恐怖、悲しみ、不満:ロックダウン中よく見られる感情
恐怖、悲しみ、そして不満。これらは自宅での隔離生活中最もよく見られる3つの感情であると言っても間違いではないでしょう。こういった感情は、静かに窓から外を覗いていると現れる好まれざる客と言えるかもしれません。また、考え過ぎないように色々と努力している時に限って襲ってくることさえあります。
これら3つは、この困難な状況の中で私たち全員を団結させるような、至って正常な精神状態です。
専門家たちはよく、幸せに基づいた自助本や論説などが私たちをネガティブな感情に耐えづらくさせてしまったところがある、と主張してきました。彼らによれば、私たちはどうすれば幸せになれるのかについては教えられてきましたが、苦悩や恐怖に襲われた際どうすれば良いかを伝えることは忘れさられているそうです。
しかし実際には、人類は常にこういった苦悩を伴う精神状態やその感情を非常によく把握して生きてきました。人は皆、改善できる場合もあれば悪化してしまう場合もあったにしろ、それぞれが独自のやり方でそういった感情に対処してきたのです。
苦しみは私たちにとって真新しいことではありません。しかし今回に関しては形態が少し異なっており、私たちは圧倒されてしまっています。各人がそれぞれ特別な方法で今を生きようとしています。
一部の人々は、家族が近いところにいて健康で、仕事も守られていることに幸運を感じているでしょう。しかし一方で、もっと困難な状況に陥り、喪失感や先行きの見えない不安な気持ちと共に一日中過ごさねばならない人々もいます。
私たちがどこの国の出身だろうと、置かれている状況がどんなものであろうと、全員が恐怖や不安、そして悲しみを多かれ少なかれ感じています。
コロナウイルスは私たちに計り知れない痛みの傷跡を残しつつあり、この現実を忘れることを不可能にさせたのです。
恐怖、悲しみ、そして不満:外出制限中最もよく見られる感情
人類の生活は、非現実的で恐ろしいニュアンスと共に語られる物語のような段階にまで来ています。そしてこの物語は非常に不愉快な作家によって描かれているようで、いざこのことについて考えてみると、今起こっている全てのことに対して自分には成すすべがないことを思い知らされます。
しかし一つ理解しておくべきことがあります。それは、自分の周囲の環境を自分の手で変えることはできなくても、自らの反応の仕方や行動を制御することは可能だ、ということです。
そのやりようによっては、今後より適切なアプローチを取り入れていくことが可能になります。昨今理解しておくべきキーワードは、「受容」、「変容」、そして「レジリエンス」となるでしょう。
有名な人間性心理学者アブラハム・マズローが述べたように、人生とは果てしなく続く成長過程であり、その中には痛みを伴うような試練も多くあります。しかし、時にはそういった苦しみが普通よりも激しく、さらなる根気が必要になる時があるのです。そのため、私たちはこれに備えなくてはなりません。
まず向き合うべきはじめの一歩は、自分の心の中の感情世界を理解することです。脳は、英語やスペイン語、あるいは中国語を喋る訳ではありません。脳は感情という言語で語るので、私たちはそれを理解しなければならないのです。
そして、この制限期間中に自宅で過ごす際に付き合っていかねばならない、程度の差はあれど最も広く見られる感情が、恐怖と悲しみ、そして不満です。
恐怖に目を光らせる
恐怖は私たちの心に侵入しようと企んでいますので、心のドアの前を見張り続けるようにしましょう。この感情を抱くのは正常なことであり、周囲で巻き起こるあれこれに恐れを感じてしまうのは仕方のないことだ、と受け入れてください。そして恐怖が心の中に入ってこられないよう、ドアをできる限りしっかりと閉めておきましょう。恐怖を感じるのは正常なことです。しかし、不合理な恐怖は心に忍び込んでパニックを増大させてしまいます。まだ起こっていないことに対する恐怖心には屈しないようにしましょう。
恐怖心が自分の手には負えないと感じたら、この感情に集中し、合理化し、信頼できる人に話してみてください。
心理学では、ディスポジション効果と呼ばれるメカニズムがあり、これを考慮しておかねばなりません。このメカニズムにより、見通しのつかない不安や恐怖が溢れた状況で生きている人々は、目にしたデマや受け取ったネガティブなメッセージ、そして頭に浮んだ根拠のない考えを強化させてしまうことが多くなります。
私たちの脳は、恐怖を感じると合理的でバランスのとれた考え方ができなくなってしまうということを覚えておきましょう。脳がこの危険な感情で一杯になってしまったら、私たち自身で制御する必要があるのです。
悲しみ、熟考の屋根裏部屋
恐怖、悲しみ、不満…。これらは現在私たちが共通して最もよく抱きやすい感情ですが、ロックダウン期間中であってもそれぞれの感情に意義と目的が存在しています。最善の対策はこれらの感情を受け入れることですが、だからといって完全に自分を支配されてしまうほど強力な力を与えすぎてはいけません。
こういったケースでは、悲しみは精神の屋根裏部屋のような役割を果たしており、私たちは折に触れてそこへ登っていかねばなりません。この感情にはたくさんの意味合いがあり、何を自分に伝えようとしているのか知るために開かねばならないタンスのような感情なのです。今回のような状況では、私たちが感じてしまう感情は正常なものであり、悲しみとともに過ごす時間があっても問題はありません。
亡くなってしまった人を思って心が痛んだり、他の人々のために苦しく感じることがあるでしょう。また、明日何が起こるのだろうかと考えて悲しみに沈んでしまう時もあるかもしれません。自分の家族についても、親が病気になってしまうのではないかという不安や、我が子の境遇を考えて可哀想に思ってしまいます。こういった心の中の現実を受け入れることは非常に大切です。
常に100%調子の良い状態でいなければいけないわけではありません。そのようなことは不可能です。こういった感情を抱く自分自身を受け入れてあげましょう。
不満:どう受け流すか学ばねばならない感情
恐怖、悲しみ、不満という3つのよく見られる感情の中で、最もダイナミックに影響が出やすいのが不満です。これについてより深く理解するためには、この側面の重要性を理解する必要があります。
現在のような状況下では、不満を感じてしまうのは全く正常なことです。ライフスタイルは変化し、個人的な生活も仕事面でも、経済に関しても先行きの見えない不安が私たちを蝕もうとしているのです。
多くのことが私たちを心配にさせる一方で、怒りを感じさせるような物事もたくさん出てきます。しかし、不満も怒りを引き起こすきっかけになるので注意しましょう。不満のせいで一日のうち何度も嫌な気分になってしまい、心が鬱憤や緊張などで溢れてしまう恐れもあります。
こういった感情を上手く活用するために、一つ理解しておかなければならないことがあります。それは、怒りも不満も、(もっと内省的な悲しみとは正反対に)行動を呼び起こす感情だということです。
ここでの秘訣は、この感情を適切な方向に向けることです。不満は、自らに変化を促す感情なのです。自分を煩わせているものに対して、工夫と創造力を駆使して対応することが求められています。
また、想像力も発揮しましょう。もし抱えている不安が仕事に関するものなのであれば、運命論的なものに惑わされずに、プランを立てたり今後の選択肢について考えてみてください。頭脳を、オープンで柔軟で、ポジティブな考えが流れ行くアイディアの小川に変えてみましょう。こうすることで初めて恐怖や悲しみ、そして不満を受け流せるようになります。
このように感情のコントロール法を学び、自分自身のケアを怠らないようにしましょう。今こそ自らの心の健康を分析すべき時です。