ジェームズ・ヴィカリーとサブリミナル広告

ジェームズ・ヴィカリーが1956年にアメリカ合衆国で行った実験は、非常に有名になりました。この実験は、人が精神的に操作され得ることを証明するためのもので、彼が「サブリミナル広告」と呼ぶものの効果を確かめることを目的に行われました。
ジェームズ・ヴィカリーとサブリミナル広告

最後の更新: 12 3月, 2021

1950年代、人々のもっぱらの話題はマインドコントロールや洗脳の話でした。そして50年代終盤になると、サブリミナル広告の想定される有効性に関する有名な実験が、ジェームズ・ヴィカリーによって実施されました。年月の経過とともに彼の出した結論は批判されるようになりましたが、それでもいまだにこの実験は人々のインスピレーションの源であり続けています。

ジェームズ・ヴィカリーの実験は、おそらく広告業界における最も有名な実験でしょう。この実験のニュースはかなり広まったため、それ以来人々はサブリミナル広告には有効性があるのだと信じ込みました。事実、世界中の多くの国々がこの種の広告やヴィカリーが実験内で用いたものと類似するテクニックの実践を禁じています。

ジェームズ・ヴィカリーは著名な市場調査員で、1915年にデトロイトで生まれました。彼は消費者行動や、様々なタイプの広告に対する消費者の反応の仕方の研究を始めたパイオニアです。そして、サブリミナル知覚に焦点を当てた実験は、彼が行ったものが最初で唯一の実験となりました。

ジェームズ・ヴィカリーの実験

先ほどお伝えした通り、1950年代は心的現象への関心が大いに高まっていた時代でした。特に人々の話題の中心になっていたのが、催眠や無意識などです。ジェームズ・ヴィカリーには、実験を行なってサブリミナル知覚が人に及ぼし得る作用を証明したいという考えがありました。例えば、この知覚が映画内で使われることによって人々の購買意欲はいかに喚起されるのか、といった点を調べようとしたのです。

ヴィカリーは、ニュージャージー州フォートリーの映画館で『ピクニック』という映画が上映されている間にこの実験を行なったとされています。映画の合間に、彼は「コカ・コーラを飲め」、「ポップコーンを食べろ」と書かれた画像を密かに照射しました。この際使われたのはタキストスコープ(瞬間露出機)という機器で、これは短時間に複数の画像を映し出すことができるものです。

画像の照射は高速で行われたため、観客が意識的にそれらに気づくことはありません。別の言い方をすれば、メッセージは確かに観客に見せられるものの、意識下でそれに気づく者は誰もいないということです。そして、無意識下へ向けられたメッセージによる影響を証明することこそ、まさにこの実験の目指すゴールでした。

ジェームズ・ヴィカリー サブリミナル広告

実験の結果は?

実験を終えると、ヴィカリーはこれに関するレポートを発表します。このレポートの中で彼は、サブリミナルメッセージの照射後、コカ・コーラの売り上げは18%上昇し、ポップコーンの売り上げは57%上昇したと主張しました。

それから間も無くして、ロンドンの『Sunday Times』紙がこの実験とヴィカリーのレポートに関する記事を掲載します。

すると、ほぼ間髪を入れずに集団ヒステリーのような現象が起こりました。のちにヴァンス・パッカードが『かくれた説得者』という本を執筆しますが、この本は人々のパニック状態を悪化させ、政府に多大な懸念を抱かせるに至りました。

サブリミナル広告という概念が登場したのはそれ以降のことです。アメリカ政府は、この技法を使用したメディアからはライセンスを剥奪する、という警告を出しました。その後、この種のプロパガンダは複数の国々で禁じられることになります。CIAすらも、この有名な技法の調査を開始しました。

ジェームズ・ヴィカリー サブリミナル広告

真相

時間が経つにつれ、人々はヴィカリーの実験に疑いを持ち始めます。これは主に、彼が自身の利用した方法論に関する情報の共有を拒否したことが理由です。また、実験心理学の専門家であるヘンリー・リンク博士が彼に対して実験を再度行ってみろと挑みましたが、ヴィカリーはそれを拒否しています。

広告調査財団(ARF)もヴィカリーに実験の詳細情報を提供するよう依頼しましたが、彼は回答を拒みました。その後、テレビやラジオの放送局CBSが同様の実験を実施します。彼らは視聴者に対して局まで電話をかけるよう訴えるサブリミナルメッセージを発しましたが、実際に電話をかけてきた人はいませんでした。

そして1962年、『Ad Age』という雑誌の中でジェームズ・ヴィカリーはついに「自分はあの実験を行わなかった」と告白します。当時彼の会社は危機に瀕しており、評判を高く維持する必要があったために一連の話をでっち上げたのだそうです。

結局この実験が証明したのは社会の騙されやすさや、人々はマスコミが「科学的」ソースからの情報として伝えたことならどんな情報でも信じてしまうという事実だったということです。とはいえ、世界中の多くの国々がいまだにサブリミナル広告や虚偽広告を禁じています。


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  • Ramírez Gómez, S. (2014). ¿Cómo manipulan los mensajes subliminales a las mentes de las personas en los medios de comunicación? Proyecto de Grado (Doctoral dissertation, Medellín: Marymount School).


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