道徳的相対論:善と悪について

道徳的相対論:善と悪について
Sergio De Dios González

によってレビューと承認されています。 心理学者 Sergio De Dios González.

によって書かれた Roberto Muelas Lobato

最後の更新: 21 12月, 2022

道徳は、人々の行動を左右する社会規範や信念、習慣などによって作り上げられています(Stanford University, 2011)。これは善と悪を決定するための価値観と言ってよいでしょう。言い換えれば、道徳によって、私達は自らの考えや行動の是非を判断しているのです。

しかし、当たり前のように思えるこれらのことは、深い疑念を生み出します。その疑問と矛盾に対する答えの1つに道徳的相対主義というものがあります。

道徳とは、客観的なものでも普遍的なものでもありません。なぜなら、同じ文化内でも人々が持つ倫理観は異なっているからです。それが2つの文化間の話だったら、なおのことです。さらに、同じ社会の中に共存している異なる宗教はさらなる道徳の差異を生み出しています (Rachels and Rachels, 2011)。

道徳と近い概念に倫理というものがあり、これは道徳内の普遍性を現しています(道徳と倫理が同じものであるとする主張も存在します。グスターボ・ブエノなどがその例です)。

そのため倫理学研究は、共通する特徴や普遍性を探し出すために異なる文化内の道徳を分析しています。そして、世界共通の倫理的行動を人権宣言として記録しています。

善と悪

西欧的道徳

かつて、ニーチェは「奴隷道徳」と彼が呼ぶ西欧的なしきたりを非難しました。彼は西欧社会における最優先事項が人々の行いではなく、人間の外側にいる神の言葉であると唱え、この道徳を問題視しています。また、ニーチェは当初からキリスト教とユダヤ教を嫌悪し続けていました。

「奴隷道徳」は哲学的な批判に晒されます。しかし、リベラル的な側面を強めながらも、この道徳は現在でも生き残っているのです。西欧の植民地支配のことを考えれば、キリスト教やユダヤ教的な「奴隷道徳」が広範囲に広がっていることが分かるでしょう。そして、この事実が時に問題を引き起こします。

それぞれの文化がそれぞれの道徳を持っているというような考えは文化相対主義と呼ばれています。例えば、イスラム教のコーランやヒンドゥー教のヴェーダのように、正しい行いが何たるかを示したテキストがそれぞれの文化に存在しています(Santos, 2002)。

文化相対主義

自分自身が持つ道徳観から他の道徳観を評価することは、全体主義の実践になりかねません。そのようなことをするとき、私たちは否定的なステレオタイプを構築してしまいます。だからこそ、私たちは自分自身で受け入れることのできない道徳をいつも拒絶し、ときに他人の道徳観に対して疑念を抱くのです。

異なる道徳の相互作用について理解するために、ウィトゲンシュタイン(1989)の言説を紐解いてみましょう。彼は、道徳に対して非常に完結な説明を当てています。理解を深めるための頭の運動として、まず紙を一枚取り出して、円をたくさん描いてください。そこに書いた円は異なる道徳観を表しています。そして、それらの交じり合い方には3通りあると思います。

  • 1つ目は、どの円とも交わっていない円。
  • 2つ目は、他の円の内側にある円。
  • 3つ目は、部分的に交わっている円。

もし円が交わっていたら、その部分が共通の道徳観を有していることを表します。そして交わり具合が大きいほど、共通点も多いことを示しています。さらに、大きな円はより多くの社会規範を含有しており、小さなものはある特定の規範を表現しています。

道徳的相対論

上記のこととは反して、どの文化にも道徳など存在しておらず、その代わり、個人一人一人が独自の道徳を持っているというパラダイムも存在しています。これを道徳的相対論と呼びます(Lukes, 2011)。

先ほど書いた円が、文化内の道徳ではなく、個人が持つ道徳観だと思ってください。この視点に立つと、すべての道徳観が個人の出身地や立場に関係なく受け入れられていることが分かります。また、この道徳的相対論にも3つの考えがあります。

  • 記述的道徳相対論(Swoyer, 2003):この考え方は、行動の結果と行動の是非を分離します。しかし、一概に記述的相対主義者がすべての行動を否定するというわけではありません。
  • メタ倫理学的道徳相対論(Gowans, 2015):この思考は、真実と虚言を判断する上での普遍性を否定しています。つまり、善悪を見極めるどのような判断にも客観性がないということです。言い換えば、文化や信仰、伝統によって人々の判断は多様的であるということでもあります。
  • 規範的道徳相対論(Swoyer, 2003):この立場では普遍的な道徳がどこにも存在していないと考えます。したがって、誰も他人のことを裁くことはできません。仮に自分の信じることに誰が反していても、それらはすべて容認されたなくてはいけないのです。
手のひらの木

多くの行動を規定し、多くの人々に賛同されているからといって、どれか一つの道徳だけが正しいということはありません。そしてそれは同時に、どれか一つの道徳が間違っているということでもありません。

道徳的相対論者は、対話や理解がない限り異なる道徳は対立してしまうと考えます (Santos, 2002)。だからこそ、お互いが健全な関係性を築くためにも、異なる人々や文化の中で共通項を見つけることが大切なのです。

参考文献

Gowans, C. (2015). Moral relativism. Stanford University. Link: https://plato.stanford.edu/entries/moral-relativism/#ForArg

Internet encyclopedia of philosophy. Link: http://www.iep.utm.edu/ethics

Lukes, S. (2011). Relativismo moral. Barcelona: Paidós.

Nietzsche, F. W. (1996). La genealogía de la moral. Madrid: Alianza Editorial.

Rachels, J. Rachels, S. (2011). The elements of moral philosophy. New York: McGraw-Hill.

Santos, B. S. (2002). Hacia una concepción multicultural de los derechos humanos. El Otro Derecho, (28), 59-83.

Stanford University (2011). “The definition of morality”. Stanford Encyclopedia of Philosophy. Palo Alto: Stanford University.

Swoyer, C. (2003). Relativism. Stanford University. Link: https://plato.stanford.edu/entries/relativism/#1.2

Wittgenstein, L. (1989). Conferencia sobre ética. Barcelona: Paidós.


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  • Gowans, C. (2015). Moral relativism. Stanford University. Link: https://plato.stanford.edu/entries/moral-relativism/#ForArg
  • Internet encyclopedia of philosophy. Link: http://www.iep.utm.edu/ethics
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  • Nietzsche, F. W. (1996). La genealogía de la moral. Madrid: Alianza Editorial.
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  • Stanford University (2011). “The definition of morality”. Stanford Encyclopedia of Philosophy. Palo Alto: Stanford University.
  • Swoyer, C. (2003). Relativism. Stanford University. Link: https://plato.stanford.edu/entries/relativism/#1.2
  • Wittgenstein, L. (1989). Conferencia sobre ética. Barcelona: Paidós


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