アルバート坊や:ワトソンの心理学実験

アルバート坊やの実験は、多くの論争を呼びました。ここでは、心の条件づけは可能だと証明するために恐怖にさらされた赤ちゃんの運命と真のアイデンティティを見ていきます。
アルバート坊や:ワトソンの心理学実験

最後の更新: 14 10月, 2019

アルバート坊やの実験は、心理学の歴史の中でもっとも混乱や論争の多い実験でしょう。この実験は、行動主義の父とも呼ばれるジョン・ワトソンにより行われました。刺激と反応を使い、人間の行動は形成することが可能だというのが彼の考えでした。

本質的に行動主義は、人間の行動を形作る、または「鍛える」ことができると考えます。他の学派と違い、行動主義は中国のお年寄りの幸せはメキシコの赤ちゃんの幸せと全く同じであると言います。観察可能な行動のみが考慮されるため、自分の中で何が起こっているかは関係ないのです。

この仮説を確かめるために、ジョン・ワトソンは一連の実験を行いました。もっとも有名なのが生後9ヶ月の赤ちゃんアルバート坊やの実験です。実験後、この小さな子どもがどうなったかワトソンは知りませんでした。しかし、その後何が起こったか調べた研究者がおり、その結果は驚くべきものでした。

ワトソン 実験

 

アルバート坊やの実験

「アルバート」とワトソンに何が起こったかに触れる前に、まずアルバート坊やの実験について簡単に説明しましょう。ワトソンの記録によると、アルバート坊やは孤児院の看護師の子どもです。アルバートがこの実験に選ばれたのは、穏やかで、どこか無関心に外的刺激に反応したためです。

ワトソンはアルバートを様々な刺激にさらします。猿、白ネズミ、焼ける紙などです。これらを見たアルバートは刺激に注意を向けていましたが、感情的には基本的に無関心でした。特定の好奇心を示しただけだったのです。

後に、ワトソンは更なる刺激を用意しました。白ネズミが出るたび、鉄の棒を使い、雷の音を再現し、赤ちゃんを怖がらせます。そして、この音とネズミがつながるようになり、しばらくするとアルバートは動物を怖がるようになりました。ウサギやその他の小動物を怖がるようになったのです。

 

アルバート坊やに何が起こったのか?

アルバート坊やの実験により、ワトソンは刺激を使い行動を形作ることができると証明しました。その後、アルバートが養子に出されたため、実験は中止になったとワトソンの記録には書かれています。実験後、アルバートに恐怖が残ったかは不明でした。

時が経ち、アルバート坊やのその後に興味を持つ研究者が出てきました。この真実に迫った人物の一人が心理学者ハル・ベックでした。ワトソンの残した記録や書類から、アルバートを探し、2009年、その結果を発表しました。

アルバートの名前は、ダグラス・メリットで、水頭症を患った末6歳で亡くなっていたのです。この発見により、ワトソンの研究は問題となり、自分の理論を証明するために障害児を利用したことから、不当だと扱われるようになりました。

アルバート ワトソン 実験

 

別の仮説と質問

カナダのグラン・マキューアン大学の心理学者ラッセルA.ポウェルはベックの結論に疑問を投げかけます。ラッセルは研究を開始し、2012年その結論を発表しました。彼の研究によると、アルバート坊やの本当の名前はウィリアム・アルバート・バーガーで、健康な人生をおくり、88歳で亡くなったと言います。彼も動物が嫌いでした

ベックの仮説もポウェルの仮説も堅実なものですが、決定的ではありません。挑戦とある種の結論を求め、2014年6月、研究員トム・バートレットは新しい研究結果を発表しました。それは、2人とも実験に参加したというものでした。

ここで生じた問題すべてが、還元主義で厳しく批判されている学派、行動主義の妥当性に関する論議を呼んでいます。これに、ジョン・ワトソンに対する嫌悪感が加わります。また、ワトソンはアシスタントのロザリア・ライナーとの不倫が原因で離婚したことでも批判されています。

ジョン・ワトソンは行動主義学派から追放され、学位までも取り上げられました。ライナーとの間には2人の子どもがおり、行動主義で育てられました。2人とも大人になって、自殺を図り、長男ウィリアムは亡くなっています

50年代、ワトソンは学位を取り戻しましたが、この頃彼は別の分野、広告に焦点を当てるようになりました。


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  • Pérez-Delgado, E., Gil, F. T., & Garrido, A. P. (1991). La nueva imagen de John Broadus Watson en la historiografía contemporánea. Anuario de psicología/The UB Journal of psychology, (51), 67-88.

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