人が自分のために変わってくれると期待しないこと
他人が自分のために変わってくれると考えるのは無駄なことです。相手が良い変化を起こし、適切な行動をするようになり、自分のことを自分が望むように愛してほしいと思う時、私たちは相手が自分のために変わってくれるのではと期待します。ただ、この期待が満たされることはほとんどありません。
考えてみましょう。態度や行動は180°変わると考えることは危険であり、感情の依存を生みます。これはまるで奇跡を願っているようなものです。過去は過去だ、これから変わるんだと言う人のことを信じてみたらびっくり!またその人の罠にはまることになるのです。
このような状況はよくみられ、一般的なものです。相手を愛し、信頼しているため、自分のために変わってくれると待ってしまうのです。愛は信頼なくしては愛ではありません。今度こそうまくいくかもしれないと何度もチャンスを与えてしまっていることに気づくでしょう。愛することでその人を良い方に変えられると自分を納得させているのです。しかし、ある日目が覚めると何も変わっていないことに気づきます。
「物語には始まりも終わりもない。振り返る瞬間、先を見る瞬間を人は勝手に決めているのだ」
-グレアム・グリーン-
変わってくれるという期待は不満になる
心理学では、「性格」という言葉はある種決まった一連の特徴を説明するものです。ですので、恥ずかしがり屋で内向的な人に突然外向的になれというのは厳しいことです。しかし、明らかな性格の傾向があるからと言って、これを変えたり、不自然な性格を取り込むことができないというわけではありません。
変化は不可能だと考えるのであれば、心理学は無意味になってしまいます。人を変えるのではなく、自分を高め、自分の考え方や行動を変えることは可能です。
イリノイ大学のウォルター・ロバーツ教授による研究で、心理療法的環境においてこの変化は起こりやすいようだということが分かっています。これは、問題があってその対処が必要だと分かっている場合、医学的介入で性格を変化させることができることを意味します。
人に変わってくれると期待することは間違っている?
人が良い方に変わってくれるという期待は常にしてしまいがちです。こういった期待は家族や子育てをする親にもあるでしょう。例えば、期待される行動を子どもがしない時、親は間違いを正し、尊敬や責任をもった人になって欲しいということを伝えますよね。
教育の場でも同じです。教育には、指導、提案、対話、良い手本を示す、親よりも良い道を進ませようとすることなどが関わります。しかし大人になると、性格はほぼ決まっています。変えようという意志がない限り、人は変わらないのです。
あなたの嫌いな特徴がパートナーにあると感じたことがあるかもしれませんが、それはこれが理由になっています。良いことも悪いことも認めましょう。欠点、趣味、変わったところが、その人を作っています。ですので、人を変えようとするのは必ずしも良いこととは限りません。
一方で、もっと深刻な状況もあります。例えば、虐待的、意地悪、偽りはどんな時も許されるべきではありません。この行動には、変化が必要とされます。
相手が変わらないことで傷ついてしまう時、どうする?
ジョン・ゴットマンの著書『結婚生活がうまくいくための7つの原則』には、こう書いてあります。愛は、受容を超越します。それは相手をありのまま受け入れることであり、相手にもありのままの自分を受け入れてもらうことなのです。危害となる行動、ゴットマンの言う黙示録の四騎士 (批判、侮辱、防御、妨害)がみられると、関係は壊れるでしょう。
こういったときに、変わることが必要不可欠になります。それは自分のために変わってくれることを待つのとは違い、問題があるということを認めることです。誰かが苦しむのであれば、態度や行動を変え、苦しみのない関係にする必要があるでしょう。
このような場合、次のどちらかが起こります。ひとつは、その人が変わろうとせず、他に選択肢を与えない状態になることです。もうひとつは、その人が自分のために代わってくれるはずだと考え、今までに起こったことは二度と起こらないという相手の言葉を信じ、感情的・精神的罠にはまってしまうことです。しかし同じことが再び起こり、悪化することも少なくないのです。
自分がこのような事態にいる時、どうしたら良いでしょう?答えは単純です。あなたが幸せを感じず、相手が物事をよくしようと変わる気がないのであれば、あなたが変わる必要があります。前を向き、自分を癒すことに力を注ぎましょう。
最後になりますが、あなたがもしこのような状況にあるなら、専門家の助けを求めましょう。心理療法士や精神科医はこのような状況で大きな助けになります。
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- Roberts, B. W., Luo, J., Briley, D. A., Chow, P. I., Su, R., & Hill, P. L. (2017, January 5). A systematic review of personality trait change through intervention. Psychological Bulletin. Advance online publication. doi:10.1037/bul0000088