空虚感と向き合うことの難しさについて
「私は人生に望んでいたものを全て持っているのに、まだ虚しさを感じています」、これは、心理カウンセリングの場で常に繰り返されているフレーズです。切望していたもの全てを手に入れてもなお、幸せを感じることができない。このような事態に陥った人の多くが、その現実について考えるのを避けるためにどんなことをしてでも気を紛らし続けようとします。
しかし概して、その状態をこれ以上は続けられない、と感じる日が訪れます。そしてその瞬間に、心の穴に向き合うことこそが自分のやるべきことなのだ、と考えるようになります。しかしながら、その作業は見かけほど簡単ではありません。空虚感の原因を知ることは痛みを伴うプロセスかもしれませんが、それでもやはり行う必要があることです。
空虚感
空虚感について話そうとしても、言葉で的確に説明するのは難しいでしょう。これまで生きてきた中でこの感覚を抱いたことがある、あるいは今現在虚しさを感じている方であれば、この意味をよくお分りいただけると思います。時にはこの感覚が「実存的危機」に繋がる場合もあり、こうなると人生の意味に関するあらゆる考えが大きく揺さぶられてしまいます。
この空虚感は、大きな苦痛を前提として起こります。実のところ、この感覚は非常に強烈なものであるために、当人はこれを止めようとあらゆる手を尽くすのですが、その試みは毎回失敗に終わるのです。空虚感を抑えつけようとする行為は、手の平を器の形にしてそこに水を貯めようとするような無謀な挑戦となってしまう場合があります。前述の苦痛が、どこに向かうべきか、あるいは何をすべきかがわからないという不確実性と合わさって人を絶望的な気持ちにさせるのです。
驚くべきことに、日常的に空虚感に苦しめられている人は世の中にたくさんいます。良い仕事に友人たち、恋人といった、望んでいたもの全てを手に入れているように見えながらもまだ満足感を抱けていない、というシナリオは非常に多く存在するのです。もう一つ別の例を見ていきましょう。かなりの努力と献身を捧げて長年の目標を達成するご自身の姿を想像してみてください。あなたはきっと、幸福感と達成感を感じられるだろうと考えていたはずですが、実際に目標を叶えた時に感じるのは失望だとしたらどうでしょう。
心の穴を埋めようとする行為
空虚感を感じている人は心を大きくかき乱されているため、初期衝動としてできる限り早くその穴を埋めようとします。しかしこの感覚を落ち着かせようとして行う様々な試みに用いられるツールは、長期的には全く役に立たないものばかりです。
こういった人々が行いがちなのが、退屈を感じるのを回避するという行為です。 そうすることで、自身が直面している実存的危機について考える時間をなくすことができます。さらに、活動していない時間や自由時間に強い不安感を抱いてしまう場合が多いという点にも注目すべきでしょう。
空虚感を和らげるために用いられるもう一つの手段は、有形財を手に入れることに関連しています。強迫的に買い物をして、つまり本当は必要でないものを購入して、落ち着かない気分を覆い隠そうとする人が非常に多くいるのです。同様に、アルコールやギャンブル、過食などの行為に熱中することで気を紛らそうとする可能性もあります。
上記の戦略に共通しているのが、これらは全て空虚感の一時的な緩和剤に過ぎないという点であることに疑いの余地はありません。さらに、この種の中毒性のある行為はその他の健康問題、経済的な問題、あるいは人間関係の問題を引き起こすことがあるため、そうなるとその人物は助けを求めざるを得なくなります。
空虚感はなぜ生まれるのか?
空虚感は気分に関連する症状、もっと具体的に言うとアンヘドニア(無快楽症)に関連しています。アンヘドニアとは、過去には快楽をもたらしてくれていたものを享受できなくなる状態のことです。この病状には様々な脳機能が関わっている点に注目しておきましょう。
空虚感を抱く人々の線条体、つまり快感と密接に関連している脳領域の活動が、通常よりも少ないことがわかっています。
これに加えて、空虚感は様々な心の病や生活における重大な局面と関わりがあります。その中でも特に重要なものをいくつか見ていきましょう。
- うつ病などの気分障害。空虚感が慢性化している場合、うつ病性障害を発症している可能性があります。この病気の主要な症状に絶望感やアンヘドニアがあるためです。
- 喪失などの深い悲しみ。愛する誰かを失ったり辛い破局を経験すると、皆さんもご存知の通り生活が突然様変わりするため、人は安定性を失ってしまうことがあります。このような経験の後に空虚感を感じるケースは非常に多いのです。
- 高すぎる期待。安定した仕事を得ることや家庭を持つことなど、何か一つの目標に全労力を費やしてしまうような人は普通、将来に対して高い期待を抱いています。しかし、その目標が叶えられなかった場合、失望状態から抜け出すことができません。例えばいわゆる「中年の危機」に陥った人々がしばしばこれに当てはまります。
- 全てのことを自らの手で支配したいという行き過ぎた願望。神経症の主な特徴として、周囲で起こること全てを支配下に置きたいという願いが挙げられます。そのため、神経症を抱える人々はどんなことに対しても一つ一つ計画を立てるのを好みます。しかし自分自身ではコントロールできないものがたくさんあるという事実に気づいた途端に、空虚感や絶望感が覚醒してしまうのです。
空虚感と向き合う
空虚感は、特別理由があるわけでもない深い不快感と関連しています。気がかりな思いが強く、その感覚を止める方法が自分ではわかりません。
さらに、この心の穴はそのような強烈な感覚を生み出すため、それを軽減させようとして応急処置的な戦略(忙しなく動き続ける、何かに没頭する、強迫的な買い物をするなど)に走ってしまう場合が多く見られます。しかし、これらの行為は元々の問題自体よりも多くの困難を生み出す効果しかない無意味な絆創膏なのです。
空虚感の原因は非常に多岐に渡りますが、実は大抵の場合、当事者の年齢がその大きな要因となっています。しかしこの感覚が慢性化してしまうとうつ病などの気分障害が表面化するのです。
認めがたいことではありますが、ある程度の空虚感や実存的危機に関しては自分を変えるための強力なエンジンとなり得るため、人生の重要な局面では必要なものである、とされています。この空虚な穴に直面した場合には、自分自身を深く掘り下げてその原因を見つける以外に解決策はありません。
実は、この自己探求の過程が新たなより良いアイデンティティの再構築に繋がるのです。これが実現すれば、その人物は今までよりも幸福と気楽さを感じることができます。時には、内省こそが自己を蘇らせるためにやらねばならないことなのかもしれません。
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