失算:数を理解できない症状

27 1月, 2020
失算とは、簡単な数計算を行う能力を失うことを言います。この記事では、この障害とは何か、また介入にあたっての現在の選択肢、そして計算障害との違いについてお話しします。
 

例えば、2といった簡単な数字が理解できなかったり、2+2といった計算ができないとしたら・・・?失算と呼ばれるこうした計算能力障害は、1925年に神経学者のサロモン・ヘンシェンによって初めて報告され、今でも科学界を驚かせ続けています。

数計算が脳のとある特定分野で行われているということをご存知ですか?言わば、計算機が内臓されているようなものです。なので、この障害は計算能力に直接影響を及ぼすものになります。後天的な脳損傷によって引き起こされるもので、先天的に持って生まれてくるものではありません。

様々なタイプの失算

この障害には大きく分けて2つのタイプがあります。2つのタイプの違いは、障害の及んでいる能力と、脳損傷のある部位によります。一般に、失算の患者は合理的・論理的な役割をする左脳に何らかの損傷があります。また、どちらのタイプに診断されるかは、被った損傷がどの程度患者の能力に障害を与えているかによります。

計算できない 失算

一次性失算

一次性失算は、失算障害が他の障害に関連しない場合です。この障害の患者は数字を理解したり、数字の組み合わせを理解する能力を失います。

 

主な障害は、演算ができないことです。また、記号の使用や解釈といった抽象概念にも障害があります。一次性失算を引き起こす脳損傷は、通常、左脳の前頭葉に位置します。この前頭葉という場所は、脳というオーケストラの指揮者と見なされています。そのため、前頭葉に変異があると、患者は数学的概念に遭遇しても脳を切り替えることができなくなってしまうのです。一次性失算には2つの明確な症状があります。

  • 失演算:算術計算を行うことができなくなる
  • 演算記号の認知障害: 計算という感覚の喪失

二次性失算

数学能力の異変が他の神経心理学的障害も伴うタイプがこれにあたります。そのため、二次性失算は言語的、空間的、あるいは実行機能の障害から来ていることがあります。可能性としてあげられる起因によって以下のタイプに分けられます。

  • 失語性失算:計算障害が言語的異変に起因している場合です。言語運用ができなくなっているために、数的言語を理解したり、体系化したりできません。
  • 失読性失算:主に読解や数的記号認識の困難に関連したものがこれにあたります。患者は単純に数的記号などを読んで理解することができません。
  • 失書性失算:失書症は、書くことを通して自分のことを伝えたり、表現したりすることができない症状を言います。適切に手を動かせないことに起因するものではありません。そうではなく、記号的な次元で書くという行為を理解できないことに起因します。そのため、患者は数字を書くことができません。
  • 前頭葉性失算:おそらく最も一般的な失算がこのタイプで、注意欠陥障害といくらか関連しているところがあります。このタイプの失算になった患者はシステマチックに同じ間違いを繰り返す傾向性にあります。これは間違いを認識することができないことに起因しています。また、この失算の人は解決策を見つけることにも困難を覚えます。
 
  • 意味概念性失算: このタイプの失算の患者は、物事の間に存在する概念を取り扱うことに困難を覚えます。分かりやすい例の一つに、数計算を見てその問題を解くのに必要な手順を考えることができないというものがあります。
  • 空間性失算:この特殊な症状は右脳を損傷した結果、起こるものです。算術問題は、空間処理問題とも関連があります。

一次性失算の診断法

最も大切なことは、症状が口頭および書きの両方であるかを見ることです。一次性失算の患者は数概念を失いますが、しばしばそうした症状を医師が他の失語性の問題と混同することがあります。失算が概念を失うことによるものなのか?あるいは、口頭での指示を理解できないことによるものなのか?失算という障害の根本的な原因を把握することが大切です。

なぜ脳の前頭葉を損傷した人は数字に関する障害を持つようになるのか?

まずはじめに、数字を扱うタスクを行うには、様々な数的概念をしっかり理解している必要があります。例えば、足し算を説くには足し算の概念を理解しなければいけません。次に、数計算問題のほとんどは抽象的な理論推理力が必要になります。前頭葉の損傷によって起こる症候群では抑止力の欠如によって、集中力を保つことに困難があるため、こうした情報処理プロセスが困難になります。

最後に、視覚、または聴覚刺激の統合がうまくされていないと、数演算に必要な選択的注意力や順番に情報を処理する能力に影響が及びます。前述しましたが、前頭葉は脳というオーケストラの指揮者です。もしこの機能が不能に陥ると、問題を解くのに必要な情報を処理することがより難しくなります。

 
失算

失算とそれに伴う苦悩

失語症の人は言語障害に加えて、失算にも苦しむことがあります。例えば、ブローカ失語症の人の場合、計算に使われる言語理解の障害として現れます。ですが、失読性失算では読解に障害があるために失算の障害が生まれます。

また別の例として生粋の失読症があります。この場合、文章を口頭や文字通りに理解することが困難なために、数字や大きさ、序列などを間違って理解することになります。

失算をチェックできるその他の方法

失書症では、しばしば数量を書くことができない事が失算と関連することがあります。そのため、失書症のタイプによって、失算のタイプも変わってきます。

ウェルニッケ失語症の人は、耳で聞いた数字の書き取りで間違いをおかします。口頭での理解困難に対処するために、ウェルニッケ失語症の人は勝手な数字をでたらめな順番に並べる傾向にあります。

治療法とアプローチ

この障害を理解する上で最も大切なことは、似た名前を持つ計算障害とは大きく違うものだということです。計算障害は発達学習障害であり、異なる介入対策を必要とします。失算は、神経心理学者が患者に対して様々な検査を行って診断します。検査には暗算、書かれた状態での計算、序列演算などが含まれます。計算記号の理解やマス目への数字の並べ方を検査したりもします。

 

一次性失算の治療は、損傷のタイプや深刻度によります。失われた神経組織を元に戻すことはできないので、リハビリでは神経可塑性に基づいた新しい方法を教えることに専念します。

最後に、失算を患うと完全に元に戻ることはないものの、治療を受けることで新しい状況に適応することができるようになります。一方で、二次性失算への治療は失算に伴う障害によって様々です。最近では、新しいテクノロジーによる情報提供やアプリケーションがこの複雑な病気を持つ人にとって朗報となっています。