単純接触効果とは?
嫌いな曲を何度も聞かなければならない状況があり、だんだんとその曲を好きになったという経験はありませんか? 誰かと時間を過ごせば過ごすほど、心地よさを感じるということに気づいたことは? これが「単純接触効果」で、近年人の好みの研究において非常に関心が高まっています。
熟知性の原則とも呼ばれるこの効果から、新たな刺激に何度もさらされることにより、なぜ私達の反応がポジティブなものになっていくのかが分かります。
その理由は簡単に言うと、よく知っている状況、人や物に私達は愛着を抱くためです。ではこの現象にはどのような要素が関係しているのでしょうか? 単純接触効果について学びましょう!
研究における単純接触効果
この心理学的効果を研究し、発案したのは、ロバート・ザイアンスです。1976年の最初の調査以来、様々な性質の刺激に直面する時、人には好みができるということを証明し続けました。
言葉、音、顔の写真など全てにおいて、私達は、もっとも親しみのあるものを好むようです。
食べ物の好みにおける単純接触効果の影響を調べるために、ある研究が行われました。まず学生集団に、今まで知らなかったトロピカルジュースを数種類与えます。試飲回数は5回、10回、15回と様々です。そして、一番好きなものを選ぶように言うと、もっとも多い回数飲んだジュースを好むという明らかな傾向が見られたのです。
また、他の科学者も対人魅力に関する研究で、同様の結果を得ています。会う回数が多ければ、相手に対し友好的になり、相手の存在をより好意的に感じるようになります。
無意識の現象
単純接触効果に関して最も興味深いことの一つは、刺激への親しみを必ずしも本人が自覚していないということです。さらにこの効果は、潜在意識下で起こっているようなのです。
ザイアンスは、被験者に様々な漢字を見せるという実験を行いました。提示時間は非常に短く、被験者が何を見たか分からないほどです。
その後、研究員は、被験者に文字が形容詞であることを伝え、それぞれポジティブな意味をもつかネガティブな意味をもつか評価するように指示します。すると、被験者は、必ずすでに見たことのある文字をよりポジティブだと評価したのです。
実社会で、ブランド会社が単純接触効果を利用しているのは明らかです。ロゴ、スローガン、企業イメージの親近性により、消費者に特定の製品を買わすよう仕向けています。
新たな街を訪れた時、地元の店に行きたいという気持ちがありつつも、知っているフランチャイズに入りがちになるのもこの考え方から理解できます。
単純接触効果はなぜ起こるのか
この現象を最初に研究した人のは、フェヒナーだとされています。このドイツの心理学者、現在の精神物理学理論の父である彼が、単純接触効果を解説しています。人は新たな要素に対し、恐怖や不安を伴う反応をする傾向があると言っています。
しかし、この「新しいものへの恐怖」は、これが新しい刺激でなくなるまで刺激に触れ続けると消失します。これにより、接触が増えると知らないものへの疑いの傾向が心地よい親近感に変わるのです。
ここで、繰り返される刺激への接触が過剰になると、飽きてしまうということも頭にいれておきましょう。飽和状態になると単純接触効果が制限されます。例えば、毎日同じものを食べ続けると、それを嫌いになるでしょう。また、毎日同じ映画を観ると魅力を感じなくなるでしょう。
それでも、気づかぬうちに熟知性の原則があなたの好みの基礎になっていることは間違いありません。冒険やリスクが好きな人も嫌いな人も、日々の様々な決断で単純接触効果の影響を受けています。
あなたが買う商品、よく行く場所、好きな人は、すべてこの原則に影響されているかもしれません。ですので、単純接触効果の影響を頭に入れておくと良いでしょう。
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