遂行機能障害の影響:前頭葉が機能しないとき

2019年11月29日
脳の損傷は、認知的遂行や行動に対し、どのような影響を与えるでしょうか?ここでは、遂行機能障害の影響と主な症状を説明します。

遂行機能障害(DES)は、前頭葉、より細かく言うと、前頭前野の損傷により生じます。脳のこの部位は、より複雑な遂行機能を処理します。

そのため、前頭前野の損傷は、記憶障害、注意障害、言語や感覚などの原因になります。一番の問題は行動に出ます。遂行機能障害の影響には、患者の知的パフォーマンスに影響する一連の症状が含まれます

 

遂行機能障害の影響による最も重要な機能

前頭葉は、脳のオーケストラの指揮者と例えられます。特定の部位の損傷による症状であり、主な影響には次のような症状があります。

  • 運動機能:反応する能力が変化します。同じ行動を繰り返し、統合されていません。
  • 注意:反応に影響がおよび、集中する能力にも影響が出ます
  • 言語:発語に障害が発生し、物の名前を言うことが難しくなったり、考えたことを忘れます。
  • 感覚:感覚的解釈が変化し、物を認識することが難しくなります。
  • 行動:損傷は、何より行動に影響します。損傷の部位により、無関心、抑止、不適切な社会的接触が生じます。
  • 記憶:情報を保持し、思い出すことが難しくなります。
遂行機能障害 前頭葉

 

運動機能

病理学的反射として、運動機能に変化が生じる傾向があります。握り反射など、自動的で調整されない、非適応性反応です。一方で、タスクを遂行する新たなストラテジーを取り入れられない固執性があります

固執性とは、例えば、何度もドアを開けようとし、それがかなわないのにもかかわらず、方法を変えようとしないことです。他にも、過活動や物事に注意を注ぐことが難しいなどの症状があります。

注意制御の問題

前にも記したように、注意は脳の前頭野の機能のひとつです。この部位が損傷すると、感覚刺激に対する反応が高まり、目の前のタスクに注意を注ぐことができなくなります

記憶

脳の損傷は記憶に影響を及ぼします。作話(さくわ)につながることの多い前向性健忘(新たな記憶を作ることができない)や情報の保持が大きく制限されます。さらに、脳の損傷は出来事の順序性混乱の原因にもなり、これは、一般的な混乱の感覚を生みます。

 

行動と遂行機能障害

前頭葉の損傷は必ずしも無気力や感情的反応の欠如と関連するわけではありませんが、即時性や幼稚性とは関連します。一般的に、行動の変化は損傷の部位に左右され、その影響は大きく変わります。

  • 左葉の損傷:患者は無関心や冷淡になります。社会的接触に興味をもちません。
  • 右葉の損傷:感情抑制の傾向があります。性的に不適切な行動をしたり、刺激への反応が即時的(行動を考える時間をとらない)になります。

言語

左脳は言語を司り、左脳の損傷は、非常にネガティブな影響を及ぼすことがあります。分析や概念化に支障が出ます。患者の多くがフォーマルスピーチを保持しますが、計画や記憶に関する能力に障害がでるため、何度も同じことを言ったりしがちになります。行動的変化はコミュニケーションにも影響するのです。

感覚

感覚の変化は、多くの場合、もっとも明らかなものではありません。中でもわかりやすいのは、視覚探索(選択的注意)が関わるタスクです。遂行機能障害の患者は人や物を認識することが苦手です。また、目の動きをコントロールするのが難しかったり、空間的無視がみられます。

遂行機能障害 前頭葉

 

遂行機能障害の気質的基礎

細かい症状は前頭葉、特に前頭前皮質の損傷に付随して現れる傾向があります。神経心理学の研究により、損傷を負った構造による症状が、より詳しく分かってきました。

  • 背外側前頭前野:この部位の損傷は認知機能に影響を及ぼします。複雑な問題の解決や計画に困難が生じます。認知的柔軟性や運動に関係するタスクの実行が難しくなります。
  • 眼窩前頭皮質:この部位の損傷は、抑制の欠如、攻撃性、苛立ち、社会的規律に適応できないなどの行動問題の原因になります。また、同時に、人がすることを真似ることによってコミュニケーションを取ろうとする傾向があります。周りの人の言葉や動き繰り返します。
  • 前帯状皮質:この部位は、無関心、活動負荷、突発的行動と関係します。また、感情表現の認識能力に障害が現れます。このタイプの損傷は、うつ病に苦しむことも珍しくありません。

 

評価と治療

神経心理学者が遂行機能障害を診断します。患者の評価には、標準化されたテストが用いられます。また、患者の診断には、神経科医やその他の医療従事者も関わります。正確な診断には、完全なレポートと損傷の評価が必要なためです。

治療には、損傷の部位や重症度に合わせた、患者の認知機能の維持や回復が必要です。また、患者の社会生活に影響する症状を管理するため、薬を使うこともあります。

さいごに。脳の損傷や脳卒中は遂行機能障害の原因になります。主な症状は、ほとんどの執行機能が影響を受ける、全体的な知的欠如です。この認知的症状は、リスクの大きい行動やリスク要因を避けることの重要性を表しています。