鬱における脳の変化
鬱は、日々がゆっくりだらだら過ぎるような連続的な漂流状態です。泣きたいのに涙も残されていません。希望の見えない脳には笑顔を見せる気力もないため死んでいるように感じます…
たくさんの人にとってこの感情はなじみがあるかと思います。ひどく複雑でユニークな問題です。鬱は、大きな影響を及ぼす健康問題です。 WHO (世界保健機構)によると、次の2,3年で患者数はさらに増えると考えられています。
あなたは笑う。でも幸せなわけじゃない。あなたは泣く。でももう涙は残されてない。あなたは息をする。でも生きているように感じられない。わからないかもしれないけど、これが鬱の顔。信じないかもしれないけど、これはあなたが選んだわけではありません。
何かが起こっています。政府が経済的な数字に注力している一方(メンタルヘルスに関連する治療は国のGDPの4%に及びます)、医者や精神科医は鬱の抑止の重要性を強調しています。鬱の治療方法はすでに分かっていますが、今日まで、脳内の科学物質と感情の流れによってこころを奪われてしまうこの深刻な状況の防止をすることができていません。
ここでは、わたしたちの健康と幸福に関する興味深い面をご紹介しましょう。
鬱は静かな烙印
鬱は一夜で起こるわけではありません。日々の自分の生活を一夜で決め込む人はいません。人生の基本的なリズムからの乖離を自ら選ぶ人もいません。
鬱はポジティブな感情、幸せからの断絶です。ゆっくりと発症します。少しずつ重々しく進み、 わたしたちを無力、悪いムード、悲観主義、反応ができない状態に陥れます。
ロンドン大学(UCL)のメンタルヘルス科学科のマイケル・キング教授は、プレディクトD(PredictD test)と呼ばれるテストの責任者です。このテストは、人が持つ鬱発症のリスクを予測します。彼が言うように、この病気はいまだに偏見を受けすぎています。
他の研究によって明かされたように、鬱系の病気のほぼ50%は治療がされていません。あるいは、個々の患者にあったベストな治療を受けていません。これが何千人もの人が自分自身の鬱のシナリオへ着々と漂流してしまうことににつながっています。そして、世界中のたくさんの人が痛みと悲しみの解決策として自殺を選択しています。あるいは、何度も再発を繰り返すことに直面します。
脳が人生と調和しなくなる時
もっとスピリチュアル的に言うと、わたしたちに はみな「反響」する能力があります。わたしたちは特定の音楽を自分の中で奏でているとも言えます。この音楽は、わたしたちのパーソナリティーと共鳴する人々、場所、コンテクスト、活動とわたしたちをつなげてくれます。この内面の「メロディー」は、アクティブで、情熱的で、興味深い脳の反映です。
鬱になるとき、反響する力がシャットダウンします。脳のいくつかの部分の電気インパルスが減少またはスローダウンするためです。半無気力状態に陥り、神経シナプスの活動が減ります。深くデリケートな化学物質の流れがおこり、浮き上がり自分の人生と再びつながることが難しくなります。
次の項目で詳しく見てみましょう。
脳の「設計」における鬱の影響
神経伝達物質のバランスが崩れることだけが鬱の原因ではないことを覚えておくことが大事です。脆弱性、感情的要因、医療的な問題なども間違いなく原因になり得ます。しかし、この病気が脳に及ぼす影響は顕著です。少し見てみましょう。
- 海馬: 海馬は大脳辺縁系の一部で、記憶の処理、特に長期記憶の処理を担っています。いくつかの研究によれば、長い間鬱をわずらったり、慢性的なストレスを抱えると、この構造の規模が減少します。記憶障害や集中力の低下などが見られるようになります。
- 鬱は複雑な化学物質の混沌状態を作り出します。アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンがわたしたちの感情的なバランスを崩します。これにより眠れなくなったり、何かや誰かへのモチベーションが上がります。世界がすべてのドアをシャットアウトしたように感じます。
- 視床も覚えておくべき構造です。感覚的な情報を受け取り、それを皮質の対応エリアに送る神経細胞エリアです。このエリアのお陰で、話したり動いたりする機能がコントロールされます。鬱をわずらった患者は、動作や素早さや元気をもってコミュニケーションを取る能力の不活発化が見られます。これはとても顕著です。
鬱は、わたしたちの一番傷つきやすい脳やこころの中に巣くう複雑な敵です。わたしたちの思考がカオス化し、統制がくずれ、苦痛になります。何年にも渡る精神的・感情的ドリフトに陥ってしまうまでに悪化します。
そのような状態が起こることを許さないでください。自分を諦めないでください。助けを求めてください。そして何より、鬱を許さないよう戦ってください。希望、幻想、楽観主義という名のブーツの留め具をもう一度止めてください。