「文化の盗用」とはいったい何?
芸術とは、様々な影響が混ざりあったもので、多くの模倣的要素を含んでいます。そして文化の盗用の問題は、こういった創作手法とコピーや盗作、剽窃といった概念との間の区別のなかに存在するのです。
この点で、著作権は集合的アイデンティティのなかで薄れていき、適者が弱者を利用するような権力関係に由来する形式に屈してしまいます。この概念は多くの人々が「悪用」として言及するものです。
これに関する抗議は数多く起こってきました。たとえば、ポリネシアン部族をモチーフとしたタトゥーの存在は非常によく知られていましたが、のちに数々の議論を生むこととなりました。また、歌手のロザリアによるジプシーシンボルの使用が幅広い方面から批判されたのも記憶に新しいでしょう。
文化の盗用とは正確には何なのか?
前述の通り、文化の盗用とは自身の文化とは異なる文化に属する機器やイメージ、シンボルなどを取り入れることを意味します。
この定義に関しては、それが本当に他者の文化の悪用を指しているのか、もしくは多くのケースで単に他文化へのトリビュートを捧げているだけなのかという疑問が存在します。
文化の盗用という概念をさらに深く分析していけば、この考え方には権力の力学が内包されていることがわかるでしょう。これはつまり、支配者側の文化が、自らが組織的に抑圧してきた文化の要素を使用することへの非難が含まれているということです。
文化の盗用は真新しい概念というわけではありませんが、それでも多くの議論の対象となっています。 グローバリゼーションやテクノロジーの前進により、私たちはたった一度のクリックでたくさんの情報へアクセスできるようになりました。そのため、文化の盗用は新しい概念ではないとはいえ、その世界的な次元は新しく誕生したものだと言えます。では、文化の盗用と、ある文化への賞賛が元になったトリビュートとの正確な違いは何なのでしょうか?
この問いに答えるためのカギとなる二つのポイントが、同意と利益の分配です。これは模倣行為には明白な経済的関心が存在しているためであり、特に音楽の分野では殊更それが目立ちます。
この意味では、文化産業による特定のシンボルの濫用を示す際に「文化の盗用」という言葉を用いることが可能です。このような濫用は、元の文化を象徴的あるいは経済的に認識していない際に頻繁に発生します。
文化の盗用 vs 同化
これは、全ての人の物語が合流することによって生まれる複雑な問題です。したがって、これを深く分析するためには国際的な権力関係がどう機能しているかを理解しなければなりません。
まず、この議題に関する別の視点にも触れておく必要があります。たとえば、一部の人は西洋人以外でジーンズを履いている人や英語を話す先住民は支配者側の文化をある意味で盗用している、と主張します。
しかしこれに反対する人々は、疎外された集団には、彼ら自身の伝統的慣習に執着すべきか否かを決断するのに十分な力が無いのだ、と主張しています。したがって、文化の同化は疎外された集団に属する人々が生き抜くために支配的な文化の要素を取り入れる時に起こるのです。
文化の盗用の例
文化の盗用のわかりやすい例が音楽業界にはいくつか存在しています。エルヴィス・プレスリーがアフリカン・ミュージックを大衆的なものにしたことや、最近まで非白人グループや低階級グループと関連づけられていたトゥワーキングの普及などが、その例です。
また、通常は平和と結びつけられることの多い仏教でも、瞑想を巡るステレオタイプに起因する文化の盗用例があります。
このように、文化の盗用とはかつては市場の枠の外にあったものを導入して商業化するための手段なのです。
文化の盗用は本当に問題なのか?
文化の盗用は解決の難しい概念で、中にはこれを否定する人もいます。以下では、その理由とされる主張を紹介します。
- 多くの人々が、文化の盗用は存在してはいるもののたいして問題ではない、と主張しています。
- 彼らの主張は、文化とは変化し続けるもので、限界がないという点に終始しており、文化は流れ続け、常に変化を繰り返し、一つのトレンドから別のトレンドへと移り行くものだ、と述べられています。
- 文化の盗用が存在するためには、数人の手にしか属していない文化的要素がなければなりません。
- 文化の侵害は、かつては楽しめていたものが他の誰かの行動によってもう楽しめなくなってしまった時に生じます。しかし文化の盗用は、以前はほんの小さな集団内でしか使用されていなかったものが幅広く支持されるようになると生じます。
- 非人種主義的なレイシズム?100%純粋で、あるいは盗用されたものではない文化的要素など存在しないことを頭に入れておくべきです。
活動家たちはしばしば、文化に関して所有欲を出してしまいますが、純度の高い文化は全ての人間たちが発達していく場である社交的な環境の特徴とは言えないでしょう。
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- The Guardian, https://www.theguardian.com/commentisfree/2012/may/18/native-americans-cultural-misappropriation
- Afroféminas, https://afrofeminas.com/2018/11/13/que-hay-de-malo-en-la-apropiacion-cultural-9-respuestas-que-te-muestran-el-dano-que-hace/comment-page-1/
- El País, https://elpais.com/cultura/2019/06/15/actualidad/1560606045_241833.html