セルフ・リーダーシップ:夢を実現するために
セルフ・リーダーシップとは、意図的に自分自身の思考や感情に影響を与える能力のことです。これはつまり、自らの力量やモチベーション、そして内なるエネルギーの全てを、成し遂げたいと思っている事柄に注ぎ込む能力を意味します。そうすることで、コンピテンシーという、どんな状況下にいる時でも自分自身に自信を持つことを可能にするツールが身につくのです。
「リーダーシップ」という言葉を聞くと、何か具体的な目標を達成するために数人の集団を鼓舞している一人の人物像がすぐさま思い浮かぶのではないでしょうか。「リードする」とは何よりもまず、影響力を及ぼすということを意味しています。
セルフ・リーダーシップという言葉自体は特に真新しいものではなく、1980年代にチャールズ・マンズによって生み出されました。彼は、人間行動の中でもこの独特な領域を専門に研究していたマサチューセッツ大学の教授です。セルフ・リーダーシップという考え方はそこから生まれ、「心の知能」といった同時代のトレンドの追い風もあって、さらに強固な概念となっていきました。
セルフ・リーダーシップは特にビジネスや人事といった領域で有益な考え方ですが、実は心の健康という分野の方ともっと直接的に結びついています。自分をリードするというのは、幸福な状態になることを目指して自分自身の運命を率いるキャプテンになるということです。これは、自らのウェルビーイングのための例外的要素が含まれる、個人的成長の領域なのです。
“他者を服従させることは強さを意味し、自分自身を服従させることは真の力を意味する”
-老子-
セルフ・リーダーシップとは?
セルフ・リーダーシップは、40年以上前、ある具体的な理由のために生み出された概念です。当時の人々は、ある人物にリーダーシップを身につけさせようとする時に最も大切な側面を忘れてしまっていました。それは、まず自分自身を知ることなく優秀なリーダーになれる人など一人もいない、という事実です。また、優れた感情マネージメント術を習得することと、自らの行動を望んだゴールの方向に向ける方法を知っておくことも必要になります。
こういった領域を無視することは、集団のマネージメントに失敗することとイコールです。自分自身の管理ができていない状態で、いかにして他の人々をある目標に向けて導くことができるというのでしょうか?ソクラテスはかつて、まず自分のことを知らずして優れた教師になることのできる人などいない、と指摘しました。その言葉の通り、内なる自己を導く能力のない人には他人に影響を及ぼすことなど不可能なのです。
最近では、この種の自分自身への影響の与え方に関する研究がますます増えてきています。例えばアリゾナ大学で行われた研究では、これが文化圏によってどう異なるのかに関する分析がなされました。さらに、Andrew BryantとAna Kazan両教授による著作『Self-Leadership: How to Become a More Successful, Efficient, and Effective Leader from the Inside Out』をはじめとして、セルフ・リーダーシップを養うのに役立つような書籍類も複数出ています。
自己知識:自分自身の正体を知ること
ベンジャミン・フランクリンはかつて、「この世には驚くほどハードなものが三つある。それは鋼、ダイアモンド、そして自分自身を知ることだ」と指摘しました。その言葉通り、自分という宇宙の中を掘り下げていくことほど複雑なことなどそれほど存在しないでしょう。「自己を知る」とは、自らの限界や弱さを認識することを意味します。さらには、自身の潜在力を探究すること、欲求を上手く導くこと、自分がどんな人間であり、どの方向に向けて進んでいるのかを把握することでもあります。
そして、自分自身を正確に、余すところなく知っていくことこそ、セルフ・リーダーシップの要なのです。
意欲:自分は何がしたい?
あなたは、人生から何を得たいと思っていますか?自分自身に何を期待していますか?意欲とは何より、自分を重要な目的の方向に向けさせ、それを果たすべく努力することを意味します。 「〜のために」という目的を持たない「〜だから」は存在しません。何の理由も無い状態では、努力は全て無意味なものとなってしまいます。自身のエネルギーやアイディアを目標達成のために費やすには、それ相応の意義や理由が必要だということを覚えておきましょう。
セルフ・リーダーシップとセルフ・アウェアネス
セルフ・リーダーシップを左右するのが、セルフ・アウェアネス(自己認識)です。セルフ・アウェアネスにより、私たちは自己と世界との関係性を認識することができ、そして自身の感情がいかに気分に影響し、結果として決断や行動にもその影響が及ぼされるのかを理解することができます。自己を認識できている時、人は自身の内側を覗き込む能力を手にし、一つ一つの行動を読み、理解し、調整することができるようになるのです。
セルフ・エフィカシー:自分にはどんな価値があり、どんなことができるのかを知ること
セルフ・エフィカシー(自己効力感)は、心理学者アルバート・バンデューラによって生み出された、とてつもなく興味深くて重要な概念です。これは、自分には何かを正確かつ効果的に行う能力があるのだ、という感覚を持つことを意味します。
セルフ・リーダーシップを得るには、セルフ・エフィカシーを持つことが必要です。こうすることで、自分には何が起きたとしてもそれに立ち向かう力量があるのだという気づきを得ることができます。試練を乗り越える力がつけば安心感を持てますし、状況をコントロールできていると感じることができ、やる気も湧いてくるのです。
セルフ・マネジメント:鍛錬された頭脳
セルフ・マネジメントには、習慣とルーティーンを作り出して時間を適切に管理し、日々の目標を叶えられるようにする力が含まれます。また、自身の能力をクリエイティブな形で問題解決に注ぎ込むことを可能にするものでもあります。
セルフ・マネジメントとは、各シチュエーションに対して他人に頼ることなく反応する方法を認識できる力のことです。要するに、困難な状況や環境に陥っても、他人にそこから救い出してもらうことを期待せずにいられる強さを持つということです。ここまでで紹介した領域は全て、このセルフ・マネジメントというコンセプトの中で重要な役割を担っています。そして、セルフ・リーダーシップを身につけるにあたってセルフ・マネジメントは絶対に欠かすことができないのです。
最後に、セルフ・リーダーシップとは時間と労力を費やして活用すべき貴重なツールであるということをぜひお伝えしたいと思います。自分はどんな人物でどんなことができるのか、そしてどんな望みを持っているのかについての認識を研ぎ澄ますことで、夢の実現に向けて感情と行動とを調和させられるようになるのです。このようなチャンスを逃す手はありませんよね。
“私は自分の運命の支配者だ。私は自分の魂のキャプテンだ”
-ウィリアム・アーネスト・ヘンリー-
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- Neck, C.P. and Houghton, J.D. (2006), “Two decades of self‐leadership theory and research: Past developments, present trends, and future possibilities”, Journal of Managerial Psychology, Vol. 21 No. 4, pp. 270-295. https://doi.org/10.1108/02683940610663097
- Stewart, Greg & Courtright, Stephen & Manz, Charles. (2011). Self-Leadership: A Multilevel Review. Journal of Management – J MANAGE. 37. 185-222. 10.1177/0149206310383911.
- Kaza, Ana (2012) Self-Leadership: how to become a more successful, efficient, and effective leader from the inside out. McGraw-Hill Education