あなたの発作は不安発作?それともパニック発作?
パニック発作という用語と不安発作という用語はしばしば、互換的に使われることがあります。しかし、これらが同じものを指すわけではありません。共通の症状も存在するとはいえ、いくつか重要な特徴が両者を区別しているのです。とは言えややこしいのは事実なので、心配すぎないでください。実は、心理学の専門家もこの二つの用語の使い方を間違えてしまうことがあるほどなのです。
しかし、違いをわかっていないと適切な治療法を見つけたり、あるいは有効なコーピングスキルを身につけるのが難しくなってしまう恐れがあります。このように、両者の相違点は単に語義の違いだけで済ませられる問題ではないのです。
不安発作とパニック発作の症状を理解することで、患者の症例および発作の背後にある問題に、より効率的に対処することができるようになるはずです。そもそも基本的な不快感が異なりますし、その進行過程も同様に異なっています。したがって、両者を区別できるようになることが必要不可欠なのです。
“パニック発作はいくつかの点において、酔っ払っている状態にかなり似ている。自分で自分を制御できなくなるし、何の理由もないように思えるのに泣いてしまうし、翌日もまだ二日酔いに悩まされるのだから”
-サラ・バーナード-
それはパニック発作?それとも不安発作?
不安発作はしばしば、ストレッサーや具体的な懸念への反応として生じます。例えば、一定期間にわたって解雇されることに恐怖心を抱いていたような人が上司に呼び出されたりすると、不安症状が噴出するかもしれません。
不安発作が起きている間、人は恐れや懸念を感じます。そして心臓の拍動が速まり、呼吸が短くなっていくのが感じられるでしょう。しかしその発作は短期的で、ストレッサーがなくなるのと同時に消えていきます。
対照的に、パニック発作が起きるのは実際の危険や明白な原因が存在しない時です。つまり、引き金となるものがありません。そのため多くの場合、発作を予想することは極めて困難です。パニック発作を起こしている人は大抵、極度の恐怖や恐れ、懸念などに心を乗っ取られてしまいます。
自分は死ぬのだろう、抑制力を失うのだろう、あるいは心臓発作を起こすのだろう、などという予感を感じます。そして実際に、胸部の痛みや息切れ、めまい、吐き気といった幅広い身体症状をも経験するのです。
DSMにも記載されている?
「不安発作」は、最新版の『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)』の中のどの診断カテゴリーにも含まれていません。
- 実は、不安発作とは不安を経験する人々が作り出した俗称であり、強烈かつ長引く苦痛が生じている期間を言い表すための言葉なのです。
- パニック発作の方は臨床的コンセンサスがあるため、定義するのが簡単です。DSMによる公式の定義は次のようになっています。「パニック発作とは、真の危険あるいは明らかな原因が存在しない時に突然生じる、深刻な身体反応のきっかけとなる強烈な恐怖のエピソードである」
不安発作の症状
不安発作では、不安がピークに達すると、誘因となったものが消えるか、代替となるコーピングストラテジーが見つかるか、あるいは発作によって生理学的システムが消耗してしまうまで長時間続きます。
これは普段のシンプルな不安感よりも深刻ですが、通常はパニック発作によって引き起こされるレベルの反応までには至りません。発作の長さは数分間、数時間、数日間、あるいは数週間などまちまちです。普通、以下のような症状のうち一つあるいは二つ以上が現れます。
- 焦燥感、あるいは消耗感や緊張。
- 肉体あるいは頭脳を酷使したわけでもないのに生じる強烈な疲れ。
- 集中できない。
- 苛立ち。
- 筋肉のこわばり。
- 懸念を制御できない。
- 睡眠障害(入眠できない、眠り続けるのが難しい、休んだ気にならない、睡眠の質が低い)。
セラピストのGinger Poagは、不安発作を「将来起こり得る出来事についての懸念が存在している期間」であると定義づけました。時には、不安発作がパニック発作の前兆となる場合もあります。
しかし、不安発作は不安障害の症状というわけではありません。実は、不安というのは特定の刺激あるいは状況への自然な反応であり、この種の発作というのは不安という感情が強められた形態に過ぎないのです。
また、不安発作はよく、回避行動や過度の警戒といった行動パターンにつながります。例えば、社交不安によって不安発作を経験したことのある人物は、過去に自分を不安にさせたような場所あるいは状況を回避しようとする可能性があるのです。
パニック発作の症状
この発作は深刻な身体反応の引き金となり得ます。パニック発作を経験したことのある人の多くが、「自分は心臓発作を起こすのだろう」と考えがちです。事実、自分の身に何が起きているのか理解できておらず、119番通報をしてしまう人もいるほどなのです。大抵の場合、少なくとも以下のような症状が引き起こされ、発作は約10〜15分続きます。
- 死や危険が差し迫っているような感覚。
- 抑制力を失うのではないか、死ぬのではないかという恐怖。
- 急速で打ち付けるような拍動。
- 発汗。
- ふるえ。
- 息切れあるいは喉の圧迫感。
- ほてり。
- 吐き気。
- 腹部の痙攣。
- 胸部の痛み。
- 頭痛。
- めまい、立ちくらみ、あるいは失神。
- 痺れあるいは疼き。
- 離脱感。
パニック発作を起こしている間は、脅威が差し迫っているかのような感覚を覚えることが多いようです。そのため、助けを求める、今経験している状況から逃れようとする、などの反応が見られます。ただ、中には、人生で一、二度しかパニック発作を経験したことがないという人もいるようです。
これらの発作は普通、とてつもないほどのストレスあるいはプレッシャーの下で生じます。また、パニック発作が繰り返される場合、それはパニック障害の一症状の可能性が高いでしょう。何らかのトラウマ的な出来事が、次第にパニック障害を進行させていく恐れがあります。
不安発作とパニック発作の見分け方
不安発作とパニック発作の症状はかなり似ています。そのため、正しく見極めるのが難しいかもしれませんが、以下のヒントが役立つでしょう。
- パニック発作は普通、明確なきっかけなしで起こります。一方で不安発作とは、脅威を知覚した時のそれに対する反応です。
- パニック発作の症状は強烈かつ不穏で、自分自身から離脱するような感覚が起こることも多くあります。一方で不安発作の症状の強さは人によって異なり、軽度のこともあれば重度の場合もあります。
- パニック発作は突如出現しますが、不安による症状は数分間、数時間、あるいは数日間のうちに徐々に強さを増していきます。
- 最後に、パニック発作は数分間で消える一方、不安症状はそれよりも長期間にわたって存在し続ける可能性があります。
自分の発作の種類を勘違いしている患者は多数いるため、パニック発作と不安発作との違いを知っておくことは大変重要です。この混同が、多くの人が医学的サポートを受けられていない理由でもあります。
最悪の場合、患者が鑑別診断によってこれら二つを混同してしまい、本当は必要でない薬剤に依存し始めるというケースもあり得ます。そのため、専門家は絶対に両者の違いを理解しておかねばならないのです。