見えない患者:若者と慢性病
思春期は、かなり重要な時期であると言えます。時系列的な年齢と成熟度(肉体的及び精神的)に解離があることもよくあります。そして、この段階を終えた18~25歳あたりまでを、「新興成人期」と呼ぶことがあります。
思春期というこの時期、慢性的な病気を抱える若者は、小児科から一般内科へ移行していきます。すべてが不安定で、リスクを伴うようなふるまいに興じてしまう可能性も高まります。これこそ、専門家たちが「見えない患者」と呼んでいる若者たちです。
現在、この年齢層に特化した特定の健康サービスはありません。その為、「見えない」と称されているのです。確かに、この年齢グループのニーズは、他の年齢グループ(子ども、成人、お年寄り)のものと比べて異なります。
見えない患者の慢性病
慢性病には、厳しく複雑な治療のルーティーンが存在しているため、多くの場合、病気やそれに伴う状況は受け入れることが困難です。同世代の健康な人々がより多くの自由と自立を謳歌するのに対して、病気を患う患者にはこれが叶いません(ベル、フェリス、フェントン、フーパ、2011)。
それぞれのケースが独特で、病気の認知的な影響や要素も出てくるかもしれません。例えば、発作の治療に使われる薬によって鎮静状態になったり、喘息やガンの治療に使われる薬はいらだちや集中力の低下を引き起こします。
新興成人期への移行の間に、思春期の子供に自らの主導権をとるよう促したり、親の役割を変えるように促進するだけでも、交流、診断、治療が改善します(ヴァン・スター、 2011)。
様々な研究を見ていくと、私たちの医療システムは、見えない患者のニーズと特性には不十分であることがわかりました。また、成人の治療の施設では、専門家の導きや教育を必要とする、この年齢層の複雑な発育ニーズへの準備が整っていません。研究では、見えない患者が求める2つのことについて言及しています。心理社会的サービスへのアクセスと、自分の人生における自由です。
見えない患者の未来
ここで朗報です。病気を持っていても、成人期へうまく移行させる手助けをすることは可能です。例えば、自己マネージメントスキルを育てるツールや、変化の過程に関する情報を与えることができます (ケネディー、スローマン、ダグラス、セイワー、 2007)。
成人期への移行の主な方法を見てみましょう。
- 社会環境的な枠組みから取り組む。このためには、ヘルスケアの提供者、患者、介護者との間で責任を共有する必要があります(オクラホマ、 2014)。
- 家族の対立、病気に関わる経験に対処して、大人の医療に対する期待を変える。これにも、やはり関わる人たち全ての協力が必要になります(シュワルツ、 2013)。
- 子ども時代から青年期に向かって、少しずつ患者の責任を増やす。例えば、自分たちで病院の予約を取らせることで、自分自身の健康への責任をとることを促進して、達成感を与え、自尊心を向上させます(ベル、フェリス、フェントン、フーパ―、2011)。
- 健康問題を抱えた若者をケアして管理する人を育てる。
- 資金問題、時間の不足、高齢者のヘルスケアのニーズを解決する(米国小児科学会、アメリカ家庭医学会、米国内科学会、Transition Clinical Report Authoring Group〈移行期医療レポート作成会〉、2011)。
- 将来の健康ケアに関する、小児科医、思春期の患者、親の不安に対処する。
- 子どもあるいは青年と家族を評価する適切なツールを開発する。
思春期は、複雑な段階です。感知が難しい病気であればなおさらです。それゆえに、このような若者に寄りそうことが重要です。そうすることで、迷子になって、落胆して、希望を失ったように感じる青年期に達した見えない患者になってしまうことを防げます。
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