事前登録による悪しき研究行為の回避
調査は、倫理的な方法で行われなくてはなりません。研究者は、倫理的な基準に従い、自身の研究の正当性を確実にする必要があります。過去には、研究者によって、好ましくない研究方法が実践されたこともあります。これらの方法とは、研究を継続し最終的に発表できるように、小さな違反を重ねることです。
現代研究の原動力は、結果の発表です。この目標によって、研究者たちにネガティブな圧力がかかります。それゆえに、悪しき研究行為に頼ってしまうことが珍しくはありません。歴史上には、スタンフォード監獄実験やディーデリク・スターペルのケースなど、かなり顕著なケースがいくつか存在します。
大きなウソ
スタンフォード監獄実験は、最も有名な社会心理学の実験です。この研究を行う際に実行された悪しき研究行為を示す記録がいくつか存在しています。例えば、事例証拠への依存、看守の訓練、暗黙の要求、結果の不適切な解釈などです。すべてが明るみに出てからというものの、 この研究を教科書に含むべきかどうかの議論がなされました。
ディーデリク・スターペルは、ティルブルフ大学の心理学の教授でした。2011年、スターペルが自身の多くの研究でデータを改ざんしていることがわかりました。研究で参加者を使うかわりに、データを偽造していつも同じ結果が出るようにしていたのです。
このような悪しき研究の行いは、先生を信頼していた生徒には伝えられていませんでした。修士生のひとりが、常に期待するような結果を得ていることをいぶかしく思い始めるまで、データの偽造がおこなれていたのです。そこからすべてが明るみに出ます。
「科学とは熱意と迷信という毒への最高の解毒剤だ。」
-アダム・スミス-
悪しき研究の行い
これらのケースは明るみになりましたが、ほんの一部です。最も悪しき研究の行いは、もっと巧妙になされています。それでは、悪しき研究の行いとしてよく見られるものを見ていきましょう。
- p値ハッキング:統計的分析の仮説を試験するためにp値というものが使用され、たいてい0.05に設定されます。しかし、多くの変数や実験状況が含まれる場合、この値が偏ることがあります。そのため、p値は少なめに設定することが勧められており、研究を始める前にこれを行っておくべきです。
- 低い効力:サンプルの規模が小さいと、研究の統計的な効力は低くなります。効力が低いということは、誤検出を招きやすいということです。研究結果が、本来存在しないものを示す可能性があります。
- HARKing(ハーキング):元々期待していたものではない結果を見て、初期の仮説そのものを変更することです。
事前登録とは
悪しき研究の行いへの解決策の一つとしては、事前登録があります。事前登録とは、研究の目標を設定し、研究者がそれを公開する方法です。研究者が倫理的に、あるいは当初宣言した通りに研究を行っているかどうか、誰でも確認できます。
事前登録はとても簡単です。オープン・サイエンス・フレイムワーク(OSF)のようなウェブサイトが役に立ちます。このページでは、様々な事前登録テンプレートが見つけられます。すべての研究材料(データベース、アンケート、補足材料など)をアップロードして、簡単に公開することも可能です。
「科学において重要なことは、新しい事実を発見することだけでなく、物の新しい見方を発見することだ。」
-ローレンス・ブラッグ-
事前登録の方法
オープン・サイエンス・フレイムワークでは、様々な事前登録のテンプレートが見つかります(※サイトは英語です)。より多くの情報を必要とするものもあるでしょう。AsPredicted(アズプレディクテッド)と呼ばれる簡単なテンプレートを例にとってみましょう。記入する項目は以下です。
- データ:既にデータを収集しているか、事前登録後にこれから収集するかどうか。
- 研究の仮説:試験する仮説を説明。
- 変数:どのような研究の変数が存在するか、それをどのように測るか。
- 条件:参加者を割り当てる条件(コントロールや実験など)。
- 分析:データの収集後に行う分析。
- 観察:収集する観察数。別の言葉で言えば、必要な被験者数。
研究データを公開することで、誰でも閲覧可能になります。それゆえに、悪しき研究の行いの可能性が減少します。研究するものに関して考えなくてはいけないため、事前登録には時間がかかりますが、多くの人が行っています。さらに、科学の透明度を高めることにもつながります。
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