強迫性障害の治療法
ある物事が頭から離れず、考えすぎたり不安に感じてしまう人がいます。あまりにもそのことばかり思い続け、わかっていながら何度も同じ確認をするなど、日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。その考えは意思に反して頭に浮び、払いのけることができません。その結果、不安やこだわりが度を超して、極度のストレスを感じ強い不安に掻き立てられるようになります。これが日常的に習慣として起こっている場合は「強迫性障害」かもしれません。
今回は、強迫観念を抱く人がこの悪循環に陥る原因を見ていこうと思います。また、強迫性障害に関する最新の理論をご紹介します。
強迫観念はなぜ起こるのか
強迫性障害は、情報処理能力に何らかの障害があると言われています。情報処理能力の欠如が強迫観念や強迫行為の問題を引き起こす大きな原因になります。強迫観念は繰り返し現れ、すぐに症状が消えず継続する可能性があります(Beck, Emery, and Greenberg, 1985)。こういった強迫性障害(OCD)への関心は最近になって高まってきました。強迫観念を抱える人々の不安と情報処理能力についての詳しい関係性については、未だほとんど明らかにされていません。
最近の研究で、強迫観念が強い人は歪みを計測するのが難しいことがわかっています。また、認知のゆがみがあることがわかってきました(Steketee, Frost, Rhéaume, and Wilhelm, 2001)。そして感情の情報処理に関する研究において、強迫性障害の人は恐怖に関連した刺激に対してより敏感だということが明らかにされました。
強迫性障害の人々は、刺激的な出来事と自分の中にある歪んだ考えが関連づけられたとき、強迫観念の悪循環に陥る恐れがあります。これらの反応が大きな不安や恐怖となります。強迫観念は繰り返し蘇り、より永続的な思考、イメージ、または刺激として定義されていき、これを侵害的で不適切であると感じるようになります。そして、結果的により大きな不安と苦痛が引き起こされるのです。
強迫観念の考えや刺激、イメージは、日常生活において支障をきたすようになります。そして強迫観念は益々膨らみエスカレートしていくでしょう。 強迫性障害に苦しんでいる人は、強迫観念を無視したり抑えようとします。あるいは無意味な行為や考えを繰り返しながら、それを中立化しようとすることもあります。
したがって、強迫行為の目的は、脅迫観念による不安を打ち消すためなのです。それにもかかわらず、現実的にはうまくいかないことがほとんどです。そしてますます度を超えて悪い方向に陥ってしまうのです。
情熱はポジティブな強迫観念である。強迫観念はネガティブな情熱である。
強迫観念。現代における不安
最新版の「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」に、米国心理学会(APA)は強迫性障害、強迫神経症(OCD)を加えました。強迫観念に苦しむ人たちに障害機能の特徴があると判断したためです。また近年、強迫性障害に苦しむ人が増えてきたのも一原因です。
この病気を患わっている人は、強迫観念の悪循環からなかなか抜け出すことができません。極端な場合は、数時間もの間行動を抑制することができず、特定の行動を繰り返すことがあります。また、強迫観念を持っている人は、うつ病や他の心理的疾患を発症する傾向が高くなっています。例えば心気症または恐怖症がそれにあたります。これらの病気は強迫性障害によって引き起こされます。
専門家によると、OCDはいくつかのカテゴリーに分類することができます。以下に挙げるものは最もよく知られた症状です。
・清潔さや衛生へのこだわり
・安全確認へのこだわり−家を出るときに鍵をかけたか、火を消し忘れていないかなど不安になり何度も家に戻って戸締りや火の元を確認する行為
・順序や数字へのこだわり−左右対象や決められた順序に執着する
その他にも様々なタイプの強迫観念があります。現代社会においてよく見られる強迫観念として、ソーシャルネットワークへの依存があります。ソーシャルネットワーク依存は従来とは異なる強迫観念を生み出しましたが、他の強迫觀念と同様に負の感情を生みだし強迫行為を繰り返す傾向があります。
恋愛感情における強迫性障害もまた、ネガティブな考えや行為、パターンが繰り返されます。他と違うのは、コントロールしたいの対象が物ではなく人だというところです。場合によっては、誰かを思い通りにできず、それをコントロールしたいという欲望が強い執着心となります。その強迫観念はとても強く、時にそれを愛情と混同するケースもあります。
このタイプの強迫観念は、あなたが望むものを手に入れるために強く働きます。つまり、好きな相手と一緒にいることです。しかし、逆説的にこの強迫行為が愛する人を永遠に遠ざけてしまうのです。
強迫性障害の治療方法
恋愛関係において発生する強迫観念は、留まるところを知らない貪欲な愛情を意味しています。カップルのどちらか1人は、その恋愛関係に決して満足することはありません。パートナーがいなくては何もできないと感じ、相手に強く依存します。
-ウォルター・リソ-
強迫観念を排除するための治療は、強迫観念にとらわれている人の間違った信念や恐怖を修正することが何より大切です。つまり歪んだ思考によって引き起こされる不安を減らすことです。
不安要因を減らし治療することで強迫観念を消し去ります。この治療は、あなたの考えが、反応が可能な状態で維持されることを目的としています (Salkovskis, Richards, and Forrester, 2000)。日常の中で生じるさまざまな問題に対して、どのように考え行動し感情が反応するのかを把握して、その対処法を考え判断して柔軟に行動することを促します。
強迫観念治療の主な目的は、不安に自分自身を晒すことで、時間の経過とともに不安に慣れていくことにあります。治療を続けていくにつれて、自分の周囲の人や環境への見方が変わってくるはずです。これには精神プロセスの変化が伴います。歪んだ考えや固定観念も修正されるようになります。
強迫観念とは怒りの火を大きくする薪のようです。違う視点から物事を見ることによってのみ、この火を消すことができるのです。
-ダニエル・ゴールマン-
参考文献
Beck, AT, Emery, G., y Greenberg, RL (1985). Anxiety Disorders and Phobias: A Cognitive Perspective. Básico, New York.
Casado Martín, Y. (2008). Emotional Processing in People with Obsessive-Compulsive Symptomology.
Salkovskis, PM, Wroe, AL, Gledhill, A., Morrison, N., Forrester, E., Richards, C., & Thorpe, S. (2000). Responsibility Attitudes and Interpretations are Characteristic of Obsessive-Compulsive Disorder. Study on Behavior and Therapy, 38 (4), 347-372.
Steketee, G., Frost, R. O., Rhéaume, J., & Wilhelm, S. (2001). Theory and Practice of Cognitive Therapy for Obsessive-Compulsive Disorder.
Obsessive Disorders. Vallejo Pareja, M. Á. (2001). Effective Psychological Treatments for Obsessive-Compulsive Disorder. Psicothema, 13(3).