なぜ元恋人について考えるのをやめられないの?
なぜ人は元恋人のことを考えるのをやめられないのでしょう? 時には、記憶や苦しみをシンプルに消し去ってくれる魔法のボタンのようなものが欲しくなる時がありますよね。ただそのボタンを押せば激しい感情が和らぎ、痛みを伴うような形で頭の中に侵入してくるその人物を食い止められたらどれほど素晴らしいでしょうか。恋愛や失恋は時折、脳内に居座って強迫的かつ人を疲れさせるような精神状態を生じさせることがあります。
辛い気持ちを抱いていながらも、痛々しい恋愛をきっぱり終わらせることのできない人物を、誰もが1人は知っているか会ったことがあるはずです。返信をもらうのを狂おしいほどに切望して熱心にメッセージを送る人、現実を受け入れられず、元恋人のソーシャルメディアを毎日のようにストーキングしては、新たな生活あるいは新たな恋愛を始めて前進する相手の投稿を見て苦しむ人、こういった知人や友人に心当たりはありませんか?
しかし、もしこれが自分の身に起こったらどうすれば良いのでしょう?
なぜ元恋人について考えるのをやめられないのか?
自分が極度の心理的ストレスや、強迫観念、疲弊感といった状態に達してしまったことに気づいてセラピーに通っている人々はたくさんいます。そのような状態に陥ったからこそ、元恋人を頭から追い出すには専門家の助けが必要だと感じるに至ったのでしょう。
そういった精神状況は日常生活に大いに支障をきたします。働くことや余暇を楽しむこと、あるいは将来について考えることなどが、上記のような人にとっては大きな試練のようになってしまうのです。
元恋人について考えるのをやめようとして、新しい趣味やスポーツ、自己啓発セミナーなどを始めて気をそらせようとする人々もいます。また、相手を忘れるために虚しい新たな恋愛を始める人もいるでしょう。そして残念ながら、それ以外の人々はアルコールやドラッグ、およびその他の自己破壊的行動によって元パートナーを忘れようとするのです。
上記のような状況は、依存症と同様の心理的メカニズムを呈しています。つまり、元恋人を忘れられない人々の頭脳は、喫煙や日常的なギャンブルをやめられない人々の脳が使うのと同じメカニズムを利用するのです。それでは、その理由について見ていきましょう。
恋愛は、時にはギャンブルのようなもの
これはあまり詩的なたとえではありませんが、それでも的を得てはいるはずです。一部の恋愛は、強迫観念に発展します。そしてそうなった人は、毎日ギャンブルに出かける中毒者のように振る舞うようになるのです。したがって、元恋人のことばかり考え続けてしまう理由の1つは脳の報酬系であるドーパミン回路に潜んでいるということになります。
相手とまだ交際中で何もかもが順調だという時には、ドーパミン値が安定しています。満足感や安心感、喜び、幸福感を抱いている状態です。しかし、破局によりドーパミンとノルエピネフリンの生成が激しく減少してしまうと、絶望や禁断症状が襲ってきます。
ここですべきことは、相手から離れ、全ての連絡をシャットダウンし、相手のソーシャルメディアをチェックするのをやめ、携帯から相手の番号を消すことです。元恋人に関連するものに触れれば触れるほど、あるいは元恋人に近づこうとすればするほど、中毒状態と禁断症状は悪化してしまい、苦しみが増していきます。
分離不安:別れてからの方がもっと相手を好きになる!?
人類学者ヘレン・フィッシャーは、何十年にもわたって恋愛(と失恋)のメカニズムを研究してきました。元恋人について考えるのをやめられない理由に光を投げかけてくれるものの1つが、フィッシャーが「フラストレーション・アトラクション」と呼ぶものです。
時折、相手と離れることで強迫観念以上のものが生じます。人は失ったものを理想化してしまう場合が多く、そうなると愛着への欲求が大きくなりますが、ヘレン・フィッシャーはこれを以下のように説明しているのです。「分離不安は、母親から引き離された子犬のようなものです。円を描いて走り回り、吠え声を上げ、不満のうなり声を出します。」
一方で、グラーツ大学(オーストリア)で行われたものをはじめとするいくつかの研究により、この傾向は男性により多く見られるということが示されています。元恋人に好意を向け続けることが多いのは男性であり、関係性を維持することが可能であるとさえ思い込む場合が多いのです。一方、女性は平均的に、距離を置いた時や関係性が終わる時に、相手との関係のもっとネガティブな側面に注目して自分自身に別れを再認識させる傾向があります。
こういった状況に陥ったらどうすれば良い?
恋愛から離れる時に行うべき最も適切なことは、別れに至った原因について合理的に考えることです。自分が捨てられた、あるいは相手の方が関係を終わらせる決断をした場合、自分はもう愛されていないということになります。これが自身の愛され力を決定づけるわけではありませんが、できる限り早くこの事実を受け入れなければなりません。
心の痛みと、元恋人のことを考えるのをやめられない理由
ミシガン大学のイーサン・ロス教授は、自身の行なった研究の中で、脳は対人関係での拒絶や結婚の破綻を火傷を認識するときと同じような形で解釈している、ということを明らかにしました。つまり、脳は心の痛みを肉体的な痛みと同じように受け止めているということです。この事実もまた、一歩前進して元恋人について考えるのをストップすることがこれほど難しい理由を説明しています。
愛着、過去の記憶、そして現実を受け入れられないこと、これらが憂うつ感をさらに悪化させます。そして日々が過ぎ去るにつれて楽になるどころか、痛みがもっと激しさを増していくのです。
どうすれば良いのか?
重大な別れの後には毎回、グリーフ(悲嘆)のプロセスを経る必要があります。グリーフとは、苦痛や痛みを感じる余地を残してあげてから、それを発散するという段階です。グリーフの次には、受け入れの段階が訪れます。これが最終ステップであり、ここでは自分自身と過去の記憶を切り離し、新たな記憶を作っていかねばなりません。新しい計画や目標に溢れる新たな人生ステージに道を譲ることが、どんなケースでも最善の選択肢です。
そうは言っても、自分には前に進むことや傷を癒すこと、そしてもはや自分を想ってくれない相手を忘れ去ることが不可能だと感じるのであれば躊躇せずに専門家に助けを求めてください。
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- Acevedo, B. P., Aron, A., Fisher, H. E., & Brown, L. L. (2012). Neural correlates of long-term intense romantic love. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 7(2), 145–159. https://doi.org/10.1093/scan/nsq092
- Athenstaedt, U., Brohmer, H., Simpson, J. A., Müller, S., Schindling, N., & Bacik, A. (2019). Men view their ex-partners more favorably than women do. Social Psychology and Personality Science. Advance online publication. DOI: 10.1177/1948550619876633