肥満の認知機能改善療法
近年、これまで以上に身体と健康に関心が集まっています。それにもかかわらず、肥満または過体重の人口は世界中で増え続けています。ダイエットやエクササイズも長続きしない人が多数います。今回ご紹介する治療法は、この問題の解決策となるかもしれません。
この治療法は、認知機能を改善することにより肥満を防ぐものです。研究によって、肥満に苦しむ人は良い決断を下すのが難しい傾向にあることが判明しています。たとえば、健康に関する適切な判断を下すのが難しい場合があり、それは認知機能が一般の人と異なるためなのです。
肥満の原因はまだ特定されていませんが、認知機能の変化と何らかの関係があると言われています。
- 肥満に苦しむ人は、グルコースと細胞炎症に関連する代謝に異常が見られます。これらが、認知機能に悪影響を及ぼします。
- 肥満の人はより高いストレスレベルを持っていることが発見されました。
- 認知機能変化により、肥満になりやすくなります。食物の量と質について最適な判断をすることが難しくなるからです。また、いつ食べるかをコントロールするのが難しい傾向もあります。
認知機能改善療法は、本質的に従来の減量方法を超える効果があると言われています。従来の方法の代表的な例は、ダイエットと運動ですが、認知矯正治療はそれ以上に肥満の解消に大きく貢献できると考えられています。
認知機能改善療法
認知機能改善療法には、メンタルエクササイズに基づく心理的介入が含まれます。認知戦略、思考、および情報処理能力を向上させることを目標としています。これらのテクニックを一貫して行うことで効果を発揮します。
この療法は、あなた自身の考えについて反省を促し、健康的な行動につながると考えられています。認知能力を明確に強化することを目的とします。
肥満の場合、認知機能改善に向けて直接的な認知的改善を行う必要があるのです。
ご存知でしたか?:
感情と肥満の関係
肥満における認知機能改善療法
肥満の認知改善療法(CRT-O)は、対面治療です。その目標は実行機能を最適化することです。これにより、食生活や運動習慣に関する思考パターンを改善します。最終的に、健康的なライフスタイルを確立することを目標としています。
CRT-Oは、肥満に対する個人の異なる考え方を改善するために設計されました。認知戦略を改善する一連のメンタルエクササイズで構成されています。情報プロセスとスキルの実践を通じてこれを行います。
CRT-Oを含む「減量」プログラムによって、より良い結果が見られたことが明らかになっています。食べ過ぎの減少、効果的な減量、より健康的なライフスタイルが結果として見られているのです。さらに、生活の質の向上と炎症性因子の減少も見られました。
CRT-Oによって、患者がダイエットや運動をしなくても減量できることが証明されています。もちろん、ダイエットとエクセサイズを合わせて行っている人に比べてると結果はそれほど良くはありません。以下で、実行機能をトレーニングする例をご紹介しましょう。
肥満の人は、人生において様々な認知プロセスを変えてきました。衝動の制御、作業記憶、思考の柔軟性、および一貫性がその一例です。
衝動の制御
衝動の抑制とは、 突如何かをしたいという強い衝動を制御し、それに抵抗する精神機能を指します。注意と考えを修正し、他の答えへと導きます。
衝動の抑制を強化するには、まず意図した動作を回避する必要があります。次に、行動につながる思考について考える必要があります。考えを意識化して、行動を起こす前に分析する能力を身につけます。
たとえば夕食を食べ終わった後、突然甘いものを食べたくてたまらない衝動に駆られるとします。そこで、甘いものを食べる前に自分の考えを分析する必要があります。
- なぜ甘いものを食べなければならないのか?
- まだお腹がすいてるのか?
- 十分な炭水化物を摂取しなかったのか?
- 自分のなにかしらの感情をコントロールしようとしているせいか?それはどの感情なのか?甘いものを食べることが本当に助けになるのか?何かを排除する必要があるのか?
- 甘いものを食べた後その問題は解決するのか?
- 食べた後の結果は何であるのか?
- 気分を良くするために他に何ができるか?
衝動の抑制をトレーニングするには、あなたの考えと行動の間に分析する段階を導入する必要があります。
こちらもご参考に:
肥満―精神科にできること
作業記憶
作業記憶とは、短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。
理解と体験は、おそらく作業記憶を改善するための最良のツールです。患者が各介入の理由を理解することが不可欠です。また、戦略の開発に参加し、変化を体験し、それに適応する必要があります。
認識の柔軟性
「認識の柔軟性」は、特定の状況で思考や行動を調整する能力を指します。特定の状況とは具体的に、斬新な状況、絶えず変化する状況、予期しない状況を指します。
認識の柔軟性を強化するためには、新しいツールを使う必要があります。目標を達成するための代替戦略を脳に強制させることを目的とします。
例えばいつもとは異なる方法で仕事をしたり、朝のルーティンの順番を変えたりします。自分の言葉で知人にプロジェクトについて話したり、新しい人に会うことも良いでしょう。普段とは異なるさまざまな環境(職場、レストラン、自宅など)で食事したり、新しい食べ物に挑戦するのも良い例です。
トレーニングの一貫性
肥満の認知機能改善療法において一貫性持ったトレーニングは非常に大切です。相談する際は、はっきりと自分の状況を理由づけすることも重要です。また、関連するすべてのアイデアを念頭に置いてください。
複雑で詳細な情報を読んだ後、簡単な要約を求めることをお勧めします。口頭または書面による要約どちらでもよいでしょう。これにより、一般的なアイデアを発展、理解する能力が向上します。
認知機能改善療法は、肥満に苦しむ人々の思考能力を向上させる重要なツールです。長期的かつ効果的に健康管理をする大きな助けとなるでしょう。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
Hilbert, A., Blume, M., Petroff, D., Neuhaus, P., Smith, E., Hay, P.J. & Hüber, C. (2018). Group cognitive remediation therapy for adults with obesity prior to behavioural weight loss treatment: study protocol for a randomised controlled superiority study (CRT study). BMJ open, 8(9). Consultado el 31/10/2019. Recuperado de: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30224391
Raman, J., Hay, P., Tchanturia, K. & Smit, E. (2018). A randomised controlled trial of manualized cognitive remediation therapy in adult obesity. Appetite, 123: 269-279. Consultado el 31/10/2019. Recuperado de: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29278718
Segura, M., Roncero, M., Oltra Cucarella, J., Blasco, L., Ciscar, S., Portillo, M., Malea, A., Espert, R. & Perpiñà, C. (2017). Entrenamiento en remediación cognitiva y habilidades emocionales en formato grupal para pacientes con obesidad: un estudio piloto. Revista de Psicopatología y Psicología clínica, 22(2): 127-138. Consultado el 31/10/2019. Recuperado de: http://revistas.uned.es/index.php/RPPC/article/view/19115
Smith, E. & Whittingham, C. (2017). Cognitive remediation therapy plus behavioural weight loss compared to behavioural weight loss alone for obesity: study protocol for a randomised controlled trial. Trials, 18(42). Consultado el 31/10/2019. Recuperado de: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5270361/