ホドフォビアまたは旅行恐怖症っていったい何?
家や自分の暮らす街から、そして馴染みのあるもの全てから遠く離れた場所にいなければならないことに不安を感じる。外出している間に自分の身に何かが起きたらどうしよう、という考えに怯えている。列車や飛行機に乗ると吐き気がしたり汗が出てきたり、心拍数が早まったりする…。こういったものは非現実的に思えますか?しかし実は、このホドフォビアあるいは旅行恐怖症は、患者の生活全体に悪影響を及ぼす病気なのです。
もちろん、ほとんどの人が旅行を自分を豊かにしてくれる経験と結びつけて考えていて、できる限り頻繁に旅に出ようとしているのは事実です。日々のルーティーンから抜け出し、新しい場所を訪れることは、素晴らしいストレス解消法になり得ます。
しかし、中には旅行をそんな風には捉えられない人々もいるのです。彼らは、安全という感覚を与えてくれるあらゆるものを置いて旅に出るという考えに、本物のパニックを感じてしまいます。そうは言っても、時には例えば仕事や家族の問題などで旅行が避けられない場合がありますよね。
そのような状況でホドフォビアの人々が抱く不安感は、人を衰弱させるほどの極端な力を持っています。結局のところ、フォビア(恐怖症)というのは本人たち以外からしたら(そしてフォビアを抱える人を理解してあげられない人々からしたら)奇妙な現象に思えるものです。しかし、フォビアとともに日常生活を送らねばならない人にとっては、その恐怖心は破壊的なのです。それでは、ホドフォビアについてもっと詳しく見て行きましょう。
ホドフォビアあるいは旅行恐怖症:定義、症状、原因、そして治療戦略
ホドフォビアまたは旅行恐怖症は古くから存在し、人々の生活の一部になっていました。全ての人が安心して自分のコンフォートゾーンから離れられる訳ではありません。何らかの公共交通機関を使って自分の支配力が及ばない新たな未知の場所にたどり着くという行為は、旅行恐怖症に苦しむ人々を警戒させ、不安にさせ、そして怯えさせます。
ここで、これが『DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)』で特別なタイプのフォビアとして分類されているという興味深い事実をお伝えしておきましょう。これは不合理かつ身動きを封じるような恐怖心であり、患者の生活の社会的・個人的・職業的側面に制約を課す恐れがあります。
ただし、ホドフォビアによる影響の受け方は人によって多様です。特定の公共交通機関を使うことを恐れる人がいる一方、家から遠く離れて見知らぬ環境に行くことを考えただけで不安になるという人もいます。また、その両方が当てはまる人や、あるいは他にも様々な影響に苦しまねばならない人がたくさんいることは明白です。
旅行や移動を楽しめない人がいると聞くと嘘のように思えるかもしれませんが、一つ忘れないでいただきたいポイントがあります。それは、フォビアは23人に1人が経験するものだという事実です。この数字が示す通り最も有病率の高い精神疾患ですし、あなたにも何らかのフォビアによるダメージに苦しむ知人がいる可能性はかなりあるのです。
その症状は?
その他のあらゆる恐怖症と同じように、旅行恐怖症も多様な感情症状、認知症状、さらには身体症状によって特定することができます。では、最も一般的な症状をチェックして行きしょう。
感情面のサイン
- 自宅から遠いところに向かうために、公共交通機関のいずれかを、あるいは全てを使用しなければならないことへの恐怖。
- 移動中に何か悪いことが起こるのではないか、という疑念。
- 自分に安全を与えてくれるあらゆるものを自宅や生活の拠点に残したまま出かけることへの不安。
- 他人に自分の恐怖や不安を語ることへの羞恥心。
認知症状
- 旅に関連するあらゆる物事を上手く整理できない。例えば空港に到着した時や列車に乗ろうとした時に、頭が真っ白になってしまう、など。
- ネガティブなシチュエーションを何千パターンも想像してしまう。例えば、移動中に事故に遭う、道に迷う、荷物をスられる、ホテルの場所を見つけられない、など。
- 旅行前の数日間あるいは数週間は、旅行以外のことが考えられなくなる。
- 混乱、あるいはメンタルブロック。
身体症状
- 吐き気。
- 腹痛あるいは胃のむかつき。
- 嘔吐。
- 心拍数の上昇。
- 発汗。
- パニック発作。
何がホドフォビアまたは旅行恐怖症の原因?
フォビアの正確な原因を知るのは、場合によっては非常に困難です。フランスのティモーネ神経科学研究所で行われたものをはじめとする複数の研究により、こういった精神障害は以下の二つの根源のうちどちらかに基づいて生じる傾向が高いことが示されています。
- フォビアはトラウマに端を発する可能性があります。例えば、以前の旅の途中にテロリスト攻撃の被害者あるいは目撃者になった、などの痛ましい経験によってホドフォビアあるいは旅行恐怖症が生じる場合があるということです。
- 一方で、時には、具体的なあるいは明白な原因が無いのにフォビアが始まってしまうケースもあります。遺伝・家族的要因や環境要因、あるいは発達に関わる要因がフォビアの発症に大きく関わっているようです。
ホドフォビアの治療法は?
ホドフォビアは、飛行恐怖症など、その他のフォビアと関連して生じる傾向があります。極端なケースでは、アゴラフォビア(広場恐怖症)を合わせて持っている人もいるほどです。ただし、一番多いのは全般性不安障害(GAD)から派生しているケースです。
GADを抱える人々は、自身の手では扱いきれないと感じるような複雑な状況に頻繁に陥ってしまいます。それを踏まえると、正確な診断を受けることがとても大切だと言えるでしょう。治療に関しては、同時に複数のアプローチを採用するのが望ましいです。例えば不安感を和らげるための薬物療法は、その他の治療オプションと組み合わせて行うと効果を発揮してくれます。
心理療法も同様に有効です。心理士は、以下のような戦略を採用する場合があります。
- フォビアの起因となるものへの漸進的曝露。曝露療法は、不安を引き起こす状況に患者を近づけることによって感情・思考マネジメントを助けるというものです。この手法は、認知行動療法の一環として行われるとより一層効果が期待できます。
- 認知再構成法。これは、患者の精神を疲弊させるような思考や思想を修正するために行われます。
- リラクゼーションと呼吸のテクニック。
最後になりますが、他人の恐怖心を軽んじないようにすることは非常に重要で、特に、その恐怖心が本人の生活に悪影響を及ぼし始めている時には尚更です。全てのフォビアの背後には、治療の必要な不安障害が隠れています。適切な治療がなされなければ、その人の正常に生活を送る能力が阻害されてしまうでしょう。
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- Singh, Hemendra & Awayz, Hannah & Murali, Thyloth. (2017). An Unusual Case of Phobia: Hodophobia. The International Journal of Indian Psychology.