人間関係における親密性 − 信頼とレシプロシティ
人間関係における親密性は、それが恋愛関係だろうと友人同士であろうと、本当の自分や本心の感情に大きく左右されます。レシプロシティ(相互主義)は、こちらが与えた分だけそのお返しが返ってくることで成り立ちますが、残念ながらある種の空虚さや浅はかさが溢れるこの世の中では、相手から受け取ってばかりの感情泥棒や、逆に相手に尽くすのが得意な感情供給者が存在するのです。
自分にスポットライトが当たっていない、誰からも見られていない時には何もしてくれないというのが感情泥棒の特徴ですので、こういった人に気づけるように覚えておきましょう。反対に感情の供給者の体内および記憶の中には、常に感情泥棒に養分を与えてくれるような根が生え茂っています。
重要なのは、空虚な関係性を求める人々は他人を消耗させることがない、という点です。しかし中には、レシプロシティがなければ親密さを育むことは不可能だと信じている人々もいます。なぜなら、レシプロシティだけが最後まで残り続ける唯一のものであることを理解しているからです。
“愛や労りの気持ちを持つ他人を鏡にして自分自身を深く観察しない限り、何人たりとも自らの美しさを知ったり自分だけが持つ価値を感じ取ることはできないのだ、これは人間の絶対的な事実である”
-ジョン・ジョゼフ・パウエル-
人間関係の親密さを左右するのはレシプロシティである
人から愛されるためにはまず相手を尊重しなくてはならない、と私たちは教えられてきました。与え過ぎてはならない、カード数枚は相手に見せずに隠し持っておき、少しずつ渡すようにしろ、という意味合いのことを散々言われてきましたよね。しかしそんなやり方をしていたら、多くの人が本当の愛を知らずに威厳だけを保ったまま死んでいくことでしょう。
つまり、愛し愛されることに関してはそのようなルールなど存在しないということです。これは自分でプログラムできるようなものではありません。愛には(むしろ愛し方には、と言った方がいいかもしれませんが)、公平性が適用されないのです。お分かりのように互いの感情がアンバランスになる場面が常にありますし、それが普通のことですよね。
そして、愛とは正反対の位置にあるのが欲深さです。人は欲深さを持つと他人を食い物にし、奪えるものを奪って他人を操る恐れがあります。こういった類の人は自分が欲しているものを正確に分かっており、その個人的な利益のために他人のエネルギーや生活を吸い尽くすのです。愛を分け与える側の人々が「私はどうやったら他人にもっと尽くすことができるだろう?」と自問する一方で、欲深い人々は「あいつらを利用したらどんなものを得られるだろう?」と考えます。
親密性は弱い自分を認められるか否かに左右される
大抵の人が誰かと結婚して人生を共に歩んでいきたいと願いますが、現実的には40-50%の夫婦が最終的に離婚の道を選びます。
また、結婚生活が安定している人の方が幸福度が高いとも限りません。つまり、様々な理由から(子どものため、財政的・宗教的な理由のためなど)不満を抱きつつ夫婦関係を維持している人々もいるということです。したがって、関係性の安定だけでなく質も問題なのです。世の中にはたくさんの感情泥棒が存在します。しかしその相手は彼らを「大切な人」だと称するのです。
人間関係の中で親密性を高めていくには?
どんなタイプの関係性であれ、ある程度特別な栄養分を補給する必要があります。これは普通その関係を形成している人によって異なりますが、環境や絆の深さによっても変わってきます。人間関係における親密性を高めるためのコツがいくつかありますので、以下をご覧ください。
- どんな関係性であろうと親切心は欠かせません。そしてレシプロシティが親切心の価値を高めてくれます。不愉快な気持ちがあるようでは、関係性は弱まってしまうでしょう。
- 関係性の維持・改善に常に全力で取り組むことも重要です。最近の研究が、積極的に自身の持つ人間関係の改善に取り組むことが、幸福で長続きする関係性の秘訣であるという考え方を支持しています(OgolskyとBowers、2013年)。
- 関係性を確実に成功へと導くような行動としては、ポジティブな感情を表現すること、オープンでいること、関係性の確かさを保証すること、個人的なサポートの輪を活用すること、関係性の土台を固めることなどが挙げられます。また、過度な対立なしにパートナーの暗に示された重荷を共有してあげることも関係が長続きするための秘訣です。
- 重要性を感じないのならば、手放すべきです。最近、離婚を経験した元夫婦たちになぜ結婚生活がうまくいかなかったのかを尋ねる調査が行われました。その結果参加者の挙げた理由として最も多かったのは口論の頻繁さで、浮気や不貞行為は二位に留まったのです(Scott、Rhoades、Stanley、AllenとMarkman、2013年)。最初のうちはさほど重大でなかった口論が結局は破局の始まりだったのだ、と説明しています。
- 愛情を示しましょう。誠実で心のこもった褒め言葉がその関係の満足度に驚くほど強力な好影響をもたらすことが、研究によって示されています(Marigold、HolmesとRoss、2007年)。
- 互いの真剣さを毎日確認し合う。愛に関することというと、情熱や親密さといった感情的な要素が最初に私たちの頭に浮かんできます。しかし、実は関係の満足度を決定づける最も重要な要因はコミットメント(真剣な付き合いであることの確認)なのです。これは特に付き合いが長い関係性に当てはまります(AckerとDavis、1992年)。
最後に
恋愛関係は二人の人間がいて初めて成り立つものであり、それゆえに変化が起こり続けますし、維持するのは大変です。結婚を成功させるためのレシピのようなものも存在してはいますが、成功させたいという意志と気持ちを伝える能力さえあれば十分だ、と少なくとも研究結果は示しています。