シルビオ・ロドリゲスの歌詞から学ぶこと
シルビオ・ロドリゲスは70年以上に渡りコンサートで歌い続けるミュージシャンです。考えさせられる歌詞が特徴のこのキューバ人シンガーソングライターのコンサートのチケットは、今尚売り切れてしまうほど人気があります。また、政治的なテーマで作曲した曲は、聞いていると、色々な視点や考え方を提示してくれます。
シルビオ・ロドリゲスはキューバ革命後に起きたキューバ音楽運動、「Nueva Trova(ヌエバ・トローバ)」の先駆者です。Nueva Tovaはキューバの伝統的音楽に、政治的なイデオロギーを含む歌詞がついた音楽です。その歌詞は社会主義、不正、性差別、植民地主義、人種差別、などに注目し、ありふれた日常から人々を解放したいという思いが込められています。
シルビオの歌詞の中で最高を決めるのは、とても難しいことです。なにせ、40年以上に渡り、500以上の曲を作ってきたのですから。しかし、その中でも今回は特に力強い歌詞を紹介します。
シルビオ・ロドリゲスの革命
「この革命が崩壊すると、やつらは俺を岩から突き落とす気だ。両手を折られ、口を閉ざされ、目は潰され、舌も切られてしまうだろう。この愚鈍がこの俺を生んだんだ。それは価値もなく生き続ける愚かさだ。」
シルビオ・ロドリゲスは、彼の歌詞からもわかるように、いつもキューバ革命を擁護してきました。しかし、このように、革命の代償を問う歌詞もあります。キューバ革命により、多くを失った人の存在も彼はよくわかっています。しかし、彼は、革命が終わってしまう時こそ、全てを失ってしまう時だと信じています。彼は、どんな結果を招こうと、自身の見解を尊重し支持し続けています。
そしてまた、このような歌詞の中には、彼の資本主義と、全てに価値をつける経済社会への批判も含まれています。他人に馬鹿げていると思われようが、彼には関係ありません。なぜなら、時代が変われば、何が馬鹿げているかも変化する事を彼は知っているからです。「もし知識が右でないなら、その時は左に決まっている」や「問いかけるために生きているんだ。決して知識があることが贅沢なことではない」などといったフレーズに、彼の考えがよくあらわれています。
シルビオ・ロドリゲスと愛
「この世界で1年に1日。どれだけのカップルが、距離や壁、海やこの先何年も続く偏見に気を取られず、結婚するのか。そんな彼らには美しさが見えているのだろう。最後には、愛は人を幸せにし、人は愛の素晴らしさを語るのだ。」
シルビオ・ロドリゲスの曲の多くは愛についてです。しかし、彼が恋愛について歌っているのかは、明確ではありません。例えば、「私の愛に国境はない。特定の庭を好まない春のようだ。」このような歌詞では、シルビオはおそらく人類、または大地に対する愛について語っているのでしょう。
明確なのは、彼は愛が創造の源であると確信している事です。例えば、「愛のみが不思議を生み出す。愛のみが泥を奇跡に変えることができる。」このような歌詞では、愛があれば何事も可能である事を語っています。「全てを忘れて、愛し続けよう。愛こそがどんな力にも負けない、真の力なのだから。」また、次のような歌詞もあります。「愛はバイオリンのようなものだ。音色が止むこともあるが、弦がその音色を忘れることは決してない。」
シルビオ・ロドリゲスが語っていること
「僕は不可能な事を語る方が好きだ。可能な事についてはもう十分すぎるほど知っているからね。」
シルビオは私たちがすでに知っている事については語りません。誰もが知っていると信じているような事について、あえて曲を作ることはしません。シルビオは人々を考えさせるような曲を作ってきました。彼の曲の中には希望のメッセージやより良い未来を語ったものもあります。
彼は有名な一句のなかで、こう言っています。「あなたの体を包む奇跡のような雨がやめばいいのに。あなたなしでも月が登りますように。この地があなたの歩みを歓迎しませんように。」シルビをは何かを批判しているようです。この何かとは、彼を失望させたある権力者、または国かもしれませんし、または彼が言ったように、シンプルな失恋の曲かもしれません。
https://youtu.be/kB9wpKXvr1o
シルビオ・ロドリゲスとは誰か
「僕が錯乱状態にあるのか、ただ時期がよくないのか。僕は人が思っているような人間だ。もう色々と僕を判断しないでほしい。」
私たちは、他人にレッテルをはってしまいがちです。他人をカテゴリー別に分けてしまい、個人がレッテル以上の存在である事を忘れてしまいます。シルビオはそのようなレッテルを避けてきました。上記の歌詞で彼は、人々が思う様々な彼の人物像全てであると言いながら、本当の自分はそれ以上であると述べています。これらの歌詞を理解するには、批判的思考が必要で、状況を踏まえて考える必要があります。
この記事の最後はこの歌詞で終えたいと思います。「悲惨なことは一瞬で学んでしまう。美しさを学ぶには一生かかるものだ。」