コロナウイルスに関する心理学的対策
コロナウイルス危機の真っ只中で、私たちはまた別の命を脅かすウイルスが、COVID-19よりも急速に世界中へ広がっているのを目の当たりにしています。そのウイルスとは、「恐怖心」です。ただソーシャルネットワークを見るだけで、ニュースが一瞬にして広がる様がわかり、恐怖心やパニックさえも感じてしまうでしょう。しかし、このような不穏な状況のなかでは、コロナウイルスに関する心理学を踏まえた助言ほど効果のあるワクチンはありません。
アメリカ心理学会(APA)といったいくつかの学会は、コロナウイルスに対する不安は「感染症」のようなものであり、ウイルス自体と同じくらい危険なものだ、と我々に伝えています。
マスクや消毒薬の購買が急激に増え、近くにいる人がくしゃみをした時には恐怖を感じ、さらには私たちの日々の習慣さえも変わり始めています。例えば多くの人々が飛行機に乗るのを取りやめたりしているのです。
私たちは極端な反応をしてしまっているのでしょうか?おそらくそうでしょう。では、このような状況で恐怖心を感じるのは間違っているのでしょうか?いいえ、それは違います。
これほど勢力の強いウイルスに対面している状況では、恐怖や不安を感じてしまうのは論理的ですし、仕方のないことです。しかし、恐怖心は不安を煽るものとしてではなく、常に警告を鳴らすシステムとして機能させなければなりません。パニックや不合理な行動によってではなく、理にかなった論理的な形で反応できるように恐怖心をうまく使う必要があるのです。こうすることで自分の最善を尽くすことができ、どのような問題が生じても対処できるようになります。
これを達成するために、そして現在私たちが経験している状況に適切に対応するために、いくつか考慮に入れておくべき非常に具体的なアドバイスがあります。
コロナウイルスに関する3つの心理学的なアドバイス
一部の人々は、COVID-19はパンドラのウイルス箱から出てきた最後のウイルスだったのだ、と主張しています。確かにそれはあり得ることですが、ゼウスの命令でヘーパイストスが作り出したこの神話上の箱の中には、また別のものも入っていました。それが「希望」です。
人類の医療制度はよく整備されたものであること、そして私たちは数多くの病気やSARSやMERSといった感染症の流行に何十年間も対処してきたことを忘れてはなりません。
アメリカ心理学会(APA)のメンバーであり、危険認識や行動科学を専門とするバルーク・フィッシュホフなどの専門家たちは、こういった状況では全ての人が適切に振る舞うことが要求されるのだ、と指摘しています。
彼自身の言葉を引用します。「危機的状況下では、人々は協力し、互いに助け合い、勇敢に行動しなければなりません。私たちがパニックに陥ってしまったら、協調的に行動する機会を自らの手で奪ってしまうことになるのです」
では、このコロナウイルス危機の中でいくつかタイムリーなアドバイスを見ていきましょう。
1. 情報過多は過度な心配へ繋がる:触れるべき情報量を調整しましょう
私たちを恐怖で埋め尽くすような画像が多数存在していますが、それは単に従来の恐怖心ではありません。これは、”パンデミック”、”感染”、”ウイルス”といった言葉が私たちの中に作り出す、生まれたばかりの恐怖なのです。防護服に身を包んだ医師たちの画像や、マスクを装着した人々の画像は我々の内部に警戒心を生み出してしまいます。
目の前の過度な量の情報を全て取り入れてしまうと、この恐怖心がそのうち不合理なものとなってしまうのはほぼ避けられません。私たちにはほぼ一瞬で自分が常にどれくらいの量の情報に晒されているかがわかりますし、テレビやラジオをつけるとまず最初に聴くことになるのが”コロナウイルス”という言葉であることもわかっています。
- このトピックに関するニュースに晒される量を調整しましょう。コロナウイルス関連のニュースが一日中自分の周りにあることがないようにし、できる限り通常通りの生活を送る必要があります。公的な情報源を探し、有害な情報は避けてください。また、あまりにも心配になってしまうときには、自分が最も興味を持てる活動や、リラックスするのに役立つような活動に時間を使うのが最善です。
2. 偽の情報こそ全てのウイルスの中でも最悪のウイルスである:デマから身を守りましょう
コロナウイルスに関する心理学的なアドバイスの2つ目は、デマやフェイクニュースなどを考慮に入れるべきだ、というものです。偽の情報ほど危険なウイルスはありません。こういったニュースはほぼ瞬時にパニックを引き起こします。一度のクリックだけですぐに人々はこのニュースをシェアし、ウイルスのようにデマが広がるのです。
最近では、塩水がCOVID-19の感染拡大を防ぐ、という情報を皆さんも目にしたことがあるかもしれません。また、武漢の道端で数人の人々が死んでいるかのような改ざんされた画像を見た方もいらっしゃるでしょう。さらに、ビル・ゲイツがコロナウイルスの特許を持っている、という情報までありました。
本当の死者数は伝えられている数よりも多いとか、このウイルスは経済を動揺させるために米国あるいはロシアが放出しているのだ、という陰謀論が無くなる気配は一向にありません。こういった話のリストは延々と続きます。
- 私たちが受け取るニュースの40%が偽の情報であることを念頭に置きましょう。ここでワクチンとなるのは本物の情報であり、そのためには目にするもの全てに関して注意深く、積極的になる必要があります。政府が出す最新情報や世界保健機関などの組織が発表するニュースを確認するようにしてください。
3. 冷静でいることが最善の策:警戒は怠らず、しかしパニックにはならないようにしましょう
“パニック”という名のウイルスに立ち向かうときの最善の策は冷静でいることです。恐怖心や不安が目の前にある状況では、騒ぎ立てるよりも警戒を怠らないようにするのが得策です。これの意味するところは、精神的に冷静な状態でいると、より適切な行動を取れるようになるということですが、だからと言ってニュースに無関心でいるべきという訳ではありません。
ここで言わんとしているのは、利益よりもむしろ害をもたらすような行動に繋がりかねない不合理な恐怖心を感じることなく、現在進行形で状況を見定める目を持ち続けよう、ということです。
- コロナウイルスに立ち向かうための最も基本的な心理学的ヒントの1つは、できる限り通常通りの生活を続けることです。ルーティーンこそ私たちの最大の味方となってくれます。また、同時に、一日のうちいずれかの時点で最新情報を入手するようにも心がけてください。最新の専門家の助言を把握しておかねばなりません。
最後に、私たちにはこのCOVID-19を巡る状況においては全ての進展情報を把握する必要があることがわかっています。私たちが晒されているのは新種のウイルスであり、保健機関もどう対応すべきか分析するために時間を必要としています。
では、私たちがすべきことは何でしょう?シンプルにできる限り日常のルーティーンをこなし続け、基本的な衛生ガイドラインに従い、公的機関から与えられる指示に従うことです。
ここでもう一度、バルーク・フィッシュホフ博士の、「私たちはパニックにならずに協力して行動することによって全ての危機を解決することができる」という言葉を思い出してみてください。この貴重なアドバイスにみんなで従いましょう!