妊娠中から子どもに平穏な幼少期をもたらそう
年齢に関わらず、子どもはストレスの影響を受けます。生まれる前の子どもも、ストレスを感じているのです。子どものストレスの引き金となる要因に気づくのは難しいですが、それは子どもにとって非常に辛い場合もあります。そのため、平穏な幼少期をもたらし、不安のない大人になるよう育てることが大切です。
子どもは、幼い頃から対処すべきたくさんのストレッサーと出会います。例えば親から離れ学校へ行く、先生に叱られる、休み時間友達とケンカする、晩御飯を食べずにおしおきを受ける、一人で寝るなどです。子どもは自分の持つ少ない道具や材料を使い、日々の問題に対処しなければなりません。子どもはこのようなストレスに自分で対処する成熟性をまだ持っていないのです。
ストレスのない妊娠期
ミシェル・オーデントは有名な産科医で、妊娠と出産が子どもの精神発達にどう影響するかを研究しました。妊娠中の母親の感情の状態が、子どもの発達における重要な役割を持つと、オーデント博士は考えます。
実際、妊娠中は赤ちゃんの最初の一年の精神状態より、強く長期にわたる影響をもたらすと彼は言います。オーデント博士の理論は、母親にストレスをもたらす外的要因が、まだ生まれていない赤ちゃんにも反映するというものです。
「妊娠している女性の精神状態を保護し、気にかけることが大切だ。母親は未来の世代を育んでいるのである。生まれようとする赤ちゃんの身体的・精神的健康は、母親の幸福と感情のバランスに左右される」
-ミシェル・オーデント-
妊娠中、女性は神経質になったり、心配したり、不快に感じるかもしれません。検査はしっかりと受けましょう。ストレスが時々であればおなかの中にいる赤ちゃんに害はないでしょうが、ストレスが長期間続くと、母親と赤ちゃんを身体的・精神的に傷つける原因になりえます。
催奇形成物質に注意する
出生前の子宮の中では、外の世界に比べ変化があまりありません。ところが、胎児に影響を与え、平穏な妊娠を妨げる環境要因があります。直接的または非直接的に子どもがそれにさらされると、構造的、機能的異常が生じるかもしれないのです。これは、妊娠中も出生後も同じです。
その一つが催奇形成物質で、この物質との接触の影響は深刻なケースもあります。催奇形成物質は、低体重児、未熟児、先天性欠損症、死の原因になります。両親、社会が一丸となって胎児の発育に安全な環境を作るため、すべきことはたくさんあります。
精神活性物質も、催奇形成物質です。妊娠中のニコチンの影響の中でも、最も知られているのが低体重での出生です。流産の原因にもなります。放射線、環境汚染、トキソプラズマ症、水痘、おたふく風邪など細菌性および寄生虫性の病気も危険です。
母親の適切な栄養
適切な発育には、妊娠中・妊娠前の母親のバランスの取れた食生活が重要です。子宮の中での健康的な発育や赤ちゃんの誕生への備えに関わります。実際、妊娠前の母親の栄養状態は、妊娠中にどれだけ栄養を摂るかよりも赤ちゃんの誕生に影響します。
妊娠中の女性が栄養不足の場合、平穏でストレスのない妊娠期を送るのは難しいでしょう。赤ちゃんの栄養失調の影響には、免疫系の抑圧、神経系の不完全な発達などがあります。
自然で平穏な出産
赤ちゃんにとって出生は、非常にストレスの大きいものであり、「トラウマになる」時でもあります(Otto Rank, 1923)。赤ちゃんにとって、これは保護され依存していた子宮の中から、自分で呼吸をしなければならない外の世界へ転換することです。低い温度、光や音の変化に適応しなければなりません。突然、ある程度自立しなければならないということです。
母親と赤ちゃんにとって、自然分娩がより健康的であるという科学的調査があります。自然分娩では、合成されたホルモンの使用は必要ありません。例えば、合成されたオキシトシン(ピトシン)は、出生時に問題を引き起こすことがあります。は、出生時に問題を引き起こすことがあります。何の介入がなくても、赤ちゃんは新たな環境の衝撃を受けます。
平穏な幼少期をもたらすということは、発育に好ましい状況を作るということです。出生後、新生児の内的調節系が、新たな環境に適応することが重要です。
初めの1時間のスキンシップ
なんて美しい瞬間でしょう!生まれたばかりの赤ちゃんが母親の胸に触れる時は、魔法のような瞬間です。初期の身体的接触は、赤ちゃんを落ち着かせ、授乳を促すという研究結果があります。肌と肌の触れ合いは、出生後初めの1時間を赤ちゃんにとってストレスの少ない時間にします。
これは生態的変化でもあります(Bronfenbrenner, 1979)。妊娠中の母親と赤ちゃんの身体的つながりが、出生後、精神的つながりへと変わるのです。
第2の9か月
出生後、エクステロゲステーション期間という、赤ちゃんの第2の9か月が始まります。この期間、赤ちゃんは子宮の外で「温め」続けられます。母親は赤ちゃんの身体的、精神的調節をします。この期間には自分が赤ちゃんに与えている感情に気を付けることが重要です。母親がストレスを抱えていると、赤ちゃんも同じ良くない反応をしてしまうかもしれません。
大人の支援ネットワーク
子どもは成長するにつれ、人間関係や友達との輪も大きくなります。そこで、子どもは保護と支援のネットワークを作る大人集団を必要とします。
これは子どもに過保護になるべきだと言っているのではありません。困難な状況で、助けを求めることができる支援の源があるということです。これがあると、子どもはストレスに過敏になるのではなく、幼少期に反発性を養い、困難に打ち勝つ能力を高めるでしょう。
何らかの原因で子どもがストレス反応を示す時、最初に愛着をもった人物が子どもの緩衝材になります。このような支援ネットワークがない子どもは、ストレスのかかる状況により苦しみます。子どもは大人の愛、ケア、保護を必要としています。ストレスに対するこのようなバリアのみが、幸せ、平穏な乳児期・幼少期をもたらすのです。