社会的アイデンティティとしてのリーダーシップ

· 2019年5月18日

リーダーになるということはどういうことなのでしょうか。社会心理学が答えを欲している一つの疑問が、なぜ人々がリーダーに従うのかということです。リーダーシップの古典的な研究では、人々はリーダーが共通しているある特徴を探しているといいます。

しかし、このアプローチからたった一つの定義を導き出すには、リーダーの特徴には多様性がありすぎます。そこで、個人ではなく集団に焦点を当てた見方をするのが、リーダーシップをよりよく理解する鍵になるのかもしれません。

ジョン・アデアはかつて、リーダーにとって最も重要な言葉は「私たち」であり、最も重要でない言葉は「私」であると言いました。ここでは、リーダーシップを社会的アイデンティティの観点から見ています。それは、「私たち」のリーダーシップを、同じ目標のためにとる人のことです。ですので、リーダーに従う人たちは自分の私心を忘れ、集団のために動くのです。

集団のプロセスや社会的アイデンティティを通してリーダーがどのようにして生まれるかについて詳しく見ていく前に、リーダーシップの研究における古典的な理論について簡単に見直しておきましょう。そうすれば、リーダーシップのプロセスのすべてについて、より幅広い考えを持つことができるからです。

社会的アイデンティティとリーダーシップ

リーダーシップについての古典的な見方

古典的な見方では、「偉人」と彼の性格という考え方に焦点を当てていました。この考え方は、少なくともプラトンまで遡り、その目的は何が人をリーダーにするのかを理解しようとすることでした。リーダーの性格や特徴についての議論が、約2500年間続けられてきたのです。

一般に、リーダーとは指示、管理、他の人のモチベーションを高めることにおいて明確な能力を持っている人のことを言います。そしてたいていはそれに関する一つの具体的で受容な特性も持っています。その特性とは「カリスマ」です。

しかしカリスマとはいったい何なのでしょう?これは、長年いろいろな定義をされてきており、中にはカリスマがリーダーを作り、リーダーになることがカリスマ性があることを意味するなど、堂々巡りをしているものさえあります。

これらの理論の大きな問題点は、リーダーの例がみんな完全に異なっているということです。リーダーの類似点を分析する研究が数多くなされてきました。それらは、その人をリーダーにするかどうかを決める性質を探していたのです。しかし、明確な答えが出たことはありませんでした。

この理論からリーダーシップを予測するための一番いい要素は知性で、それは全体の要素の5%を占めています。つまり、残りの95%は原因不明だということです。ですので、個人のアイデンティティは、リーダーシップを予測するツールとしてはあまりよくないのです。しかし、リーダーの集団や社会的アイデンティティを見てみると、何が起こっているのかを正確に見ることができます。

リーダーシップと社会的アイデンティティ

この話を始める前に、自己カテゴリー化や社会的アイデンティティという言葉が聞きなれない場合は、このリンクを参照してみてください。これらの理論について知っていると、これから説明することをさらに深く理解することができます。

人をリーダーにする基礎的な側面は、その人に従う人が、その人をリーダーだと見なしているということです。それが暗黙の場合でも明らかな場合でも関係ありません。言い換えれば、リーダーの後ろにはいつも集団がいて、それには独自のアイデンティティがあるということです。そのアイデンティティはそれを定義づける特徴や目標を反映しているものです。その中にいる個人もまた、その特徴や目標のほとんどに共鳴しています。

リーダーシップの仕組み

社会的アイデンティティによると、何が人をリーダーにする?

では、従っている人が誰がリーダーになるかを決めるのであれば、その人たちが求めているものとはなんなのでしょうか。従っている人が自分たちの社会的アイデンティティを認識していれば、その集団の特徴や目標を代表する人を探すだろうということは想像に難くありません。

リーダーを探している間、集団のアイデンティティに沿ったリーダー候補を比較します。その時に、集団にぴったりな型を持った人が目立つようになり、追随する集団がその人を自分たちのリーダーだと見るようになるのです。

リーダーとは、その追随者の観点からは個人的なアイデンティティを持たない人です。その人の存在全てが集団を代表し、そうすることでその人がこの役を演じるのに理想的になります。その人が集団と同等なのであれば、その集団の関心事に逆らうことはできないので、これは理解できますね。さらに、構成員のすべてが集団のアイデンティティを共有しているので、リーダーと強く共鳴し、共感するのです。

この新しい観点は、古典的なリーダーシップモデルの欠点を確実に克服しています。それぞれの特定の集団のアイデンティティを通してリーダーのことを説明することで、各リーダーの大きな違いを理解することができるのです。しかしリーダーシップがどのように機能するのかに関しては、まだまだ研究されるべきことや理解されるべきプロセスが残っています。