不安の脳への影響:疲労の迷路
不安はあなたの脳に多大なる影響を及ぼします。コルチゾール、アドレナリン、そしてノルアドレナリンのすべてがあなたを警戒させ、自分を守ろうとさせます。不合理な思考に心が埋め尽くされてしまうまで、そう長くはかかりません。恐怖が押し寄せてきて、あなたは身動きが取れなくなってしまいます。様々な感情で、冷たく月のない夜のように目の前が真っ暗になってしまいます。正直に言って、不安ほど激しい心理状態は他にそう多くありません。
人工統計学の研究で、慢性的な不安とともに生きている人が実はたくさんいるということが分かっています。そういう人は、現実世界を不安を感じることなく生きられず、それを処理することもできません。怒れる牡牛のような不安に体当たりされているけれど、どうしたらいいのかわからないのです。また、状況不安と呼ばれるものを抱えている人もいます。人前で話したり、面接や試験を受けたり、人と関わることにさえ不安を感じてしまいます。こういったことにより、脳が危険を示す赤信号を点灯することがあるのです。
「恐怖や失敗のために動けなくなってしまってはいけない、さもないと自分を駆り立てることはできない。」
―アーノルド・シュワルツェネッガー―
私たちは誰もが皆、不安を経験したことがあります。これは人間の自然な反応なのです。適切な量なら、自分の目標に向かって背中を押してくれるものにさえなります。問題なのは、手に負えなくなってしまうことが本当にたくさんあるということです。 不安があなたの人生をコントロールするのに長い時間はかかりません。時にそれに気づかないこともあります。そういった時、全てが飲み込まれ、まるでカンディンスキーの絵画のような混乱の中に放り込まれてしまうのです。
不安の脳への影響
不安の脳への影響について本当に理解したいと思ったら、まずわかっておかなければならない重要なことがあります。それは、不安とストレスの違いを理解することです。例えば、ストレスはいくつかの外部要因により引き起こされる生理学的プロセスに関係があります。つまり、そこにはいつも何か特定の原因があるのです。それは仕事でのプレッシャーかもしれませんし、やることが多すぎることや、家庭での問題かもしれません。基本的にこういった刺激に対処するための「材料を持っていない」ということに気づいたときにストレスは現れるということです。
一方不安は、もっとずっと複雑なものです。多くの場合これはストレスの副産物であるというのは事実かもしれませんが、理由が全くわからないのに不安を感じるということもたくさんあります。それは内面のどこからか来ています。それは辛いときに何度も何度も出てくるものです。それは脅威(それが現実のものでもそうでなくても)から逃げたりそれと闘うためにあなたを準備させる生理学的反応なのです。
これが不安とストレスを分けるものです。そのため、不安はコントロールするのがずっと難しくなります。それは不安を感じているときに脳の中で起こっていることの為です。それについてこれから掘り下げていきましょう。
偏桃体
偏桃体とは脳の一番後ろにある小さな構造です。それはあなたの周りの環境から来る感覚信号すべてを処理し、解釈する部分です。脅威や、何か危険なものから身を守らなければならないというときに脳に警告を送る部分でもあります。これはつまりクモや暗闇、高い所などの脅威に対する直感的(そして時に不合理な)センサーなのです。
海馬
海馬は感情の記憶に関する脳の一部です。不安が長く続く激しい影響を脳に与えると、この部分は悪影響を最も多く受ける部位の一つです。すると海馬が小さくなり、それは多くの深刻な副作用をもたらします。記憶喪失や、集中力の欠如、外傷後のストレスなどは、そのとてもよくある問題の例です。最後に挙げた外傷後ストレスは、虐待や常に大きな恐怖、不安、危険を感じてきた子どもによくある問題です。
実際、つい数か月前に学術誌「Neuron(ニューロン)」に、とても興味深く、そして希望を持たせてくれる発見が掲載されました。研究者により、不安を司る細胞は全て海馬に存在するということが発見されたのです。そこで、この問題を治療するためのより良い薬の開発に、この発見を利用できるのではないかと考えているのです。
コルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリン
落ち着けない、警戒状態にある、筋肉がこわばる、そして頻脈などは全て、ある特定の神経伝達物質の副作用です。不安の脳への影響は、完全に紛れもない(そして恐ろしい)コルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンの組み合わせから来ています。
まず偏桃体が危険を察知し、これらの神経伝達物質があなたに反応させます。あなたの脳は逃げること、あるいはその他の方法で反応することで自分を守ろうとします。その一つが、血液を筋肉により多く送ることです。それにより心拍数が上がり、肺により多くの空気が送られます。
もちろん、この警戒状態は本当に役に立つものです。その脅威が「現実」ならば、です。しかしそうではない場合、あなたは常にこの心理プロセスを稼働していることになり、そこから問題が発生します。消化不良や、頭痛、高血圧、そして脳血管性の問題のリスクなどが出始めるのです。
不安の脳への影響に対してできること
最初に触れたように、不安は生理学的プロセスです。ですので、自分に「落ち着いて、だいじょうぶ」と言うだけでは十分ではありません。脳が危険があると判断した場合、物事を論理的に処理しようとすることはあまり役に立ちません。ですので、生理学的な、身体的な側面から始めることが大切なのです。
- 危険がないのだということをあなたの身体に納得させましょう。やり方は、深呼吸などのリラックスできることをすることです。身体を「一時停止」させ、脳を減速させるのです。
- 不安を利用できるようになりましょう。それをコントロールするのは意志の力ではありません。この心理的・生理学的状態を脳から消去することはできないからです。あなたがやらなければならないことは、これを乗り越え、上手に利用することです。アートセラピーなどは、不安を可視化することでこれを達成するのにとてもいい方法です。陶芸、絵画は自分の不安を形にするのに一番いい芸術の形です。それにより、どうしようもない怪物を、ずっと小さくて、怖くなく、コントロールできそうな生き物に変えることができるのです。
- 新しい習慣や新しい日課。毎日の日課の中で何か違うことをすることも、全てを変える可能性を持っています。散歩に行ったり、毎週コンサートに行ったり、新しい人に会ったり、ヨガのクラスに参加したり…こういったことすべてが脳の警戒システムを変えてくれ、ものごとを違ったように見せてくれます。
最後に、あなたが不安に負けているなら、躊躇せず専門家にかかりましょう。恐怖と共に生きるべき人はいません。人生を暗いものにしてしまう慢性的な不安の囚人として生き続けるべき人はいないのです。