クアットローネとトベルスキーによる自己欺瞞に関する実験
もし誰かに尋ねられたら、おそらくあなたは嘘や騙しに関わったことなど一度もない、と答えるでしょう。私たちのほとんどが、自分は真実とともに生きていて、ほとんどの言葉や行動において完全に正直である、と信じ込んでいます。しかし、クアットローネとトベルスキーによる実験は、これが事実ではないことを証明しました。
クアットローネとトベルスキーの実験は1984年に行われ、『Journal of Personality and Social Psychology』で最初に発表されました。この研究の主な目標は、確証バイアスとして知られる認知バイアスの存在を証明することでした。これは、自分が真実だと考えていることは、本当に真実かどうかに関わらず真実だと自分自身を納得させる必要性と関連しています。
この確証バイアスとは、嘘や騙しに関わっています。しかし、この場合、こういった嘘は主に自分自身に向けられたものであり、ここでお話しするのは自己欺瞞についてです。これは、自分の信条と矛盾する現実の側面や自分を不快にするような現実の側面を見ない、あるいは考慮に入れなくて済むようにするためのプロセスです。
クアットローネとトベルスキーの実験により、私たちは頻繁に自分自身を騙していることが明らかになりました。悪意があってこれを行なっているわけでも、真実へ敬意を払っていないというわけでもありません。ただ、苦痛を伴う、あるいは不愉快な現実に目を向けるのを回避するためのメカニズムだというだけです。
クアットローネとトベルスキーによる実験
クアットローネとトベルスキーの実験は、34人の参加者グループとともに行われました。研究者たちは、彼らにこの研究は「スポーツの医学的・心理的側面」についてのものである、と説明しました。これは事実ではありませんでしたが、参加者たちにこれは事実だと信じてもらう必要があったのです。
それから、研究者たちは彼らに腕を冷たい水の中に浸すよう頼みました。研究者たちは、冷水への耐性は全体的な健康度を測るための重要な目安になる、と告げます。これも事実ではありません。彼らは、参加者たちにその他のタスクも同様に行うよう指示しました。ここには、自転車に乗ることなど、ただ気を逸らすためだけの目的で似たような活動が含まれていました。
そして最後に、研究者たちは参加者に「寿命」について話します。その説明の中で、彼らは参加者たちに心臓には二種類ある、と話します。タイプIは、より耐久性が高く、したがって時間を通して心臓病が進行する危険性が低く、一方でタイプIIは弱い心臓であり、病気になりやすいと説明したのです。
新たな展開
この第一段階を終えた後、クアットローネとトベルスキーの実験は新たな展開を見せ始めます。参加者は2つのグループに分けられました。個別に、研究者たちは第一グループの参加者に腕を冷水に浸したのは、彼らの心臓がタイプIかタイプIIかを測るためだった、と伝えました。
さらに、タイプIの強くて回復力のある心臓を持つ人は、冷水により長い時間腕を浸すことができる、と付け加えました。そして、第二グループの参加者たちは、これとは反対のこと、つまり強い心臓の持ち主は冷水に腕を浸していられる時間が短い、と伝えられました。
その後、全ての参加者は再度評価するために再び冷水に腕を浸すよう指示されましたが、その結果は興味深いものとなりました。第一グループの参加者たちは、1回目の実験の時よりもかなり長い時間冷水に腕を浸し続けることができたのです。そして第二グループでは、正反対のことが起こりました。
実験から導き出される結論
全体的には、腕を冷水に浸すことのできた時間は平均で10秒間変化しました。始めの実験で記録が35秒間だった第一グループの参加者は、2回目の実験では45秒間浸すことができたのです。そして1回目に35秒間腕を浸した第二グループの参加者は次の実験では記録は25秒間となりました。この結果から研究者たちが導き出した結論とは何だったのでしょうか?
最終的な結論を下すために、研究者たちは全ての参加者にある質問をしました。2つの心臓タイプの情報に影響されて、自分が強い心臓を持っていることを証明するために冷水に腕を浸す時間がより長くあるいは短くなったかどうかを参加者たちに尋ねたのです。38人の参加者のうち、29人がこれを否定しました。そのあと、彼らは自分の心臓は健康だと思うかどうかを尋ねました。すると、2つの心臓タイプの話に影響を受けたことを否定した参加者たちの60パーセントがイエスと答えました。
研究者たちによると、この結果は私たちが自己欺瞞を行う強い傾向を持っていることを証明しているそうです。一部の人は、ただ自分たち(そして他の人々)が正しいということを証明するためだけに本物の情報を完全に抑え込んでしまうのです。そうすることによって、人々は過度に不愉快あるいは不安の種になる様な状況を回避しています。
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Trivers, R. (2013). La insensatez de los necios. La lógica del engaño y el autoengaño en la vida humana. Katz Editores.