交際関係における与える人と受けとる人
与えることと受け取ることの完璧なバランスを交際関係の中で見つけるのは非常に難しいことです。両者に力関係が生じるのは非常に一般的な状況です。与える側は愛にリミットはないと考えてしまい、受けとる側は相手のエネルギーや感情を無意識に奪うのです。
このような、感情的な自傷行為は交際関係でよく見られます。日々の生活習慣は健康的なものであっても、恋愛になると、パラシュート無しで崖から飛び降りるような無謀な人も存在するのです。
もちろん、その全てが上手くいくわけではありません。相手のことを生きる理由や必要不可欠な存在にしてしまうことは、深刻な結果を生み出すでしょう。与える人と受けとる人という極端な関係では、 本当の幸せにたどり着けず、健全でない関係になってしまうことを覚えておいてください。
幸せのカギ:相互関係のサイクル
あの有名なドイツの哲学者であるニーチェは、贈り物を与えることは、受けとる側に返す権利や義務を与えることではないと述べています。もちろん、この考えも正しいです。しかし、そこにはいつも微妙な違いが生まれるのも事実です。何かを与えることは、与える人と受けとる人をある特定の相互関係に結びつけることでもあるからです。
例えば、私が友達に何か贈り物をあげるとします。しかし、私はそこに見返りを求めません。私は今までその友達から愛情をもらったり、様々なサポートをしてもらったと感じたので、ただ単に何かをプレゼントしたかっただけです。このような状況でも、すでに相互関係が存在します。そして、両者が満足するような関係のバランスは常に変化するということも覚えておきましょう。
人間は協力し合う生き物なので、お互いが定期的に与え、受けとる関係が必要になります。また、これは私たちの脳に幸福や愛情のような感覚を与えてくれます。
もし相互関係がなくなり、ただの「与える人」になってしまうと
2010年に出版された「社会心理学とパーソナリティジャーナル(Revista de Psicología Social y Personalidad、スペイン語)」の、「社会的行動の自主的動機と福祉における介助者と要介護者への影響(Motivación autónoma del comportamiento prosocial y su influencia en el bienestar del ayudante y el receptor)」という記事には非常に興味深い発見がありました。では、それが何なのか見ていきましょう。
- 人は自然に、「与える側」になることがあります。言い換えると、与えるという行為がその人の人格、パーソナリティであり、それが彼らが関係性を理解する方法なのです。
- また、「(愛情や注意を)与える」という行為は、与える人の自尊心を高め、彼らにポジティブさやエネルギーをもたらします。
しかし、同様にマイナス面も見られました。
- まず、受けとる側は定期的に世話をしてもらうことに対してプレッシャーを感じることがあります。自分に対して奉仕してくれる人に気まずさを感じるのです。
- そしてそれは、「回復不可能な犠牲」という現象になってしまいます。つまり、与える側は自分の行為に価値が無い、または認識されていないと感じてしまうことで、今まで与えた時間や愛情、そしてエネルギーが無駄だったように思い込み、自尊心が低くなってしまうのです。
交際関係における与える人と奪う人
ここに交際期間8か月のカップル、アナとパブロがいます。アナは「与える側」で、いつも彼氏の為に何かをしてあげるような彼女です。アナは彼のニーズに対して、いつも多くの注意や愛を与えてきましたが、パブロは何もしません。彼は自分の彼女が幸せそうに与える姿を見て、受動的、さらには依存的になってしまったのです。
これは小さな例の一つにすぎませんが、私達は少しずつ与える人、または奪う人になっていくでしょう。健全でない関係に自ら発展させてしまうのです。ですので、これから説明することをしっかり理解しておいてください。
- 相手より少しだけ「与える」ことが多くのは構いませんが、それを基準にしてはいけません。さらに、お互いが平等に利益を与えるような関係でなくてはいけません。
- 誰でも受けとる側になる必要があります。その意味も知らないまま、「与える」ことに多くの時間を費やす人もいるでしょう。また、その逆もあり得ますが、受けとることばかりしてきた人も、与えるという喜びに気付くこともあるかもしれません。
もちろん、完全な50:50の関係に固執する必要はありません。私たちは、人によってそれぞれのやり方を持ち、「与える」、または「受けとる」タイミングも異なるので、関係における利益や損失はお金のように計算することはできないでしょう。
大切なのは、そこに相互関係があることを理解することです。お互いのために交際があり、心のこもった贈り物は誠意を持って受けとり、相手が本当に必要としている時に返せるように心がけてください。