ギリシャ神話ヘルメス:神の使い
ヘルメスは、ギリシャ神話の中でももっとも多才な神のひとりです。非常に活発で常に動き回っていることから、交渉、悪知恵、境界、そして、境界を越える旅人の守護神とされていました。また、盗人、偽り者の守護神でもあり、死者の魂を導き、神の使いでもありました。
神話学においてヘルメスは、冗談好きで雄弁なたくましい若い男、そして美の象徴です。常に帽子を身につけており、足の先あるいは靴に羽がついていました。そのため、必要な場所にすぐに移動することができました。
また、ヘルメスは神や人間を眠らせ、死者の魂を黄泉の世界に導くことができる魔法のケーリュケイオンを常に持ち歩いていたと言われます。
ヘルメスは、ゼウスとプレイアデスのひとりであるマイアーの間に生まれた息子です。夢の長、門番、暗闇のスパイを経て、神の使いになりました。
ヘルメスの神話は、実は複数の神話が組み合わさってできています。また、自身が主人公でない神話にも非常に重要な人物として登場します。
ヘルメスとたて琴の話
ヘルメスはアルカディアのキュレーネーで誕生したと言われています。出生後数日経った時、ヘルメスはゆりかごを抜け出し野原まで出ました。さらに歩き続け兄アポローンが牛を遊牧する牧草地へと向かいました。そこで欲求にかられ、牛を盗み、近くの洞窟に隠しました。
盗んだ牛を隠し終わると、ヘルメスは家に戻ります。その帰り道、亀を見つけたことであるアイデアが浮かびました。それは、亀を殺して中身を取り出し、その甲羅に、牛の内臓から作った弦を張るというものです。ここからたて琴が生まれたと言われています。その後ヘルメスはゆりかごに戻り、眠りにつきました。
アポローンは家畜が盗まれたことに気づくと、予言の力を使い犯人を当てます。犯人がヘルメスだと分かると、それを告発しにゼウスの元を訪れました。ヘルメスの母マイアーは、ヘルメスはまだ無力の赤ん坊だとかばおうとします。しかしゼウスはそれを鵜呑みにはせず、盗んだものを元に戻すようヘルメスに言いつけました。
父親の言いつけ通り、ヘルメスは洞窟へ行き、盗んだ牛たちをアポローンに返しました。しかしアポローンはヘルメスが作ったたて琴に驚きました。
そして、たて琴と自分の飼っている牛を交換するようヘルメスに持ち掛けます。ヘルメスはこれに同意し、さらに杖を譲り受け、この杖を使ってお気に入りの武器となるケーリュケイオンを作ったのです。
ヘルメスの冒険
ギリシャ神話の中にはたくさんのヘルメスの冒険談があります。最も有名なのは、誰が見ても浮気性のヘルメスの父ゼウスが、妻のヘーラーに仕えるイーオーと親しい仲にあることを、ヘーラーに見つかった時の話です。
ヘーラーが2人の関係を知った後、ゼウスはイーオーを守るためイーオーを白い子牛に変えました。一方で妻ヘーラーは百眼の巨人アルゴスをつけ、誰もイーオーに近づくことがないよう監視させました。
その後、ゼウスは自分の愛人イーオーを解放するよう、息子ヘルメスに頼みます。神の使いヘルメスは巨人アルゴスに美しい歌を歌い、物語を聞かせ、もてなします。こうして眠らせることにより、父親にゆだねられたミッションを遂行したのです。
またヘルメスは、ペルセウスに翼のついた靴を授けた話においても重要な役割を果たしています。この魔法の靴は、ペルセウスがメデューサに勝つ決定打となりました。また、慣習としてペルセウスの魂を黄泉の入り口まで導いたのもヘルメスです。
また、トロイア戦争でもギリシャ人の側につき、非常に重要な役割を果たしました。ヘルメスは非常に愛され、たくさんの子孫をのこした神でした。一番有名な息子は自然と家畜の神パーンでしょう。さらに、隠された意味を解釈する「hermeneutics(解釈学)」は、ローマ神話でマーキュリーとも呼ばれる「Hermes(ヘルメス)」から派生した言葉です。
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Vernant, J. P. (2001). Mito y pensamiento en la Grecia antigua. Ariel.