意識的な呼吸が脳にもたらす効果
呼吸は全ての生き物が自然に行っていることです。鼻を使って呼吸する人もいれば口で呼吸する人もおり、さらに鼻と口の両方を同時に使って呼吸する人もいます。全ての人がそれぞれの方法で呼吸を行なっているのです。皆さんも自分の呼吸に気を配ってみると、常に呼吸法が同じというわけではないことに気づくでしょう。そこで本日は、意識的な呼吸が脳にもたらす効果について見ていきましょう。
呼吸が重要なのは、どんな時でも自分の身体の物理的、そして情緒的な状態を呼吸を通して知ることができるからです。そのため、呼吸が重い場合にはおそらくストレスを受けた状態にあるか、怒りを感じているか、あるいは幸福過ぎる状態なのだとわかります。しかし呼吸が深くてゆったりとしている場合には、それはおそらく心の平和やリラックス状態を表しているのです。
横隔膜の動き方は、自分の今の状態を知るための手がかりとなってくれます。これを念頭に置きつつ、呼吸がどう脳に影響を与えるのかについて理解していきましょう。
“心を自らの肉体に迎え入れられるよう、深く呼吸しなさい”
意識的な呼吸と無意識に行われる呼吸の違い
無意識的呼吸あるいは鎖骨式呼吸としても知られる通常の呼吸は、体内の気体を入れ替えるために行われる無意識のプロセスです。これにより、細胞代謝に必要な酸素を身体に取り込むことができます。
また、呼吸は身体の自律的機能を調整している自律神経系(ANS)とも関連しています。
一方で、意識的な呼吸あるいは腹式呼吸は呼吸を速めて呼吸の効率を上げるだけでなく、脳にも影響を与えてくつろぎや落ち着き、そして情緒的な安定といった状態を作り上げる効果があります。
意識的な呼吸における主な違いは、胸式呼吸から腹式呼吸へといかに無意識に移行するかという点です。
腹式呼吸は身体の酸素レベルと圧力を向上させて肺内の全ての肺胞を使って肺を満たし、体内から大量の二酸化炭素を放出させます。また、身体のくつろぎ状態や落ち着きを司る副交感神経を活性化させる役目も果たしています。
“感情は風の吹き荒れる空に浮かぶ雲のようにやって来ては去っていきます。意識的な呼吸が私を繋ぎ止めてくれるのです”
-ティック・ナット・ハン-
意識的な呼吸が脳にもたらす効果
呼吸が脳に与える影響は多岐に渡ります。意識的な呼吸をすることで細胞や組織での酸素の取り入れ量が増加し、組織圧が調整され、細胞の生存に関わるアデノシン三リン酸(ATP)の合成が促進されて呼吸容量を増やすことができます。
これが起こるのは、意識的な呼吸により血圧が適切な状態になるからです。さらに、脳の血液量が増えてニューロン間の結合が向上します。
また、意識的な呼吸が瞑想の手段として使われると脳が大きくなる効果があることがいくつかの研究で示されている点にも触れておきましょう。
短く言えば、呼吸による脳への効果とは、注意力や感覚情報の処理に関わっている前頭前皮質に変化をもたらすことです。
“深い呼吸は深い思考を可能にし、浅い呼吸により思考も浅くなる”
-エルシー・リンカーン・ベネディクト-
意識的な呼吸は、迷走神経も活性化させます。また、息を吸ったり吐いたりする度に副交感神経系の活動を増加させ、交感神経系の活動を減らします。では、これがどうリラクゼーションにつながるのでしょうか?実はこのわずかな変化がアセチルコリンという脳にリラックスするよう伝令を伝えてくれる神経伝達物質を増加させるのです。
まとめると、意識的な呼吸は体内の適切なバランスを見つけるために役立つということです。さらに、神経内分泌や消化、血液循環、そして神経系といった機能の働きを改善してくれる効果もあります。
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