ストレス応答とは正確には何なのか
人間なら誰しも、ストレスを感じた経験があるはずです。ストレスは、日々の生活の様々な側面に影響をもたらし、ある意味ではその人を支配する力さえ持っています。では、ストレス応答についてはご存知でしょうか?
ストレスが身体の様々なシステムに現れるのは、反応が長引いたり調整がうまくいかなくなった後にその疲労が蓄積した時です。ここで言及したいのがアロスタティック負荷と呼ばれるもので、これは有害な状況に順応しなければならない際に心身に溜まる疲労のことを指します。
この事態を避けるために、ストレスの多い状況下でもすぐに対処に向けて動いてくれる順応のための作用が、私たちの体には備わっています。これらの作用は、心身のバランスや恒常性を維持するために働いてくれるものです。
恒常性が不均衡になった後、身体は常にこれを安定した状態に戻そうとします。では正確には身体はどのような動きをするのでしょうか?読み進めて謎を解明してください!
ストレス応答
身体はストレスを感知すると、これに自らを適応させるために一連の生理学的反応および代謝反応を作動させます。例えばこれらの反応は、エクササイズを行っている時にも現れるもので、置かれた状況を見極めやすくしてくれる働きもあります。ストレスの多い状況下においては、いつもより用心深くなり、警戒心が強められるので、素早く決断を下せるようになります。
ストレスによってまず最初に作動するのが自律神経系です。その後、脳の視床下部がこれを受けて知覚情報および感覚情報を集約します。
また、視床下部は室傍核も活性化させ、さらに室傍核は脊髄にある節前ニューロンを活性化させます。これらのニューロンが交感神経節を刺激し、いくつかの器官でノルアドレナリンの量を増やすのです。
増加したノルアドレナリンの影響はストレス応答が起こっている間に出現する
- 心拍数の増加
- 冠状動脈の拡張
- 気管支の筋肉組織の弛緩
- 呼吸が速くなる
- 末梢血管の収縮
- 肝グリコーゲンの分解
- 高血糖
交感神経節が活性化すると、副腎も活性化します。そして副腎はノルアドレナリンに加えてアドレナリンの分泌も増やします。
アドレナリン増加による影響
- 心拍数の増加
- 筋肉や心臓の血管拡張
- 呼吸器系の拡張(これが肺の空気循環を促進する)
- 汗の量が増える(余分な熱を逃がすため)
- 生存とは関係ないような生理学的プロセス(炎症、消化、生殖、成長)の減少
- 肝グリコーゲン分解を促進する(グルコースの生産)
- インスリンの分泌を抑え、膵臓内のグルカゴン分泌を促進する(血糖値が上昇)
ノルアドレナリンへの応答として、唾液腺からはα-アミラーゼと呼ばれる口内の酵素も分泌されます。この酵素には炭水化物の消化を助け、口内のバクテリアを排除する働きがあります。
視床下部-下垂体-副腎系
視床下部が室傍核を活性化させると、室傍核内のニューロンが副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)を視床下部と下垂体前葉とを結びつけるシステムへ放出します。これが、血液中への副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進するのです。
ACTHはコルチゾールなどの糖質コルチコイド形成に働きかけます。これはステロイドホルモンの一種で、炭水化物やタンパク質、そして脂肪の代謝に介入します。グルコースの合成を促進し、また、細胞のグルコース消費を徐々に減少させるので、血糖値が上昇します。
コルチゾールなどの糖質コルチコイドは負のフィードバックを視床下部と脳下垂体へ伝えます。これにより、ACTHやCRFの濃度を調整するのです。また、これらのホルモンは免疫機構や海馬に対しても働きかけます。
視床下部は、睡眠サイクルに関わる概日リズムに応じてホルモンを分泌しています。結果として、朝の間は夜間よりもコルチゾールの濃度が高くなります。
したがって、身体がストレスに応答する際には、視床下部が交感神経系に対して働きかけているということです。これが、いくつかの影響を生み出します。
交感神経の活性化による影響
- 肝グリコーゲンの分解
- 高血糖
- 呼吸が速くなる
- 心臓の拍動が速くなり、血圧が上がる
- 末梢血管の収縮と筋肉の血管の収縮
- 注意力が増し、反応時間が早まる
- 筋肉の収縮増大
- 瞳孔の散大
ストレス応答における神経の制御
ストレス応答の起こり方は、受け取る刺激の種類によって全身性あるいは心因性の二つに分けることができます。
全身性
- まず第一に、その刺激には意識処理の必要はない
- 生理学的な、生命を脅かすような刺激であることが多い(例えば出血など)
- 視床下部の室傍核を直接刺激する
心因性
- 意識の処理を必要とする刺激が原因
- 急を要する危険性がある刺激というわけではない
- 視床下部の室傍核への刺激は間接的
まとめると、ストレス応答とは、身体のバランスを保ち、ストレスの悪影響を妨げるために行われる一連の身体作用のことです。これは、まさに自然が作り出した驚くべき知恵の一例と言えるでしょう。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Kudielka, B. M., Hellhammer, D. H., & Wüst, S. (2009). Why do we respond so differently? Reviewing determinants of human salivary cortisol responses to challenge. Psychoneuroendocrinology, 34(1), 2-18.
- Sandi, C. (2013). Stress and cognition. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science, 4(3), 245-261.
- Valdés, M., & De Flores, T. (1985). Psicobiología del estrés. Barcelona: Martínez Roca, 2.