人間の脳にシワがあるのは何のため?
人類の歴史を見てみると、私たちはずっと脳やその各部位についてもっとたくさん知りたいという気持ちを持ち続けていたようです。右脳と左脳、それぞれがどんな働きをしているのか知るのはとても興味深いですよね。今や、脳はこれまでにないほど面白いトピックとなっています。しかし、脳にはどうしてシワがあるのでしょうか?
動物学的スケールで判断すると、神経と学習能力との結びつきは直線的です。つまり、脳の表面積が増えれば増えるほど、より効率的に学習できるということです。動物の中でも人間の脳は最も大きな表面積を誇っており、脳回が存在するおかげでシワ構造が完成しています。この構造によって、少ないスペースでも最大限に表面積を増やすことができるのです。
滑脳と呼ばれる脳回のない脳を持つ動物は学習が困難な一方、皺脳と呼ばれる脳回のある脳を持つ動物の学習能力は前者よりも優れています。その中でも人間は最も多くの脳回を持っており、そのシワの量も人間が最も多く、次に大型類人猿が続きます。
“言語や聴覚を司っているのは大脳皮質です。これは、脳の外側の最初の数ミリをラップのように覆うシワだらけの灰白質です”
-マイケル・フィンケル-
大脳の解剖学:人間の脳とチンパンジーの脳の違い
2009年の5月、科学雑誌『Scientific American』にカリフォルニア大学の生物統計学者Katherine S. Pollardの論説が掲載されました。彼女が人間とチンパンジーの違いを比較するためのコンピュータープログラムを開発して調べたところ、最も大きな違いの見られたDNAシークエンスには118個のヌクレオチドが存在することがわかりました。この領域はHAR1、「human accelerated region(ヒト加速領域)」と呼ばれます。
HAR1はヒトやその他の脊椎動物の脳に存在すると見られていますが、ヒト以外の動物のこの脳領域の進化は非常に遅れています。そのため、ニワトリとチンパンジのシークエンス間には違いが2つしかない一方で、チンパンジーとヒトには18もの違いがあるのです。
培養細胞を用いた試験により、HAR1が遺伝子発現の調整役を担っていること、そして大脳皮質の成長に関わるニューロン内で活動的であることが証明されています。事実、例えばHAR1が活性化している細胞が損傷すると、脳は異常な形で成長し、大脳皮質がそれまでとは異なる見た目になってしまうのです(凹凸や溝といった特徴的な構造がなくなってしまいます)。
そして、単に脳の重さだけでなく、シワがあるという構造も知力を示す解剖学的特徴なのです。
“新しいアイディアに対して開いた心が、元の大きさに戻ってしまうことは決してない”
-アルベルト・アインシュタイン-
脳のシワはどのように作られるのか?
人間の脳の主な特徴として挙げられるのが、大脳皮質のサイズや、隆起や溝のように見える外側のシワです。
大きな脳を持つ動物の大半がシワのある脳を、そして小さな脳を持つ動物の大半がシワのない脳を持っています。
ニューロンは大脳皮質の上部にあるのに対し、下部に見られるのがニューロンと脳のその他の部分とを繋ぐケーブルです。
大きい脳の場合、脳の外側を覆うこの神経組織の層が、覆われる側の脳構造よりも大きくなります。そして風船のような丸みを帯びるのではなく、この層自身が折りたたまれることで脳と頭蓋骨の体積を縮めているのです。
Victor Borrelと彼のチームがこの線を研究し、大脳皮質の拡大においては放射状グリア細胞(bRG)が重要な役割を果たしていることを証明しました。
したがって、脳回を有する大脳皮質の形成には、ニューロンが放射状に分布できるようにするためのプロセスを作り出してくれるbRGの存在が(bRGのみでは不十分なものの)不可欠なのです。
“人間の脳はあなたが生まれた瞬間から働き始め、あなたが人前で語るために立ち上がるまで決して止まらないのだ”
-George Jessel-
脳に十分な量のシワが無いとどうなる?
皮質が折りたたまれる過程は子宮内で起こります。妊娠20週頃に脳のシワが生じ始め、子どもが生後1歳6ヶ月になると完成します。
脳の機能や接続をより良いものにしていくためには、このシワづくりが重要なのです。また、この構造を取ることで巨大な皮質を頭蓋の狭いスペースに合わせることができます。
脳のシワに関する病気では、多少脳回症などの病気が特に多く見られます。これは小さすぎる脳回があまりにもたくさんできるという異常な状態が生じるもので、ニューロンが側脳室の周囲に異所的に蓄積し、小さな節を形成してしまう病気です。これらの節は、てんかん性発作の原因になり得ます。
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