子どものチック:特性と治療
チックは、不随意に繰り返される、予測のできない不規則な筋運動で、意志により一時的にコントロ―ルできるものです。また、子どものチックはストレスや危険によって悪化する傾向がありますが、集中や気晴らしにより和らげることが可能です。
チックは、子どもに起こりやすい運動障害のひとつです。チックが不随意にあらわるということが最初の衝動のようにみえますが、実はこの運動は衝動を和らげるために起こっています。速く繰り返されるチックを、子どもはコントロールできないことが突然起こったと表現します。
どのように始まるか?
チックは、4~7歳の間に始まることが多いようです。多くの場合、瞬き、鼻をすする、喉を鳴らす、咳などの繰り返しから始まります。また、3対1の割合で、女の子より男の子によく現れます。
チックは、頻度や重度から目に見えるものです。しかし、一過性のチックを患う4~6歳の子どもの多くは、病院に行くことがありません。およそ55~60%の子どもは、チックに気づかないまま思春期や青年期を迎えます。
20~25%で、チックの頻度は減り、残りの20%は大人になっても続きます。中には、チックが悪化しているという大人もいます。
子どものチックの臨床特性
次の特性により、この運動は定義されます
- 不安、疲れ、病気、激しい感情、テレビなどの画面の見すぎにより悪化します。
- 認知機能を必要とするような興味のあるタスクを行っている間は、チックは減少する傾向にあります。
- 運動はチックを減らし、身体的活動を行っている間は、特に減少します。
- 重要な行為や活動の邪魔になることはなく、また、転倒や怪我につながることはほとんどありません。
- 遮断性チックと呼ばれるものがあり、これは上記の原因になることがあるため、病院へ行き原因を明らかにすることが必要です。
- チックをもつ人を撮影すると、チックが顕著になります。
- 機能不全家族やパーソナリティ障害の人に起こりやすくなります。
- 子どもによっては、顔に生じるチックにある種の快感を得ます。
- 本人はチックを抑えることはできないと感じます。
- いつチックが起こるか分かりません。
チックの分類
運動性か音声性、そして単純性か複雑性に分類されます。単純性チックは、急性の動きや短期間で繰り返される音が特徴です。複雑性チックは、調整された不適切な連続する動きです。例えば、繰り返し頭を揺らす、その他繰り返しの動き(反響動作)、いやらしい動作(汚行)などです。
複雑性音声チックは、不適切な場面で起こります。例えば、音節の繰り返し、人の言葉の妨害、言葉の繰り返し(同語反復)、聞いた言葉の繰り返し(エコラリア)、嫌らしい言葉(汚言)などです。
DSM-5 によるチックの分類
- 一過性チック障害(仮性):1年未満の動作または(および)音声チック
- 慢性チック障害:1年以上続く、ひとつまたは複数の動作または音声チック
- トゥレット症候群(TS):1年以上続く、音声チックと複数の動作チック。症状が大きくなったり、同時でなくてもこれに当たる。
子どものチックに併存するもの
チックをもつ子どもは、衝動のコントロールが難しいことがよくあります。神経心理や動作機能にわずかな違いがあり、精神疾患や発達併存症(ひとつまたは複数の状態や症状が生じるもの)の有病率が高いです。次のような状態があります:
- ADHD(30%~60%)
- 強迫性(30%~40%)
- 不安(25%)
- 破壊的行動(10%~30%)
- 気分障害(10%)
- 強迫性障害(5%~8%)
- 自閉症スペクトラム障害(5%)
- 運動協調の困難
- 発作的怒り
病因
チックは複雑な多遺伝子病因があり、多くの場合先天性です。一卵性双生児では、87%の確率で両者に発生します。
これまで、チックは、行動やストレスに関係すると考えられ、「神経性習慣」「収縮」と呼ばれてきました。現在、チックは神経性の動きで不安により悪化するものの、不安が原因ではないと分かっています。
病因になっているメカニズムは脳内の皮質と大脳基底核(前頭線条体視床回路)の間にある複数の神経ネットワークにあります。また、大脳辺縁系や中脳、小脳など脳の他の部位も関わります。受容意識や中央感覚運動処理の異常もまた指摘されています。
