ナルシシスティック・サプライとは?
ナルシシスティック・サプライとは正確には何なのでしょうか?定義付けの前に、まずはナルシシズムという概念について分析してみましょう:ナルシシスティックな人物とは、どのような人を指すのでしょうか?
DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、自己愛性パーソナリティ障害を、誇張性(理想化や行動において)が支配的なパターンとして定義しています。ナルシシストは、常に他者からの賞賛を求め、共感心が欠如しています。成人期の初期に始まり、様々な文脈の中で自分を誇張したいという感情や、自分は特別で独特な存在であるという思い込みという形として現れ、他人からの賛辞を必要以上に欲します。
注目すべきは、精神科医のオットー・カーンバーグによると、ナルシシスティックなパーソナリティはスペクトラムであり、正常な範囲から病理に至るまで、全ての人に連続体として分布している(自己愛性パーソナリティ障害、DSM-5より)という点です。
それでは、ナルシシストとナルシシスティック・サプライについて、頭に入れておくべき側面について詳しくみていきましょう。
ナルシシストの最終目的、自分自身の快楽
ナルシシストは、対人関係を巧みに利用し、他者の気持ちを思いやることなく常に彼らから欲しいものを手に入れます。彼らの第一の目的は、自分自身の快楽なのです。他人は皆、彼らにとっては道具でしかありません。
基本的に、自分たちの周りの人が困難な状況を経験していようと、プライベートな時間を必要としていようと、ナルシシストは気にしません。彼らは、たとえ相手のニーズを見落とすことになろうとも、自分自身のニーズを満たすことしか頭にないのです。
ナルシシスティック・サプライとは?
ナルシシスティック・サプライとは、オーストリアの精神分析家オットー・フェニケルによって最初に導入された精神分析に関する概念であり、ある個人の自尊心にとって必要不可欠となる環境の中からその人物によって引き出されるある種の賞賛や、対人的なサポート、あるいは生活の糧などを指す用語です。
これを踏まえてオットーの定義に従うと、ナルシシストは自分一人では手に入れることのできないものの供給源となってくれるような人間を必要としている、ということです。この”供給”源は、彼ら自身の延長、言い換えると、彼らの一部へと変わっていきます。
このため、ナルシシストの自己とサプラ(供給源)の自己との間に境界線は無く、サプライたちは自分たちのように感じ、考え、行動する存在だと信じきっています。つまり、サプライには彼ら自身のアイデンティティは無い、ということです。ただナルシシストを喜ばせるために存在しているということになります。
ナルシシストは、自らの低い自尊心を調整し、”自己”を維持するためにサプライを探し求めます。したがって、彼らには自分たちが尊大で優れていて、独自で特別な態度の持ち主であるという自己へのイメージを常に正しいものだと確認する必要があるということになります。しかし実は、その防壁の内側にいるのは自尊心が低く、他者からのサポートが必要な不安定な人間なのです。
ナルシシストは他人からの反応を得たがる
『Journal of Personality and Social Psychology』で発表された記事の中で、Mitja Backが非常に興味深い主張をしています:「初めて会った際に社交相手に感じる魅力は、長期的な関係性の中で自分を幸せにしてくれるようなものである必要性は無い。ナルシシストが明るくて魅力的な一面を持っていようとも、そこに暗雲が立ち込めるのは時間の問題なのだ。つまり、ナルシシスティックな尊大さと、弱さ(反応性)という二つの異なる次元の特性が存在しているということだ」
言い換えると、ナルシシストはおそらく欲しいものを手に入れるために自らの最も魅力的な一面を見せ、それでも相手から期待するような反応を得られないと「醜い」一面を見せ始めるとだろう、ことです。そして一旦欲しいものを手に入れた後は、彼らは興味なさげに振舞ったり距離を置いたり、あるいは怒ったりすることがあります。
彼らの態度の変化には、相手からの反応を引き出すという目的があります。ナルシシストが期待するような行動に繋がる反応です。例えば、ナルシシストが誰かと特定の日に会う約束をしていて、その人物が行けなくなってしまった場合、ナルシシストはその人とは疎遠になります。彼あるいは彼女からは欲しかったものを手に入れることができなかったためです。彼らにとっては、自らのニーズが、他の人のニーズよりも優先されるのです。
あなたもナルシシスティック・サプライ?
ナルシシスティック・サプライ自身が、自分の身に何が起こっているのか気づいていないこともあります。そのため、もし自分あるいは知り合いがナルシシストの犠牲になりそうだと感じている場合には、以下のようなことを自分自身に問いかけてみると良いでしょう:
この人物との関係性の中で自分が感じることや考えることに本当に意味はあるのだろうか?パートナーのニーズが私自身のニーズより優先されているのではないか?私がもし彼らの思い通りに行動しなかった時、距離を置かれたり怒ったりするだろうか?
こういった問いの中から、自分がナルシシスティック・サプライかどうかを判断することができるかもしれません。自分のニーズがあまり重要視されていないと感じるのであれば、その人物との間にいくらか境界線を設け、ぞんざいな扱いを受けたりしないように自分自身を守り始める方が良いでしょう。あなたもあなたのニーズも同じように重要であることを忘れないでください。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Emmons, R.A.(1987). Narcissism: Theory and measurement. Journal of Personality and Social Psychology, 52, 11-17.
- Kernberg, O.(1970). Factors in the treatment of narcissistic personality disorder. Journal of American Psychoanalytic Association, 18, 51-85.