ポストベンション:自殺を阻止できなかったとき

自殺の予防がうまくいかなかった場合どうなるでしょう?誰かが自殺した後のポストベンションとはどのようなものでしょう?ここでは、ポストベンションとその重要性についてお話します。
ポストベンション:自殺を阻止できなかったとき

最後の更新: 06 10月, 2020

自殺行為は、精神的、生物学的、社会的、文化的、環境要因の影響を受ける難しい問題です。自殺に性別、文化、社会的集団は関係なく、誰しもが関係する可能性があります。複数の要因を持つ自殺には、体系的かつ横断的な予防が必要です。それでも未然の阻止がうまくいかなかった時、ポストベンションについて考える必要があります。

ポストベンションは自殺者の家族や大切な人を支えるためにあります。自殺は悪い印象を伴うため、自殺者に近しい人が様々な感情の葛藤を抱えることは少なくありません。

アメリカにおける不自然死の原因は自殺が第一位で、交通事故での死者を超えます。2018年、4万8000人が自殺をしており、1日に132人、1時間で5人の計算になります

WHOの報告によると、自殺者は毎年約100万人で、2020年までにこの数は150万人にまで増えるのではないかと予想されています。自殺者は男性に多いのですが、自殺未遂は女性の方が男性より2倍多いこともわかっています。

ポストベンション 自殺

自殺の阻止

自殺を考えたことがある人は、批判されることへの恐怖心を持つことなく悩みを打ち明けられる人、助けてくれる人、信頼できる誰かを見つけることが大切です。また、適切な予防行動を勧めてくれる専門家に助けを求めることも必要です

自殺とは、一つあるいは複数の問題への永久的な解決法ですが、こういった問題とはほとんど必ずと言っていいほど一時的であるということを忘れて医は逝けません。今すぐ明確な解決法が見つからないからといって、明日も見つからないとは限りません。

危機の引き金となった状況を認識すると役に立つことがあります。つまり、いつ危機に陥る可能性があるかを知るため、自殺を考えることになった原因を探ることが大切です

また、親友や専門家の助けを得ながら、あるいは一人でもいいので「緊急時の対応計画」を作ると、将来自殺を図ろうとする可能性を軽減するのに役立ちます。この計画には(ガイダンス目的だけですが)次のポイントを入れてみるといいかもしれません。

  • 警告サイン
  • サポートネットワーク:信頼できる人の連絡先をまとめ、非常時や自殺行為を行おうとする時、連絡できるようにしましょう
  • アンカー:生きていることの意味を与えてくれる人や理由がこれに当てはまります
  • 予防策:解決策を探し、また、自傷につながる物を除去しましょう。
  • 24時間自殺電話相談窓口リスト
  • ここまでのステップがうまくいかなかった場合、あるいは、自殺未遂を起こす前に、近くの救急病院へ行く、あるいは、119番やいのちの電話に連絡するよう書き留めておきましょう

ポストベンション:すべてがうまくいかなかった場合

これまでにも言ったように、ポストベンションは、自ら死を選んだ人の周りの人に対する社会的、精神的、組織的サポートです。ポストベンションでは、悲しみのプロセスを難しくするリスクファクターに上手く対処したり、悲しみを健全な方法で乗り越えるためのサポートが与えられます。

別れに対する悲しみは人によって異なるもので、自殺に対する悲しみは他のどのタイプとも大きく異なります。正しい反応や誤った反応というものはなく、(ショック、否定、罪悪感、痛み、恥など)すべてが正常で受け入れられるものです。

自殺の後、家族や友人が「なぜ?」(なぜ自殺したのか、なぜ助けられなかったのか)という疑問を抱いたり、「~してたら」(はやく気づいてあげられたら、助けを求めてたら)と考えるのはよくあることです。

悲しみの中で、私達は自殺は防げたケースもあるかもしれないけれど、どんな介入をもっても死を防ぐことはできなかった、という理解が始まります。過去を変えることはできません。これらの疑問への答えは見つからないもので、なぜ死を選んだのか理由を完全に知ることはできないと理解したとき、悲しみのプロセスに終わりが見えます。

喪失に関し、受容は一番いい方法です。非常に難しいように思えるかもしれませんが、本人の決断は尊重されるべきもので、また、自殺が原因となり生まれた苦悩はその人の責任ではありません。いつか本人を許し、自分を許すことができるようになります。しかし、受容し、許すことができた後も罪悪感は残ることがあります。

ポストベンション

自殺神話を暴く:ポストベンションの基本ストラテジー

自殺に関する話は神話で覆われており、また今でもかなりタブーとされています。そしてその結果、自殺者の家族や友人は、様々な感情の葛藤を抱えます。悲しみとともに怒りを抱えることも少なくありません。また、恥もよく見られる感情で、人に批判されることへの恐怖から、死の本当の原因を隠すことにもつながります

ポストベンションでは、心理社会的サポートや心理教育的ストラテジーが重要になります。これは悲しみのプロセスで多くの人が抱える感情や反応にまつわるストラテジーで、社会的批判を乗り越えるためにも役立ちます。また、話したくないのであれば話さなくてもいいということを、家族や大切な人に伝えることも大切です。

自殺神話を暴くことは、相反する感情や批判への恐怖の軽減に役立ちます。次に、よくある誤った考えをご紹介します。

  • 自殺について話すことは自殺を促すことになる
  • 死にたい人の自殺をとめることはできない
  • 自殺は臆病、あるいは勇敢な行為である
  • 死を選ぶ人は、注目を集めようとしている
  • 真剣に自殺を考える人は、自殺について話すことはない

まとめ

周りの人と同様、自殺行為をする人、自殺を考えている人は、助けを必要としています。自殺により大切な人を失った人達のことを忘れてはいけません。悲しみのプロセスが痛みを伴う難しいものであるならば、自殺の悲しみはそれ以上のものです。強く残り、介入しづらい罪悪感や羞恥心が伴います。

悲しみのプロセスが適切に行われない場合、長期の問題になりかねません。必要とされるリソースやサポートがなくては、うつ病にもなりえます

このように、自殺の予防だけでなく、ポストベンションの促進も重要になります。また、社会の関心を高めるためのステップも必要で、自殺が原因で大切な人を失った人達に対する烙印もなくすべきです。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。