認知的予備力:脳の発達における決定的な一歩
認知的予備力は、神経心理学の中で発生した概念です。脳機能の喪失やネガティブな変化に反応することができる脳構造の働きを意味します。つまり、認知的予備力とは病気や加齢、劣化に機能的に反応する脳の働きです。この働きにより、脳は、損傷をある程度まで埋め合わせることができます。
認知的予備力が高いと、病気の後、脳が正常に機能することさえあります。加齢による自然な劣化においても、脳をフルで活発に働かせます。お分かりいただけたように、大事に発達させる価値のあるとても重要な力です。
「脳が謎である限り、脳構造の反映である宇宙は謎のままだろう。」
-サンティアゴ・ラモン・イ・カジャル-
認知的予備力の起源
認知的予備力は、母体の中の脳の発達の段階で形成され始めます。人生一年目の経験が決め手になると言われています。知的発達の進路をかなりの範囲まで決定するのです。
認知的予備力の形成に遺伝要因が影響すると言われるのには、理由があります。しかし、これは決定的なものではありません。人生を通し、この働きを高めるよう刺激を与えることができます。脳が損傷を受けた後でさえ、この働きを高めることは可能です。
頭を使う活動、趣味、スポーツはすべて認知的予備力を高めることが証明されています。読書、頭脳ゲーム、言語の習得、ダンス、スポーツ、知的刺激を与える活動は、すべて役立ちます。
認知的予備力を刺激する
認知的予備力が良いと、脳は神経と損傷を受けた部分の間をつなぐ新たなコネクションを作ることができます。下記の活動やこれらに似た活動を以前していた人は、この過程が楽に進むのです。
- 文化的レベルが高い。文化的レベルとは、学習、読書、知的活動の積み重ねを意味します。それが高いと、加齢などにより生じる中度の認知機能低下から脳が保護されます。
- 社会的関係。良い社会的サークルや関係があってよく支えられている人は、認知症を患う確率が38%も低いと科学的に証明されています。
- 身体的運動。脳の血液循環を促し、酸化ストレスや加齢による劣化要因から脳を保護します。
- 精神的運動。認知的予備力を高める明白な要因です。楽器演奏、頭を使う趣味などがこれに入ります。
また、健康的な食生活は強い脳の維持に役立ちます。喫煙、飲酒、精神活性物質の摂取は避けましょう。ハイキングも、良い要因です。
驚きの実験
ケンタッキー大学の神経学教授、疫学博士であるデビッド・スノーダンは、1986年、興味深い研究を行いました。アメリカの678人のカトリック修道女を対象に調査は行われました。非常に同質的なグループです:同じ食事、同じ住環境、同じような活動をします。
17年間に渡り、認知的予備力の調査を行いました。この期間、定期的にテストが行われ、遺伝、知性、心理学に関するデータが集められました。この実験を完成させる情報を得るために、亡くなった後にも脳が調べれることに全員承諾しました。
その中でも最も顕著だったのが、修道女ベルナデットのケースでした。彼女は85才で亡くなり、その後脳が調べられました。診断の結果、彼女はアルツハイマーを患っていたことが分かりました。ところが、生前その症状はあらわれなかったのです。認知的予備力は生理学的あらゆる欠陥を補完すると研究者は結論づけました。
また、この研究により、興味深い事実がもう一つ判明しました。語彙力が豊かな修道女は、長年にわたり、認知機能の低下が見られにくいというものです。これは、幼少期にたくさん本を読んでいたことを表します。
認知機能の自然な低下を遅らせるために、知的、社会的、身体的活動が有効だという証拠を示すのに、この実験は、もっとも説得力のあるもののひとつでしょう。
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