コロナウイルスによる神経科学的影響:最新の発見

20 5月, 2020
嗅覚と味覚の喪失、神経痛、めまい、精神錯乱、そして時には脳症に至るまで…。専門家たちは現在、コロナウイルスによる神経科学的影響を調査しています。

SARS-CoV-2に関してはまだ生物学的に謎に満ちた部分が多く、現在科学者たちが少しずつそれを解明しているところです。しかしこのウイルスは答えよりも疑問の方を多く浮かばせるようです。とは言え、一日一日が過ぎるにつれて、顕微鏡のレンズを通して、あるいは発生した症状を分析することによって少しずつ理解は深まってきています最新の発見によって明らかになったのは、新型コロナウイルには神経科学的な影響をもたらす力もあるということです。

2、3か月前、北京の清華大学は、細胞がウイルスのRNAを自身の遺伝物質と混同し、私たち自身でウイルスタンパク質を作成してしまうとの見解を発表しました。また、コロナウイルスが呼吸器系にもたらす影響については誰もが知るところであり、これはCOVID-19がMERSやSARSと共通して持つ特徴です。

しかし、現在のパンデミックを引き起こしているウイルスは、さらに高いウイルス負荷を誇ります。実は、そのウイルスとしての感染力は他のウイルスよりも最大1000倍強いのです。これに関して専門家は、感染初期の間はウイルス負荷全体が喉で見つかり、それが病気の拡散に助力すると述べています。そして感染からだいたい七日あるいは八日経つと肺に問題が生じ始めます。

しかし数週間前、科学界はなぜこういった呼吸器系の症状が生じるのかの説明となる新たな影響について明らかにしました。COVID-19の発症起源はおそらく、私たちの中枢神経系にあるだろうというのです。

コロナウイルス 神経科学的影響

コロナウイルスによる神経科学的影響

誰もが、新型コロナウイルスには私たちの嗅覚や味覚を奪う力があるというニュースを耳にしたことがあるでしょう。キングス・カレッジ・ロンドンのクレア・ホプキンス博士ら専門家がこれについて説明しています。

この症状は呼吸器系からもたらされるものではなく、むしろ中枢神経系から来ているそうです。さらに、日常的に患者と接する中で多くの医師たちが、数多くの神経症状を患者たちが示している様子を目の当たりにしています。

いくつかの症例では、脳の損傷さえもが検知されました。北京大学の医学者たち(Yan-Chao Li、Wan-Zhu Bai、Tsutomu Hashikawa)によって行われた研究では、患者のCTスキャンからこのコロナウイルスには神経科学的影響を引き起こす可能性もあることが明らかになっています。

神経症状を見せる患者は36.4%

イタリアのシエナ大学で、医師たちはこれに関する分析を数週間続けています。アントニオ・フェデリコ博士は、患者のうち36.4%が神経異常を見せると解説しました。イタリア神経学会では、こういった症状についてさらなる分析を試みているところです。

彼らが発見した中枢神経系に関連する症状がこちらです。

  • 味覚障害(味覚の消失)
  • 嗅覚障害(嗅覚の消失)
  • 神経痛(頭、首、顔の痛み)
  • 偏頭痛
  • 精神錯乱
  • 筋肉の激しい痛み
  • めまい、吐き気、嘔吐

ガッサーン・シャジン博士とダニエル・ノウジャム博士が紹介した症例のように、脳症に苦しんだという非常に特殊な症例についても報告があります。また、心理状態を変容させてしまうような珍しい神経疾患が進行してしまった58歳の患者のケースもありました。

3月21日には、フロリダにあるチャールズ・E・シュミット医科大学のエイジア・フィラトフ博士によってまた別の症例が報告されています。この症例では、COVID-19の患者に別の脳症の進行が見られました。

呼吸器系の異常の原因である可能性も

2002年のSARSやMERSが明らかに呼吸器系へ直接害を与えていたのに対し、科学者たちはCOVID-19に関しては異なる発見をしつつあります。

今回のケースでは、中枢神経系が急性呼吸器疾患を引き起こす媒介となっているそうです。この事実は、Yan-Chao Li博士、Wan-Zhu Bai博士、そしてTsutomu Hashikawa博士が伝えています。

専門家らによれば、SARS-Cov-2は呼吸を司っている脳幹の中心を侵すそうです。さらに、このウイルスが脳全体に病毒を広める様子も観察されています。

また、このウイルスは自発呼吸が阻害されるレベルに至るまで脳内の心肺に関わるニューロンに害を与えます。

ウイルスの行動メカニズムを理解することは、強みになる

私たちはすでに、新型コロナウイルスが神経学的影響をもたらすことを認識しています。また、多くの患者が命に関わるほどの急性肺炎に苦しむこともわかっています。今私たちは、その起源と行動メカニズム、そして結果を把握しているのです。こういったあらゆるデータが非常に有益です。

この目に見えない敵がどのように我々を攻撃しているのか知ることは、私たちにとって強みになります。確かに、いまだに体内のウイルス負荷を減少させるために必要なツールが無いことは事実です。しかし科学者たちがその遺伝子コードの謎を解き明かそうと取り組んでくれていますので、私たちはきっと効果的にこのウイルスと戦う方法を確立して行けるはずです

私たちに今できるのは、感染曲線を平らにできるよう、科学者たちが治療法を見つけてくれることを祈りながら外出自粛を続けることのみです

  • Neo Poyiadji, Gassan Shahin(2020) COVID-19–associated Acute Hemorrhagic Necrotizing Encephalopathy:Radiology Mar 31 202 doi.org/10.1148/radiol.2020201187
  • Yan-Chao Li Wan-Zhu Bai, Tsutomu Hashikawa (2020) The Neuroinvasive Potential of SARS-CoV2 May Play a Role in the Respiratory Failure of COVID-19 Patients. Journal Medicine Virology DOI: 10.1002/jmv.25728