興味深いチンパンジー実験、ワショー・プロジェクト

ワショー・プロジェクトにより、霊長類には人間が予想していたよりも高いレベルの思考、感情、そして意識が備わっていることが証明されました。この実験は、これらの動物に対する多くの人々の認識を完全に書き換えたのです。
興味深いチンパンジー実験、ワショー・プロジェクト

最後の更新: 25 10月, 2020

ワショー・プロジェクトは魅惑的であり、感動的でもあります。これは、人類以外の動物で初めてアメリカ英語の手話を覚えたと考えられる、ワショーと名付けられたメスのチンパンジーに関するものです。このプロジェクトは多くの人に自然に関する大発見をもたらしました。

アレン・ガードナー博士とベアトリクス・ガードナー博士がこのプロジェクトを開始したのは1966年の6月21日で、チンパンジーのワショーがまだほんの2歳だった頃です。

もともと西アフリカ生まれのこのチンパンジーはそこで捕らえられ、実験の始まる一年前にアメリカ空軍によって米国に連れて来られました。そして当初はNASAでの実験に使われる予定だったワショーをガードナー博士夫妻が引き取り、ワショー・プロジェクトを開始したのです。

私は人間の権利と同じくらい動物の権利も支持している。それが人類全体の道なのだ”

-エイブラハム・リンカーン-

チンパンジー実験 ワショー・プロジェクト

ワショー・プロジェクト

ワショー・プロジェクトを始める前から、アレンとベアトリクスにはすでに霊長類を扱った実験の経験がありました。その頃までに言語学は大きな関心を集める領域となっており、この夫婦は動物が人間の言語を学ぶことは可能なのかどうかを解き明かしたいと考えていたのです。

彼らは二匹のチンパンジーを引き取り、人間のように話すことを教えようとしました。どちらの個体でもその試みは失敗し、解剖学的構造上、霊長類が人間言語を発することは不可能であると二人は結論づけました。

こうしてガードナー夫妻は霊長類に言葉を喋らせようとすることも諦めました。その後ワショーが登場すると、二人は手話の方が適切かもしれない、と考えます。チンパンジーの手は人間のものと非常に似ているため、成功率も高くなるはずだと考えたのです。

ワショーへの教育

また、ガードナー夫妻はワショーを人間と同じように育てるのが良いだろうと考えていました。つまり、女の子として彼女を育てようとしたのです。二人は、人間の赤ちゃんと同様にチンパンジーも言語を自然に学んでいくことができるのかどうかを知りたいと考えていました。

そこで、ワショーは彼女自身の衣服を与えられ、手話の先生と一緒に食事の席につきました。また、歯ブラシや櫛、本、おもちゃなどの個人的なアイテムも持っていました。なんと、大人になってからはリビングルームやキッチン、ドレッサー、冷蔵庫、ベッドが備え付けられた移動住宅で暮らすようになったほどです。

ガードナー夫妻はワショーが5歳の時に彼女の保護権をロジャー・フォーツとデボラ・フォーツ夫妻に引き渡しました。それ以降はこの二人がそれまでと同じ標準の生活を続けながらワショーの面倒を見るようになります。

知能の高い生物

ワショーの保護者たちには、手話だけを用い、口頭言語を使わないようにすることが求められました。彼らはワショーに「自分は他とは違う」と感じさせたくなかったのです。そうではなく、二人は彼女に手話こそがコミュニケーションの自然な形なのだと信じさせようとしました。そして少しずつ彼女は人間と意思疎通をする方法を学んでいきます。

ワショーに手話を学ばせるにあたり、二人は条件付けのような方法は一切用いませんでした。つまり、動物のトレーナーが通常行うような、何かを達成できたらご褒美をあげるという方式は取らなかったのです。その代わり、彼女には模倣によって手話を覚えることが期待されました。そしてワショーは見事にそれをやってのけたのです!実験が終わるまでに、彼女は350を超える数の言葉やジェスチャーを習得していました。

もちろんワショーには彼女独自のパーソナリティがあります。暇なときに本を見たり靴のカタログを見るのが好きでした。靴全般が彼女の興味を引いたようです。また、優れたユーモアのセンスも持っていました。

興味深いチンパンジー実験、ワショー・プロジェクト

単なる実験以上だったワショー・プロジェクト

実験中、ガードナー夫妻の注目を特に集めた出来事が二つありました。それは本人たちも予想していなかったようなもので、一つ目の出来事は保護者の女性が出産のために(赤ちゃんはのちに亡くなってしまいますが)しばらく姿を見せなかった時のことです。ワショーは彼女の不在が気に入りませんでした。

赤ちゃんを亡くして戻ってきた彼女は、ワショーに起こったことを手話で伝えました。するとワショーは目線を下げ、指で悲しみに浸る保護者の涙の跡をなぞったのです。このことはワショーの高い理解力を示しているだけでなく、彼女が感情を理解する力や共感する心を持っていることも示しています。

もう一つの出来事は、保護者たちがワショーを鏡の前に連れて行き、「映っているのは誰?」と彼女に尋ねた時のことです。彼女は「これは私、ワショー」と答えました。これは、彼女が高い認知機能である自己認識力を持っていることを意味します。

ワショーは1965年に死んでしまいましたが、このプロジェクトはまだ続いています。このプロジェクトについて知っている人々の多くは霊長類を「人類以外の人」と呼ぶべきだと要求していますが、あなたはこれについてどう思いますか?


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  • Tamames, K. (2008). Personas como Washoe. Cuadernos para el diálogo, (28), 129-131.


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