「ノー」を受け入れることの大切さ
「ノー」を言えるようになることの大切さはよく言われていますが、「ノー」を受け入れることの大切さについてはあまり議論されていません。「ノー」を受け入れられるようになることは、それを言えるようになることと同じくらい大切です。 どうしてもかなわない夢や欲求というのは存在するもので、それを避けることは出来ません。そのため、拒絶を受け入れることが難しいと、人生はとても困難なものになってしまいます。
「ノー」を受け入れるのが難しい時期の一つが、私たちが子供の頃です。子供と言うのは自己中心的であるものですから、これは普通のことです。しかし環境が整っていれば、他人のことを考慮しながら状況を観察する能力が、時間と共に育っていきます。
「ノー」を受け入れることは自らの限界に直面することであり、これは心地良いものではありません。もちろんそこには願望が存在し、諦めるという選択との間に摩擦が生じます。ですから、多かれ少なかれ必ず葛藤が生まれるものです。しかし、これ自体は悪いことではありません。私たちの人生の一部であり、正直な反応なのです。
いろいろな「ノー」
「ノー」には様々なものがあることは、皆良く分かっています。その場限りの「ノー」であることもあれば、ずっと続く決定的なものであることもあります。同様に、それほど大切でないことをあきらめるだけの場合もあれば、自分には価値がある、大好きで必要なものを諦めなければならない時もあります。「ノー」を言うことや受け入れることを完全に避けて通れる人間など、この世には存在しないものです。
拒絶は時に直接的です。例えば、何かを頼んだ時に断られることがあります。また別の場合には、言葉そのものではなくとも、現実が何かを延期、または諦めざるを得ない状況にしてしまうこともあります。それとは違って、拒否やマイナスな感情を表すジェスチャーを通した、間接的な「ノー」であることもあります。
中にはどんなことに対してでも、拒否されることを受け止めて理解することが難しい人々がいます。しかし一般的には、もちろんそれが一時的なものやそれほど大切でない時には、「ノー」を受け止めるのは簡単です。より決定的で自分に関係のあることほど、拒否を受け入れることが難しくなります。では、拒否を受け入れることを学ぶのがそれほど大切なのは、なぜでしょうか。
他人からの「ノー」を受け入れることを学ぶ
私たちに「ノー」を突き付けるのは、たいてい他人です。仕事、プロジェクト、大学、昇進など、様々な局面で「不合格です」と言われます。または、「触らないで」「この関係を続けたくない」「君はパーティーに誘われていないよ」などと言われるような場面もあるでしょう。
このような拒絶は受け入れるのが難しい事があります。ここで大切なのは、他人には私たちのニーズを満たす、期待をかなえる、欲しいものを与える義務はないということを受け入れることです。他人は、私たちの人生を楽にするために存在しているのではありません。全ての人が、自分たちが関わっている状況の中でも、はっきりと限度を設ける権利を持っています。
このような拒絶を受け入れるのが難しい場合、一般的に他人が設けた限度を認識出来ていないことが考えられます。世界とコミュニケーションすることとは様々な違いを受け入れることであり、自分が欲しいからと言うだけで、それを手に入れることができるとは限らないのです。他人からの直接・間接的「ノー」を受け入れられるようになると、人は一気に成長します。
人生の「ノー」
人生の「ノー」には、より強制的で変えることのできない拒絶もあります。私たちは、生まれる瞬間から様々なものを与えられると同時に、様々なものから拒否されます。私たちは様々な限界とともに生まれてくるものです。しかし、親が子供たちがこういった現実に直面しないように育ててしまうと、本人たちの助けになりません。
人は限界がないから強くなるのではなく、限界を認識してそれに向き合うことが出来る時に強くなります。待たなければならなかったり、戦わなければならなかったり、単純に諦めなければならないこともたくさんあります。失望したり文句を言って終わってしまうのは、悪い結果を避ける良い方法ではありません。
人生の「ノー」を受け入れることを学ぶと、より強く幸せになれます。抵抗ばかりしているとイライラが募って、本当の願望を捻じ曲げたり、そこから離れていってしまいます。別の言い方をすれば、不可能なことばかりを夢見て、自分にできる人生を生きることを辞めてしまうのです。
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Bisquerra, R. (2012). De la inteligencia emocional a la educación emocional. Cómo educar las emociones, 24-35.