ニューロ・アーキテクチャー:脳における環境の力
ニューロ・アーキテクチャーは、新しい分野に思われるかもしれません。しかし、すでに確立されてから7年ほどたっています。その目的は、幸福、福祉、生産性の空間を作り出すことです。別の言葉で言えば、ストレスと不安を軽減する建物です。
この分野では、建築家や神経科学者がともに協力して、そこを使用する人にとっての状態を最適化することに焦点を置いた空間やビルをデザインします。この複合科学は、いくつかの建築要素に基づいています。窓の場所、壁と家具の角度、色、質感、開けた空間、音などです。
ニューロ・アーキテクチャーとは何か
この分野は、人間の脳の機能に影響する建物づくりを手助けします。こう考えると、この分野の起源はゴシック建築にあると言えるかもしれません。しかし、科学としてはまだまだ歴史が浅い分野です。 ニューロ・アーキテクチャーは、25年前ごろに初めて見られるようになってきたと言っても良いかもしれません。
ニューロ・アーキテクチャーは、環境がどのようにして脳の化学変化や感情、思考、ふるまいを変えていくかということに関心を向けます。
ソーク研究所の神経科学者であるフレッド・ゲージ医師は、脳における環境的な変化の影響に興味を抱いていました。脳が周りにある空間を、どう解釈、分析、再構築するのかに焦点を置いています。
神経科学は、どのように空間を作り出し分配すればよいかの貴重なヒントを与えてくれます。特定の環境によって、脳は特定の感情や感覚を発達させるために必要なホルモンを分泌するメカニズムを発動させます。
建築の心理社会的影響
人は90%以上の時間を室内で過ごすと推定されています。環境が脳に対して大きな影響を及ぼすことから、幸福感を生み出す、もっと人間的で健全な建物を建設することが重要です。ニューロ・アーキテクチャーは、美的な面にも象徴的な面にも焦点を置いています。
この神経科学は、脳を解読し、どんなものに刺激を受けるのか、どんなものによって活性化されるのかを理解していきます。これを念頭に置くと、ニューロ・アーキテクチャーは光の量と投影、天井の高さなどの概念を取り扱います。 人の創造性と生産性へどう影響を与えるかを理解しているのです。どんな建築が、脳の秘密のための相乗的な効果や欲求を生み出して行くのかということも、考慮しています。
要素
精神的な状態に影響を及ぼすいくつかの建築的要素がすでに証明されています。例えば、顕著で鋭い角度の建築デザインはストレスの出現に一役買っていることがわかっています。 長方形の空間であれば、人は囲まれているように感じます。光も、重要な要素です。人工的な光が乏しいと、脳がより多く働かなければなりません。これは生産性に影響する点です。
高い天井は、創造的で芸術的な活動には適しています。低い天井は、集中やルーティーン作業に向いています。 色は気分、決断、姿勢に影響します。例えば、緑は心拍数を下げて、ストレスを軽減します。赤は、認知的・注意プロセスを刺激します。そのため、かなりの脳の集中が必要な課題を行う際に役立ちます。
自然との共生
近年、ニューロ・アーキテクチャーは、適切な脳の機能への屋外の空間や自然の重要性を考慮してきています。電化製品の電池を充電するかのように基本的なことです。自然は、脳に電源を切って充電する力を与えてくれます。
「電源を切る」ことに関して言えば、一次聴覚野も重要です。この脳の部分は、認識や音の振動を扱っています。人が好きな音楽でこの部分を活性化する際、より多くのドーパミンを分泌するようになります。これは、集中力を高めてくれるホルモンです。