脳はなぜ老いていくのか?遺伝子にある答え

· 2018年10月26日

脳も体の他の部分や機能と同じように老化します。しかし、他の人より影響を受けやすい人もいるようです。肉体的な変化だけではなく、年齢とともに変わってくる機能もあります。これらはどうして起こるのでしょうか?もっと重要なのは、それに対して何ができるかということです。老化の影響を受けやすい人はいるのでしょうか?脳の老化を遅くしてくれるツールはあるのでしょうか?

脳の老化の謎は、遺伝子の中にあります。イギリスの研究所のバブラハム・インスティチュートとイタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のグループが 、脳の遺伝的働きの中にその答えが埋まっていることに気づきました。これらの遺伝子が、年齢に関係する認識力低下の複雑なメカニズムに影響を及ぼしています。

脳が老化すると何が起こるかに関しては、すでに色々なことが分かっています。例えば、ニューロンが古くなって死ぬと、新しいものにとってかわられます。幹細胞のようなもの、正確に言えば神経幹細胞(NSC)が、そのプロセスを促進させます。これは神経システムの細胞で、生まれ変わって親細胞を作ります。

しかし、時間がたつにつれ、この細胞の機能が悪くなります。つまり脳もきちんと機能しなくなるということです。しかし、何によってこの細胞が老化するのでしょうか。どんな分子の変化が、脳の機能を下げるのでしょうか?科学者はこれらの疑問に答えることに成功しています。

脳が老化すると何が起こる?

なぜ脳が老化するのかを見ていく前に、脳の老化がどんなものか見ていきましょう。脳の老化は避けられません。しかし、一様ではありません。人によって影響の出方は異なります。脳が老化するのをとめたり遅らせたりすることは、若さを保つ秘訣です。

高齢者

人間の右脳には、10万個のニューロンがあります。それが、何兆ものシナプスでつながっています。人生の中で、他の体の部分同様、脳も変わっていきます。懐胎から3週間で脳が発達し始めてから高齢になるまで、この複雑な構造と機能も変わっていきます。

 

生まれてからはじめの1年は、子どもの脳は数秒ごとに何百万の新しい神経のつながりができます。脳の大きさは幼稚園ごろまでに4倍になります。6歳ほどで脳は大人のサイズの90%までに到達します。

計画、記憶、脈拍のコントロールなどを司る脳のエリアである前頭葉は、成熟するのが遅い部分の一つです。35歳までは完璧に発達していなくてもおかしくはありません。

このポイントに到達したら最後、老化が始まります。この年で、体のシステムが少しずつ悪化してくるのです。脳も同じです。そうして、老いは記憶にも変化をもたらします。

一般的な老化は、次のような症状を引き起こします。

  • 新しいことを学ぶのが難しくなる。新しい情報を覚えるのが難しくなります。
  • マルチタスクが困難になる。処理が遅くなって、同時に複数の課題をこなすことが難しくなります。
  • 名前や数字を覚えるのが困難になる。名前や数字を覚える戦略的記憶は20歳から低下し始めます。
  • 約束を覚えておけない。

高齢者層の3分の1が宣言的記憶(思い出せる事実や出来事)に問題があることがわかりました。他の研究では、70代の人の5分の1は20代と同じくらいの脳の能力を持っているということもわかっています。

老化した脳に起こる一般的な変化を見てみましょう。

  • 脳の質量。前頭葉と海馬。これらのエリアの脳は、高次脳機能や新しい記憶をコード化することを担っています。これらの変化は、60~70代で始まります。
  • 皮質の密度。シナプス結合が弱まって表面が薄くなります。結合が少なければ少ないほど、より認識のプロセスが遅いことを意味します。
  • 白質。白質は、一緒になって神経信号を脳の細胞の中で送る有髄神経線維からできています。有髄神経線維も年齢と共に老いるとされています。その結果、処理能力が遅くなり、認識機能に影響します。
  • 神経伝達物質システム。脳は年齢と共に分泌する科学伝達物質の量が減っていきます。このドーパミン、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリンの減少が、記憶障害に関わっているかもしれません。うつの可能性も高めます。

 

脳が老化するときの遺伝子の役割

脳が老化するとき何が起こるはもうわかっています。それでは、はじめにお話しした研究に戻って、このプロセスの遺伝子の役割を見てみましょう。研究者によれば、DBX2遺伝子が脳の老化に関係しています。

科学者たちは、18ヶ月のネズミの幹細胞または前駆細胞における遺伝子変化(神経幹細胞=NSC) を、生後3か月のネズミと比べています。これによって、ふるまいに影響を与えた250以上の遺伝子を識別しました。つまり、これらの遺伝子が細胞の劣悪な機能を引き起こしているということです。

これら250の遺伝子を特定した後、科学者たちはDBX2と呼ばれる細胞の増加が、老化した神経幹細胞に変化を与えることに気づきました。そこで、彼らは試験管テストを行いました。これらのテストによって、若い神経細胞におけるこの遺伝子の増加によって、老化した幹細胞のように機能することがわかりました。DBX2の増加は、神経幹細胞の成長や若い細胞の増殖を妨げます。

光る脳

さらに、最も老化した神経幹細胞にも注目しました。幹細胞が老いていく説明となるエピジェネティクスマーカーにも変化が見られました。DNAをアルファベットのように考えてみると、エピジェネティクスマーカーはアクセントや句読点のようなものです。細胞にどうやって遺伝子を読むべきかを教えます。この研究では、これらのマーカーが神経幹細胞にもっとゆっくり成長するように「指示」しながら、ゲノム上に様々な方法で自らを配置していくことがわかりました。

この研究は、これらの変化が脳の老化プロセスに影響していると示しています。これは脳の再生プロセスを遅らせながら起こります。研究者たちは、これらの発見がいつか老化プロセスの解明につながると考えています。そして、脳の老化プロセスを理解することで、幹細胞の減少を検出することができると期待しています。