子どものチックの治療:行動介入
行動介入には様々なテクニックがあります。子どもが必要とする治療は、最初の評価、治療に対する反応、その間に起こる出来事によって異なります(Bados, 2002)。
習慣逆転法(HRT)や曝露反応妨害法(ERP)は、証明に基づいた介入です。HRTやERPは重症度と頻度を組み合わせたスコア(Yale Global Tic severity score)で40~50%軽減されます。
習慣逆転法
アズリンにより提唱された習慣逆転法(Azrin and Peterson, 1988)は、患者にチックが現れる前に衝動を認識させる方法です。そして、発生の可能性を軽減させる競争的反応と呼ばれる行動を起こすことを学びます。
これには、11の主なテクニックがあり、5つの段階に分けられます。
意識:チックが現れる前に、刺激や状況を意識します。
- チックを具体化し、定期的にこれを行う
- チックが表出した時、検出するために、自己観察法を学ぶ
- 早期発見―チックを表出させる感覚を検出するよう訓練する
- チックが起こりそうな危険な状況を検出する
リラックス
チックが表出しないよう反応する訓練を行う。この訓練は、次の目的で行われます。
- チックの表出を防ぐ
- 数分間先延ばしする
- チックやその特性が表出する状況に対する意識を高める
- メソッドは社会的に受け入れられるものでなければならない
- 日々の活動に適合しやすいものでなければならない
- チックを起こす「敵」の筋肉を強化し、不随意運動を起こさないようにする
- この訓練には、チックの動きに反する筋肉を同等に緊張させることが含まれる
動機づけ:これは、本人と家族の両方に関係します。3つの基本的動機づけが含まれます。
- チックの悪い影響について調べる
- 社会的支援を受ける。近しい人も一緒になって、この手順を遂行するために必要な助けがこれに含まれます
- 外でこの訓練法を遂行する
一般的訓練:第1段階で認識された様々な危険な状況で訓練を実施することをイメージすることがこれに含まれます
反応妨害と曝露療法
チックへの反応や曝露を避けることができるようになるには、条件づけが必要です。このセラピーでは、チックを表出させることなく(反応妨害)、チックのニーズを感じ、それに耐える(曝露)ことを強化します。このセッションの決まった期間で、セラピストは患者にチックを避けさせます。そして、その期間を記録します。
達成すべき時間は決められていません。患者は各セッションで支援を受け、チックをコントロールできる時間は徐々に長くなっていきます。
定期的、体系的に反応妨害と曝露療法を用いることで、患者はチックの衝動性を抑えることを学びます。時間とともに、チックをコントロールする力は強くなります。また、セッションの中で、患者は衝動の強さを尋ねられます。話すだけですが、これは患者をチックへの恐怖にさらすことになります。
子どものチックの薬学療法
薬物の使用はチックの特性により決められ、一般的に、医師は、重度のチック、痛みや怪我の原因となるチックに薬を処方します。最近の研究によると、まず、クロニジン(シナプス前α2アゴニスト)が使われます。
一方で、成人には、抗精神病薬や抗ドーパミン薬が効果的なようです。子どもには、アリピプラゾールの効果が臨床実験により支持されています。
チックの治療において、ベンゾジアゼピン系はあまり処方されませんが、急性で重症のケースには処方されます。チックが生じた時の不安の緩和に使われることがありますが、他の問題を生じさせる可能性があるため、あまり好まれません。
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- Aicardi J. Other neurosychiatric syndromes. In: Aicardi J (ed). Diseases of the nervous system in childhod. New York: Mc Keith Press; 1992. p. 1338-1356
- Moreno Rubio JA. Tics en la infancia. Rev Neurol 1999;28(Supl 2):S 189-S191.