッションを取り入れている人々は、優れた心の知能を持っており、人生に対する満足感も高いということを明らかにしたのです。
  • 一方で、セルフ・コンパッションはうつ病や不安障害の発症率の低さとも相関性を示しています。これは、熟慮すべき重要な事実でしょう。
  • 困難な時期にも自分自身に敬意と愛情を持って接する能力を持つ人々の心の中で起こる対話は、偏りのない中立的なものであり、自己を批判することなくありのまま受け入れることを可能にします。
  • また、セルフ・コンパッションを実践する人々は大抵、心配しすぎたりネガティブな物思いにふけったりして心のウェルビーイングを損なうことはありません。これもここで紹介しておきたい興味深い事実の一つです(Krieger、Altenstein、Baettig、DoerigおよびHoltforth、2013年)。

セルフ・コンパッションの構成要素

セルフ・コンパッションを扱った書籍や研究は、近年ますます重視されるようになってきました。そのおかげもあって、うつ病患者に対してもっと自分への思いやりを持つよう動機付けることが、回復への助けになることが既に知られています。

例えばチューリッヒ大学で行われたものをはじめとするいくつかの研究が、セルフ・コンパッションを認知行動療法に取り入れる効果を指摘しています。というわけで、セルフ・コンパッションというエクササイズを構成する要素を頭に入れておくと良いですよ。

  • 他人に対しても自分に対しても優しく語りかけられるようになること。
  • 自分自身をポジティブに評価すること。
  • 人間は完全でも無敵でもないという事実を認識すること。
  • 苦しみや過ち、喪失も人生の一部であることを理解すること。
  • 自分自身への感謝の仕方や愛し方を知っておくこと。
  • マインドフルネスの実践により、セルフ・コンパッションをより効果的に行えるようになります。
自分自身に対して思いやりを持つことの大切さ

自分自身に思いやりを持つ:自立するためのカギ

自分自身に思いやりを持つということは、自分を「弱い」あるいは「傷つきやすい」存在と見なすこととは正反対に、自らの価値を理解することを意味します。裏を返せばこれは、自身のミスに寛容になり、心の傷を抱きしめて自分を励まし、前に進み続けるという意味なのです。

また、考慮すべき興味深い事柄がもう一つあります。それは、セルフ・コンパッションによって自立性が向上すると、自身の感情やニーズ、そして自尊心の正当性を承認できるようになるという事実です。自分の価値を正当に評価できるようになれば、他人からの関心や励ましに依存するのをやめられます。もちろん、そういったものに感謝の念は抱くでしょうが、それを頼りにしなくても平気になるのです。

最後に、不完全でいること、そしてどんな状況・環境下でも自己を愛し続けることを自分に許可するというのは、実践する価値のある健康的なエクササイズです。ぜひ今日から始めてみましょう!



  • Barnard, L. & Curry, J.F. (2011). Self-Compassion: Conceptualizations, Correlates, & Interventions. Review of General Psychology, Vol. 15, No. 4, 289–303.
  • Gilbert, P., & Procter, S. (2006). Compassionate mind training for people with high shame and self-criticism: Overview and pilot study of a group therapy approach. Clinical Psychology and Psychotherapy 13, 353-379. doi:10.100/cpp.507
  • Krieger, T., Altenstein, D., Baettig, I., Doerig, N., & Holtforth, M. G. (2013). Self-compassion in depression: Associations with depressive symptoms, rumination, and avoidance in depressed outpatients. Behavior Therapy, 44, 501-513. doi:10.1016/j.beth.2013.04.004
  • Neff, K. (n.d.). Definition of self-compassion. Self-Compassion.org. Retrieved from http://self-compassion.org/the-three-elements-of-self-compassion-2/
  • Neff, K., & Dahm, K. A. (2015). Self-compassion: What it is, what it does, and how it relates to mindfulness. In Brian D. Ostafin (Ed.) Handbook of Mindfulness and Self-Regulation (pp. 121-137). New York, NY, US: Springer.